Immunoglobulin E

アナフィラキシーの症状は、IgEと他のアナフィラトキシンの反応が関与する。これらの物質は肥満細胞からヒスタミンや他の媒介物質(メディエーター)を遊離(脱顆粒)させ、さらにヒスタミンは細動脈の血管拡張や肺の細気管支の収縮、気管支痙攣(気管の収縮)を引き起こす。

ヒスタミンや他のメディエーターは身体の別器官の組織で遊離されるが、これらが(血流等を介して他の部位に運ばれ)気管収縮とこれに伴う喘鳴や呼吸困難、そして胃腸症状(腹痛、さしこみ、嘔吐、下痢など)を引き起こす。ヒスタミンは血管拡張(これに伴う血圧低下)と血流から組織への体液漏出(これに伴う血流量低下)を引き起こし、これらが影響してショック症状を呈する。

免疫グロブリンE(めんえきグロブリン・イー、英語: Immunoglobulin E、IgE)とは哺乳類にのみ存在する糖タンパク質であり、免疫グロブリンの一種である。1966年、日本人である石坂公成はジョンズホプキンス大学(アメリカ)においてブタクサに対してアレルギーをもつ患者の血清からIgEを精製した。IgEの"E"というアルファベットはこの抗体が紅斑(Erythema)を惹起するということに由来している。IgE分子は2つの重鎖(ε鎖)と2つの軽鎖(κ鎖およびλ鎖)から構成され、2つの抗原結合部位を有している。健常人における血清中のIgE濃度はng/ml単位であり他の種類の免疫グロブリンと比較しても非常に低いが、アレルギー疾患を持つ患者の血清中では濃度が上昇しマスト細胞や好塩基球の細胞内顆粒中に貯蔵される生理活性物質の急速な放出(脱顆粒反応)を誘起する。これらのことからIgEはヒスタミンなどと並んでアレルギー反応において中心的な役割を果たす分子の一つとして数えられる。また、IgE分子の性質として胎盤通過能や補体結合能を有さない。分子量188kDa。

「抗体」の名は、抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(めんえきグロブリン、immunoglobulin)と呼ばれ、「Ig(アイジー)」と略される。

全ての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)ーグロブリンにあたる。

紅斑(英: erythema)とは毛細血管拡張などが原因で皮膚表面に発赤を伴った状態をいう[1]。同部を圧迫すると消失する。皮膚温度の上昇はないが、より深部の動脈の拡張の合併があれば皮膚温は上昇する。

マスト細胞表面受容体上のIgEに抗原タンパク質が結合すると、IgEが抗原を架橋するような形になり細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなどの放出が行われる。その結果として炎症反応を促進するが、炎症には急性炎症と慢性炎症が存在し、それぞれ関与するメディエーター・細胞などが異なる。マスト細胞の脱顆粒により放出される物質のうちヒスタミンは血管透過性を亢進させることにより急性炎症を促進する。また、ロイコトリエンやサイトカイン、ケモカイン等の分子は炎症における遅延型反応に関与し、炎症性細胞を動員するなどの役割を果たす。気管支喘息等のアレルギー性疾患の患者では血清中IgE濃度が高値を示し、これらの反応が亢進されている。

喘息の病態は解明されていない部分も多い。IgE型の免疫不全症とする考え方もある。

アトピー型の喘息患者が発作を引き起こすのはI型アレルギーにより化学伝達物質が発生するためである。その誘因は細菌・ウイルス、過労、ハウスダスト(埃・ダニ・花粉・カビなど)・食物・薬物などのアレルゲン、運動、タバコ、アルコール、気圧変化などさまざまである。

一方、非アトピー型の喘息の病態生理はまだはっきりしていない。

化学反応の生じる過程の実時間計測

ポンプ-プローブ分光法(英: pump-probe spectroscopy)とは、ピコ秒~アト秒の時間領域の現象を理解するための基礎科学研究の技術の一つ。光化学分野で広く用いられる。超短パルスレーザーを駆使した過渡吸収分光法の一部がポンプ-プローブ分光法に含まれることがある。これを用いると、化学反応の生じる過程を実時間計測できる。

ポンプ-プローブ分光法では、ポンプ光で物質を励起させ、プローブ光で観測する。ポンプ光・プローブ光共に短いパルス光を用いることで時間分解能をフェムト秒領域まで高めることができる。プローブ光の時間を変化させることで、光反応の開始・終了(過渡種の生成・消失)を追跡できる。また、時間を固定して中間状態の電子状態を見ることができる。

ポンプ-プローブ分光法では反応の様子を切り取って観測できる点で賞賛を浴びた。

この手法自体は1949年にジョージ・ポーターらによって導入されていたが、当時はマイクロ秒単位の遅延時間だった。 1960年にレーザーが発明されるにあたってより細かいフェムト秒単位の時間分解能を得た。

ポンプ光・プローブ光の短縮と波長変換にはパルスレーザーの非線形光学効果を利用していて、これにより時間分解能が上がっている(ポッケルス効果)。 また、プローブ光の発生には光パラメトリック効果が用いられる。

Excited dimer(励起二量体)

レーシック(英語: LASIK)とは角膜屈折矯正手術の一種で、目の表面の角膜にエキシマレーザーを照射し、角膜の曲率を変えることにより視力を矯正する手術である。LASIKは、正式名称である「LASER(-assisted) in situ κερατόμῑλευσις(keratomileusis)[1]」(英語・ラテン語ギリシア語からなる)の略 (アクロニム)であり、「レーザー照射を本来の場所に収まったままの眼球に施し、角膜を彫り整えること」の語意がある。

近視を補正する場合、眼鏡やコンタクトレンズ等の道具を使用することが一般的だが、レーシックでは角膜を矯正手術することにより正視の状態に近づける。これにより、裸眼視力を向上することができる。1990年代にアメリカを中心にその手術方法が認知されるようになった。

レーザー機器もしくは、マイクロケラトームと呼ばれる眼球用カンナで角膜の表面を薄くスライスし、フラップ(ふた状のもの)を作り、めくる。表出した角膜実質層にエキシマレーザーを照射し、一部を削る(蒸散させる)。その後、フラップを元の状態に戻し、フラップが自然に吸着する。角膜中央部が薄くなるため、角膜の曲率が下がり(凹レンズを用いたのと同じ効果)、近視が矯正される。視力は術後直後から1日程度で矯正される。視力が安定するには1週間から1ヶ月程度を要し、90%以上の人が裸眼視力1.0以上になる。

世界初のレーシックは1990年にギリシャで行われた。1995年にアメリカ食品医薬品局がエキシマレーザーの使用認可を出し、アメリカでは1998年以降レーシックが屈折矯正手術の主流となった。日本では、2000年1月に厚生省(現・厚生労働省)がエキシマレーザーの使用認可を出してから受けられるようになっている。歴史が浅いため、長期に渡る安全性が実証されていないとも言われるが、2009年、アメリカの医学誌「Archives of Ophthalmology(眼科学)」11月号にて近視に対するレーザー手術は長期的に見ても安全であるという研究結果が発表された[3]。

希ガスはアルゴン、クリプトン、キセノンが、ハロゲンはフッ素、塩素が一般に使用される。混合ガス中でのパルス放電によって生成する励起状態希ガス原子とハロゲン原子によって形成されるエキシマからの放射光によってパルス発振する。

代表的なエキシマレーザーの発振波長は以下のとおりである。

ArF - 193 nm
KrF - 248 nm
XeCl - 308 nm
XeF - 351 nm
エキシマとは電子励起状態の原子分子が、他の原子分子と形成する分子である。Excited dimer(励起二量体)を略してExcimerと呼んだことに由来する。とりわけ基底状態では結合しない二つの原子によって形成されるエキシマがよく取り上げられる。エキシマの寿命はきわめて短く、一般的にはナノ秒のオーダーである。

エキシマは片方の原子分子が励起状態になければ形成されない。電子状態が基底状態になると分解して元に戻り、多くの場合相互に反発する。エキシマからの発光は元の原子分子からの発光より波長が長い。これはエキシマを形成することによってエネルギー的に安定するからである。したがってエキシマは蛍光によって検出されうる。

エキシマは二原子(分子)相互作用によって起こるので、元となる原子分子の密度が高いほど形成しやすい。密度が低いと、励起状態になった原子分子が他と相互作用してエキシマを形成する前に基底状態に戻ってしまうことが多くなる。

エキシマレーザーはエキシマの最も一般的な利用であり、希ガスやハロゲンによって形成されるXeClなどの二原子エキシマが用いる。エキシマレーザーは、エキシマが励起状態でのみ存在し、基底状態では分解するので、完全な反転分布となることを使用している。また生物物理学においては、生体分子の間の距離を測定するのにピレンのエキシマを利用する。その他には、エキシマの形成し易さは、マトリックスの粘度に依存するため、高分子薄膜の粘度センサーにも用いることができる。

ピレンは蛍光物質である。また、溶液とした場合にその濃度が十分に高ければエキシマ蛍光を発する。モノマー発光は、最大発光波長が Fmax = 約 375 nm の青色光であるのに対し、エキシマ発光は、Fmax = 約 475 nm で黄緑色光である。

物理、とくに統計力学において、低いエネルギー状態よりも励起状態の方が占有率が高いような系が存在するとき、系のエネルギー分布が反転分布(はんてんぶんぷ、英: Population inversion)であるという。また反転分布は(便宜上)負温度とも呼ばれる。この様な概念は、レーザー科学において基礎的で重要な役割を演じている。レーザーを動かすうえで、欠かすことのできない過程が反転分布によって、生じているからである。

通常の電子の分布はフェルミディラック分布に従い、より下の準位の方が電子の数が多い状態である。しかし、特殊な条件を満たしてやることによりこの「下のほうが電子が多い」状態とは異なる状態にすることができる。フェルミディラック分布における式での温度項の符号をマイナスにした状態とも考えることもできるので負温度と呼ばれる。ただし、反転分布にある物質は熱平衡状態にはないので、これは熱力学温度とは異る概念である。

このような、高い準位に電子が多い状態に光が入射すると誘導放出により入射光を増幅でき、レーザーが発振される。

2準位系の励起では、下の電子が上に励起されても誘導放出により高い準位に低い準位よりも多くの電子を入れることは不可能である。

3準位系になって初めて、上の準位のほうが多くなれる条件を作り出せる。

4準位系になるとさらに反転分布を作りやすい状態になりうる。

様々な種類のイオン結晶と同様にガラス内のネオジムイオンはレーザー媒体として機能して、外部の励起装置で励起されたネオジムイオン内の部分的な原子の遷移から通常は1064 nmの光が放出する。

4準位間の遷移における反転分布の形成の仕方は以下のようになる。 まず基底状態
E
0
E_{0}にある原子を励起装置(ポンプ光)により励起状態
E
3
{\displaystyle E_{3}}に励起する。 励起状態の原子はごく短時間の間に準安定状態
E
2
E_{2}に緩和し、このとき原子は比較的長い時間準安定状態に留まるとすると、準安定状態
E
2
E_{2}にある原子と準安定状態
E
1
E_{1}にある原子との間で反転分布が起こり、レーザー発振が得られる。 3準位レーザーではレーザー発振時の下準位が基底状態にあるため反転分布を起こすには強力な励起を必要としたが、4準位レーザーでは励起状態
E
2
E_{2}と
E
1
E_{1}の間で発振する。そのため4準位レーザーの方が効率よく反転分布を形成することができる。4準位レーザーの例としてはNd:YAGレーザーがあり、右図はNd:YAGレーザーの発振における準位図である。

量子力学において、2状態系(2じょうたいけい、英: two-state system)とは、2つの独立な量子状態から構成される量子系である[1]。自明ではない量子系としては最も簡単なものであるが、量子力学の特徴的な性質を備える。コインの表裏のような古典対応物と異なり、2状態系の量子状態を記述する状態ベクトルは、2つの独立な状態の重ね合わせの比率と位相差が異なる無限に多くの状態を取り得る。こうした性質は量子情報理論での量子ビットの基礎をなす。2状態系として記述される系は電子や原子核のスピン
1
2
の系、光子の偏光状態、共鳴波長の光に応答する原子の2準位系、ニュートリノ振動、アンモニア分子の反転モードなどの豊富な物理現象を含む[2][3][4][5]。また、核磁気共鳴やアンモニアメーザーの理論的な基礎付けを与えている。J. J. Sakurai の著書 "Modern quantum mechanics" ではノーベル賞受賞者で2状態系の解析に携わった者として、7人の名を挙げている[6]。

負温度(ふおんど)とは、統計力学において熱平衡状態で絶対温度が負[要出典]となっていること、またその際の温度を指す。

直観とは逆にこれは極めて冷たいことを示すのではなく、いかなる正の絶対温度よりも熱いことを示している。何故なら反転分布のエネルギー係数は −1/Temperature となるからである。この文脈では -0度は他のどの負温度よりも最も高い温度である[1]。

カノニカル分布で考えると、このような系はエネルギーの低い状態よりもエネルギーの高い状態の方により高い確率でなるので、通常の正の温度の系(エネルギーの高い状態よりもエネルギーの低い状態の方をより高い確率でなる)と触れていると、負の温度の系から正の温度の系に熱が流れていく。

また、絶対温度Tが±∞においては、どのようなエネルギーの状態も等確率で出現するが、Tが負の側から0に近づいていけばいくほど、系はほぼ確実に最もエネルギーの高い状態を取るようになっていくので、負の温度領域においては温度の絶対値を下げるために外部から熱を流入させる必要がある。

つまり負の温度というのはいかなる正の温度よりも高い温度であり、その絶対値が小さくなればなるほど系はより高温となっていく。

負の温度の平衡分布が実現するとすれば、「最もエネルギーの高い状態」が最も高確率で実現されなければならない。

しかし、いくらでも分子運動が激しい状態を考えうる気体・液体や、いくらでも多くの数の光子、フォノンなどが存在する状態を考えうる電磁場、格子振動などの系ではそもそも「最もエネルギーの高い状態」を考えることができない(無理にカノニカル分布の式に負の温度を代入しても、分配関数が発散してしまうのは目に見えている)。したがって、負の温度というのはこれらの系で実現することはできない。

一方、有限の大きさをもつスピン系など、系が取りうる状態の数そのものが限られている場合においては、このような平衡分布を考えても特に問題はない。しかしこのような系には熱力学極限を取ることが出来ないので、実際の実験で実現できるのは「緩和の遅い準安定な系(=非平衡状態にある系)」だけである。ちなみにスピン系のモデルで記述されるような実際の磁性体は、多量のエネルギーを注入しても負温度にはならないが、これはエネルギーが高くなると(スピン系のモデルでは無視しているような)別の励起スペクトルが現れるためである。

レーザー発振において用いられる「反転分布」は、準安定でない負温度状態を系を励起し続けることによって実現しているだけなので、本項目で述べた負の温度とは異なるものと考えられる[要出典]。

レーザー科学(レーザーかがく)または レーザー物理(レーザーぶつり)は光学の一分野であり、レーザーに関する理論と現象論を扱う学問である。

レーザー科学は量子エレクトロニクスとレーザーの構成要素(英語版)、特に光共振器を対象としており、レーザー媒体に於ける反転分布に関する物理学や、レーザーにおける電磁場の時間発展に関する理論的、原理的な背景を与えている。

また、レーザービームの伝播、特にガウシアンビームに関する物理学およびレーザーの応用も扱う。非線形光学、量子光学等にも関連する。

光学において、 ガウシアンビーム(英: Gaussian beam)とは、横モード(英語版)の電場および強度(放射照度)分布が近似的にガウス分布とみなせる電磁波をいう。多くのレーザーはその光軸への垂直面内の強度分布がガウス分布に近いビームを発しており、このようなレーザーでは共振器が基本横モード、または「TEM00 モード」で発振しているという。回折限界(英語版)のレンズで屈折させたとき、ガウシアンビームは別の(パラメータの違う)ガウシアンビームへと変換されるため数学的に取り扱いやすく、レーザー光学における数理モデルとして広く採用されている。

ガウシアンビームがヘルムホルツ方程式の近軸近似の下での解であることは数学的に示すことができる。この解はガウス関数の形をとっており、ビームの電場の複素振幅を表わす。この形のビームの大きな特質として、電場と磁場が電磁波として一体となり伝播するため、電場と磁場のどちらか片方のみによってビームの特徴を記述できることが挙げられる。

ガウシアンビームが伝播するときの特徴は、スポットサイズと曲率半径、グーイ位相というわずかなパラメータで記述できる[1]。

近軸近似の下でのヘルムホルツ方程式には別の解も存在する。デカルト座標を用いて方程式を解くと、エルミート・ガウシアンモードと呼ばれる一連の解が得られ、円筒座標系を用いて解くとラゲール・ガウシアンモードと呼ばれる一連の解が得られる[2][3]。どちらの解に対しても、最低次の解はガウシアンビームを表わし、高次の解は共振器の高次の横モードに対応する。

ガウシアンビームはTEMモード(英語版)の一つである[4]。このモードの複素電場強度の数学的表式は近軸ヘルムホルツ方程式を解くことで得られ、以下のような表式を得る[1]。

E
(
r
,
z
)
=
E
0
w
0
w
(
z
)
exp

(

r
2
w
(
z
)
2

i
k
z

i
k
r
2
2
R
(
z
)
+
i
ζ
(
z
)
)
{\displaystyle E(r,z)=E_{0}{\frac {w_{0}}{w(z)}}\exp \left({\frac {-r^{2}}{w(z)^{2}}}-ikz-ik{\frac {r^{2}}{2R(z)}}+i\zeta (z)\right)}

ここに、変数は以下のように定義する[1]。

r はビームの中心軸からの距離
z はビーム径の最も収束している点(ビームウェスト)からの中心軸方向の距離
i は虚数単位 (i2 = -1)
k = 2π/λ は波数(単位はラジアン毎メートル)
E0 = |E(0,0)|
w(z) はスポットサイズ(電界強度および放射照度が中心軸上の値からそれぞれ 1/e および 1/e2 になる半径)
w0 = w(0) はビームウェストでのスポットサイズ
R(z)は波面(英語版)の曲率半径
ζ(z) はガウシアンビームに見られる特別な寄与であるグーイ位相シフト
厳密には時間依存因子 eiωt もかかっているが、上の式では省略されている。

対応する時間平均強度分布は以下のように表わされる。

I
(
r
,
z
)
=
|
E
(
r
,
z
)
|
2
2
η
=
I
0
(
w
0
w
(
z
)
)
2
exp

(

2
r
2
w
2
(
z
)
)
{\displaystyle I(r,z)={|E(r,z)|^{2} \over 2\eta }=I_{0}\left({\frac {w_{0}}{w(z)}}\right)^{2}\exp \left({\frac {-2r^{2}}{w^{2}(z)}}\right)}

ここで I0 = I(0,0) はビームウェストの中心における放射照度であり、定数 η はビームの伝播している媒質の特性インピーダンスである。自由空間においては、 η = η0 = √μ0/ε0 = 1/(cε0) ≈ 376.7 Ω となる。

光軸上の「縦位相の遅れ」、もしくはグーイ位相シフトは以下のように表わされる[1]。

ζ
(
z
)
=
arctan

(
z
z
R
)
{\displaystyle \zeta (z)=\arctan \left({\frac {z}{z_{\mathrm {R} }}}\right)}

グーイ位相シフトはガウシアンビームがビームウェストから離れた片側からもう片側に伝播するとき、平面波と同じ通常の位相シフト eikz の他に π だけ位相がずれることを示している[1][6]。

ガウス関数ガウスかんすう、Gaussian function)は、

a
exp

{

(
x

b
)
2
2
c
2
}
a\exp \left\{-{\frac {(x-b)^{2}}{2c^{2}}}\right\}

の形の初等関数である。なお、2c2 のかわりに c2 とするなど、表し方にはいくつかの変種がある。

ガウシアン関数、あるいは単にガウシアンとも呼ばれる。

図のような釣鐘型の関数である。

正規分布関数(正規分布確率密度関数)として知られる

1
2
π
σ
exp

{

(
x

μ
)
2
2
σ
2
}
{\frac {1}{{\sqrt {2\pi }}\sigma }}\exp \left\{-{\frac {(x-\mu )^{2}}{2\sigma ^{2}}}\right\}

は、ガウス関数の1種である。

ガウス関数の1つ exp (-x2) の両側無限積分ガウス積分と呼ばれ、





exp

(

x
2
)
d
x
=
π
\int _{{-\infty }}^{\infty }\exp({-x^{2}})dx={\sqrt {\pi }}

である。

ガウス関数の半値半幅 (HWHM) と半値全幅 (FWHM) は、

H
W
H
M
=
2
ln

2

σ
{{\rm {HWHM}}}={\sqrt {2\ln 2}}\cdot \sigma
F
W
H
M
=
2
2
ln

2

σ
{{\rm {FWHM}}}=2{\sqrt {2\ln 2}}\cdot \sigma

である。

光学分野においては、超短パルスの波形をガウス関数に近似することが多い。

非線形光学(ひせんけいこうがく、英語:nonlinear optics)とは、非常に強い光と物質が相互作用する場合に起きる、非線形の(つまり、光の電磁場に比例しない)物質の多彩な応答(現象)を扱う分野。レーザーの出現によって発展した分野であるが、レーザー自体の中でも非線形光学効果は本質的な役割を果たし、その特性をも支配する。 量子光学と深く関連している。

屈折率や吸収率など光学材料の光学定数は、光が弱いときは定数とみなせる。しかし、光が強くなる(非線形性を考える必要がある)と光強度の依存して変化するようになる。このように、光の物質の相互作用の非線形性に由来する現象を非線形光学現象という。

パラメトリック増幅器(ひかりパラメトリックぞうふくき、英:optical parametric amplifier、略称OPA)は光パラメトリック発生(optical-parametric generation、略称OPG)を応用してレーザー光の波長変換を行う装置の総称である。光パラメトリック発振(optical parametric oscillator、略称OPO)も本質的に同じものだが、光パラメトリック発振は光パラメトリック発生を発振器の中で行っているのに対し、光パラメトリック増幅は必ずしも発振器の中で行われるとは限らないという違いがある。光パラメトリック増幅を用いると、非線形媒質の角度をコンピュータ制御することによって、ボタン一つで様々な波長の光を作り出せる。

パラメトリック増幅とは、非線形光学効果を利用して、特定の周波数の光の強度を強くする操作であり、この仕組みを搭載した装置を光パラメトリック増幅器という。 光パラメトリック増幅では、シグナル光を種光、seed光と呼び、これをポンプ光で増幅する。増幅した結果、ポンプ光の強度は非常に弱くなり、アイドラー光が生じる。 シグナル光とポンプ光が非線形媒質内で相互作用してアイドラー光を生み出す、という原理は差周波発生と同じだが、光パラメトリック増幅ではシグナル光を増幅することに重きが置かれる。これは媒質に入射するシグナル光がポンプ光に比べ強度が非常に弱いため、ポンプ光のエネルギーがシグナル光とアイドラー光に移動するからである。

シグナル光とポンプ光が完全な位相整合状態の時、媒質に入射する前後のシグナル光の強度比は以下のようになる。

G
=
I
s
(
L
)
I
s
0
=
1
4
exp

2
Γ
L
.
{\displaystyle \mathrm {G} ={\frac {I_{s}(L)}{I_{s0}}}={\frac {1}{4}}\exp {2\Gamma L}.}

Lは媒質の厚さである。 また、Γはポンプ光の強度Ip、シグナル光・アイドラー光の波長λs, λi、媒質の非線形度deff、シグナル光・アイドラー光・ポンプ光それぞれの波長における媒質の屈折率ns, ni, npに依存する値である。

Γ
2
=
2
ω
i
ω
s
d
e
f
f
2
I
p
n
i
n
s
n
p
ϵ
0
c
0
3
.

ポッケルス効果は、誘電体の等方性結晶において電場をかけると複屈折性を示す現象である。その時、電場の強さに比例して屈折率が変化するのがポッケルス効果である。これに対し、電気光学カー効果は2乗に比例するものを指す。ポッケルス効果はカー効果と異なり、圧電性のある点対称でない結晶に電圧を交差させなければ起きない現象である。また、ポッケルス効果は光強度の一乗に比例して屈折率が変化するが、カー効果は光強度の二乗に比例して屈折率が変化する。

複屈折(ふくくっせつ、英: Birefringence)とは、光線がある種の物質(例えば方解石という結晶)を透過したときに、その偏光の状態によって、2つの光線に分けられることをいう。それぞれは通常光線と異常光線と呼ばれ、光学軸に対する偏光方向(電場ベクトルの向き)が異なる。この現象は,それぞれの偏光の向きに対して2つの異なる物質の屈折率を与えることで説明される。物質を透過する時の光の速さが、透過する光の電場ベクトルの向きに依存していると言い換えることもできる。

複屈折性は次のように定量化される。

Δ
n
=
n
e

n
o
\Delta n=n_e-n_o
ここで
n
o
{\displaystyle n_{o}} は通常光線についての屈折率、
n
e
n_{e} は異常光線についての屈折率である。二つの光線についての屈折率は入射光が光学軸と同軸で入射するときは一致する。通常光線についての屈折率は入射光の光学軸に対する角度には依存しない。一方で、異常光線についての屈折率は入射光の光学軸に対する角度によって変化し、入射光と光学軸のなす角が垂直の時に最大になる。

もっと一般的には、異方的な誘電体の誘電率を2階のテンソル(3×3行列)で記述する。複屈折性の物質は実対称誘電率テンソル
ϵ
\epsilon の特別な場合であり、3つの直交する偏極主軸についての固有値
n
o
2
n_o^2、
n
o
2
n_o^2、および
n
e
2
{\displaystyle n_{e}^{2}} であるものに対応する(または、光の伝播方向を固定して考え、残りの2つの軸だけを考えることもある)。

複屈折は原理的には誘電体だけではなく磁性体でも生じ得るが、透磁率は光の振動数の領域ではほとんど変化しない。

セロハン紙は、安価に手に入る複屈折性物質の一例である。

水晶球が本物であるかどうか判断する場合は、複屈折を確認するとよい。天然水晶の場合、複屈折により透過した景色の輪郭が滲んで見える。透明であっても、輪郭がにじまず明瞭に見える場合は、ガラス等の複屈折性のない物質だと区別できる。

 

FAME〜transesterification

脂肪酸メチルエステル(しぼうさんメチルエステル、英: Fatty acid methyl ester、略称: FAME)は、脂肪あるいは脂肪酸メタノールとのアルカリ触媒反応によって生産できる脂肪酸エステルの一種である。バイオディーゼル中の分子は主にFAMEであり、通常トランスエステル化(エステル交換反応(エステルこうかんはんのう、英: transesterification)は、エステルとアルコールを反応させた際に、それぞれの主鎖部分が入れ替わる反応である。アルコールがメタノールの場合はメタノリシスと言う[1]。)によって植物性脂肪から得られる。1トンの油脂と0.1トンのメタノールから、1トンのFAMEと0.1トンのグリセリンが得られる。

細胞の細胞膜および外膜(グラム陰性)脂質に存在する脂肪酸の種類および組成は、主要な表現型形質である。

全ての微生物は特異的なFAMEプロファイル(微生物フィンガープリント)を有していることから、微生物汚染源の追跡のために道具として使用できる。

病原性株を同定するために有用である。

FAMEは空気中の酸素と反応する不飽和脂肪酸由来の二重結合を部分的に含んでおり、分子間で架橋し樹脂化してしまうため、できるだけ酸素に曝らされない状態でなければならない。

ヨウ素価は樹脂の形成の傾向の指標である。これはヨウ素価が存在する炭素-炭素二重結合に比例するためである。ゆえに、高いヨウ素価のFAMEは低いヨウ素価のものよりも簡単に樹脂化する。

バイオディーゼル燃料の主成分は脂肪酸メチルエステルであるが、これは触媒を用いた油脂とメタノールエステル交換反応により得られ、その副産物がグリセリンである。

こうして得られたグリセリンには不純物が多く含まれている。石鹸生産の副産物の場合、活性炭や、アルカリ処理、イオン交換などによって精製を行い、蒸留によって高純度のグリセリンを得ることができる[3]。バイオディーゼル燃料生産の副産物の場合は不純物が非常に多い場合があり、単に焼却されることが多い[5]。

プロピレンからエピクロロヒドリンを経由して合成するのが主であるが、ほかにもアクロレインや酸化プロピレンを経由する方法などが知られている。もっともバイオディーゼル燃料の普及にともないグリセリンは供給過剰になっており、こうした化学合成法はコスト的に見合わなくなっている。

 化学原料としては、爆薬の成分や狭心症の薬となるニトログリセリンの原料として有名であるほか、有機合成でつかうヨウ化アリルの原料である。

植物においてはメチオニン→S-アデノシルメチオニン(SAM)→1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)→エチレンという経路を通して合成される[4]。この過程では、SAMからACCへの合成にACC合成酵素が、ACCからエチレンの合成にACC酸化酵素が関与する。

植物ホルモンの1つでもある。一般的には生長を阻害し、花芽形成も抑制する。例えば、ジャガイモの場合、エチレンにより萌芽が抑制される性質がある。一方、パイナップルなど一部の植物では、エチレンにより花芽形成が促進される場合もある。

水が過剰に与えられたとき、エチレンにより根の細胞の一部にアポトーシスが誘発され、シュノーケルと同様の機能を持つエアチューブが形成される。

また、エチレンは果実の「色づき」「軟化」といった成熟にも関与している。これはエチレンがセルラーゼに関与し、細胞壁組織の破壊が誘導されるためと考えられている。また、バナナなどのクライマクテリック型の果実では一般に成熟直後に生成量のピークを示し、それ以後は逓減する。リンゴはエチレンガスを発生させるので、バナナの傍で保管すると、バナナの成熟が早く進む。リンゴとジャガイモを一緒に保存するとエチレンによりジャガイモの発芽が抑制され、また、リンゴとホウレンソウを一緒に保存するとホウレンソウがエチレンにより黄変してしまうといった性質がある[5]。

リンゴのほかメロン、セイヨウナシ、アボカドは特に多くエチレンを放出する[5]。

さらに、エチレンは病原菌(カビや細菌など)の感染や組織が傷害を受けた時に生成され、これらに対する防御応答を誘導することが知られている。例えば、エチレンにより抗菌作用を持つタンパク質が誘導され、病原菌の感染が広がるのを防ぐといった防御機構が考えられている。また、エチレンは気体であるため、病害を受けた植物に隣接する他の植物に対しても作用し、防御応答を誘導すると考えられている。

メチオニン(methionine)は、側鎖に硫黄を含んだ疎水性のアミノ酸である。

対応するコドンが単一なアミノ酸は2つだけであり、1つはAUGでコードされるメチオニン、もう1つはUGGでコードされるトリプトファンである。コドンAUGはリボソームにmRNAからのタンパク質翻訳を「開始」させるメッセージを送る開始コドンとしても重要である。結果として真核生物および古細菌では全てのタンパク質のN末端はメチオニンになる。しかしながら、これは翻訳中のタンパク質に限るものであり、普通は翻訳完了後に修飾を受けて取り除かれる。メチオニンはN末端以外の位置にも出現する。なお、ヒトにとってメチオニン必須アミノ酸の1つである。

carbon dioxide laser

炭酸ガスレーザー(たんさんガスレーザー、carbon dioxide laser、CO2レーザー)はガスレーザーの一種であり、気体の二酸化炭素炭酸ガス)を媒質に赤外線領域の連続波や高出力のパルス波を得るレーザーである[1][2]。供給エネルギーに対して10-15%程度、最高で20%ほどの出力が得られる[3][4]。9.4μmと10.6μmを中心とする2つの波長帯で発光する。

炭素ガスレーザーにおける反転分布は、次のような過程を経てなされる。

電子が衝突することで窒素分子の振動が激しくなる。窒素は等核分子なので、光子を放出してもエネルギーを失わず、その高い振動準位は準安定で長時間持続する。
窒素分子と二酸化炭素分子が衝突し共鳴励起することでエネルギー交換が行われると、二酸化炭素分子も振動準位が高くなる。基底状態の分子よりも多くの二酸化炭素分子が上準位に遷移することでその領域が反転分布状態に達すると、わずかな光子の通過や衝突によって誘導放出が連続的に発生しレーザー発光となる。二酸化炭素分子に電子が直接衝突することでもエネルギーを受け取り、反転分布に到達する。
大きな振動エネルギーを持った(熱い)状態の窒素分子や二酸化炭素分子は、冷たいヘリウム原子などとの衝突によって基底状態へと遷移し冷やされる。
一般にガスレーザーはエネルギー効率が悪いが、炭酸ガスレーザーは例外的にエネルギー効率が良好である。これは他の分子では基底状態から反転分布状態までの準位差が広いわりに発光に使われるエネルギーはそのごく一部に過ぎないためであるが、窒素分子と二酸化炭素分子の組合せでは、励起状態の窒素分子の振動エネルギーがちょうど二酸化炭素分子を反転分布状態に到らせるのに必要なエネルギーに合っており、(エネルギー交換や反転分布する前に冷やされる分子などがあることや、二酸化炭素分子も基底状態から反転分布までに得たエネルギーの半分程度しか赤外線放射に利用できないにしても)無駄が少ないためである。二酸化炭素分子は上の準位へ遷移後の準安定状態での持続時間が比較的長いことも、良好な効率に寄与している。

炭酸ガスレーザーの基本形式は、低圧の混合ガスを含んだパイレックスガラス製の放電管(光共振器)の一方の端には反射率99.5%以上の全反射鏡を置き、別の端には反射率35-60%程度の半反射鏡(部分反射鏡、出力鏡)を置き、光を遮らない放電管内の側面や両端に放電用の電極を備える。鏡の大きさに対応した円形などの広がりを持ち平行でコヒーレントな光出力が半反射鏡側から得られるので、その後、利用に適するようにレンズや凹面鏡で集光されたりビーム直径が絞られたりする。大出力の光を導くのに光ファイバが用いられることはあまりなく、波長に対応した高反射鏡が用いられる。[7][8]。光加熱の問題を低減するため、レーザー出力をより高出力のシステムに多段結合することもある。鏡は放電管の両端に一体として作られる他に、放電管の外に置かれるものがある。

用いられる鏡は銀が蒸着される。窓とレンズはゲルマニウムセレン亜鉛を使う。高出力が必要な場合は、金の鏡とセレン亜鉛の窓とレンズが適当である。ダイヤモンドの窓とレンズを使う場合もある。ダイヤモンド製の窓は極めて高価だが、熱伝導率が高く硬いため、産業用の高出力レーザーには適している[9]。[要出典]

レーザーを増幅する媒質として二酸化炭素ガスを用い、その他のガスと混合して放電管と呼ばれる光共振器内に導入し、外部より電圧を加えてガス内で放電させる。出力が大きくなると水冷式になり、さらに高出力の場合は混合ガスを放電管外へ循環させる外部冷却方式が採られる。混合ガスの成分例を以下に示す。

二酸化炭素 (CO2) - 約10-20%
窒素 (N2) - 約10-20%
水素 (H2) またはキセノン (Xe) - どちらも数パーセント。シールド管でのみ使用。
ヘリウム (He) - 残りの全成分

レーザー加工機で用いられる大出力炭酸ガスレーザーでは、光共振器内で工業周波数帯と呼ばれる100kHz、2MHz、13.56MHzといった高周波電流により放電することで媒質に励起エネルギーを与える。これらでは、入熱などを考慮する必要から高周波の放電電流を断続させることでパルス波とし、繰り返し周波数は一定のままパルス波の長さを変化させデューティ比を変えることで出力を調整する。Qスイッチレーザーでは、音響光学的、電気光学的、または回転鏡式などによってQ値を調整することで短パルスながらピークパワーを高めている。

レーザー発振を連続すると、混合ガスが劣化するので休ませる必要があり、またヘリウム原子が熱を帯びるので冷やす必要もある。小出力用途で用いられる「封入型」では、ガラス容器の側壁から空冷(「低速軸流型」)や水冷で冷却される。大出力になると混合ガスは放電管内に封入されず、光出力と同軸方向(「高速軸流型」)や側面方向(「三軸直交型」)に高速の流れによって外部の冷却機構との間で還流される。[10]。 ガス圧が高いほど大出力にできるため、光共振器の両側面から電極をサンドイッチ状に配置して電圧勾配を高めることで大気圧でも放電を可能にしたTEA(Transversely Excited Atmospheric) 方式もある。

出力は、連続波出力がミリワット (mW) 単位のものから百キロワット (kW) 単位まで構築可能であり[11]、回転式ミラーや電気光学スイッチを使ったQスイッチでは、その場合のピーク出力はギガワット単位になる[12]。 二酸化炭素分子の特性から10.6μm と9.6μmの2つの波長を中心に9.2-10.8μm程度の幅をもって出力される。 実際このレーザーの遷移は直線状三原子分子の振動回転バンド上にあるため、光共振器を調整することでPバンドとRバンドの回転構造を選択できる。赤外での透過性素材はむしろ損失性があるので、周波数のチューニングはほとんどの場合回折格子を使う。回折格子を回転させると、振動遷移の特定の回転吸収線を選択できる。周波数の精密な選択にはエタロンを使うこともある。これと同位体置換を使うと、波数880 cm−1から1090 cm−1の範囲に連続的に分布する櫛歯形となる。このような炭酸ガスレーザーは主に研究用途で使われる[13]。

炭酸ガスレーザーは高出力が可能であるため、産業分野での加工用として切断や穿孔、溶接に使われ、中出力では彫刻などに利用されている。出力波長が水に吸収されやすいことから、生体生体組織を扱う外科手術でもレーザーメスなどで用いられる[14][15]。また、ラピッドプロトタイピングの光源としても利用されている[16]。

アクリル樹脂 (PMMA) は2.8μmから25μmの波長帯の赤外線を吸収するため、アクリル樹脂からマイクロ流体デバイスを製造するのに炭酸ガスレーザーが使われるようになってきた[17][18]。

赤外光は大気での吸収・減衰が比較的少ないため、LIDAR技術を使った軍事用の光波測距儀としてレーザーレンジファインダーに使われる。

Qスイッチとは、ジャイアントパルス(エネルギーの高いレーザー光)を得るために使用されるレーザーの技術。

一般的に、励起→反転分布→誘導放出の過程を経て得られる光の増幅はそう大きくない。 そこで、Q-スイッチ法では非常に多数の原子が励起状態になるまでQ値を低くして発振を抑え、十分に多くなったのち再びQ値を高くし発振させる方法である。 例えるなら、ダムに貯まった水を一気に放出するようなものである。 具体的な方法としてレーザー媒質と出力ミラーの間に回転プリズムや吸収体を置いたり、出力ミラー自身の位置を変えるといったさまざま方法がとられる。

Q値(英: Quality factor、品質係数Q)は主に振動の状態を表す無次元量である。弾性波の伝播においては、媒質の吸収によるエネルギーの減少に関係する値である。振動においては、1周期の間に系に蓄えられるエネルギーを、系から散逸するエネルギーで割ったもので、この値が大きいほど振動が安定であることを意味する。また、Q値は振幅増大係数とされる場合もある。これは、共振周波数近傍での強制振動における最大振幅が静的強制力による変位のQ倍となることから解釈される。振動子や電気回路の場合には一般にQ値が高いほうが望ましいが、逆にQ値が高いほど応答性が悪くなり、起動時間が長くなるという面もある。

振動する物理量の実際の振動状態は、周波数軸に展開した振動振幅(英: Amplitude)や位相(英: Phase)のスペクトラムにより理解される。振動スペクトラムの共振ピーク近傍の形はその振動系の振動状態を特徴付ける。Q値とは

Q
=
ω
0
ω
2

ω
1
Q={\frac {\omega _{0}}{\omega _{2}-\omega _{1}}}

で定義される無次元数。ここで、
ω
0
\omega _{0}、
ω
1
\omega _{1}、
ω
2
\omega _{2} はそれぞれ共振ピークでの共振周波数、共振ピークの左側において振動エネルギーが共振ピークの半値となる周波数、共振ピークの右側において振動エネルギーが半値となる周波数である。ここで
ω
2

ω
1
{\omega _{2}-\omega _{1}} を半値幅と呼ぶ。

Q値の低い機械振動系は振動エネルギーの分散が大きい系である。 Q値の高い構造物では一旦振動が開始されると振動が長く続く。

Q値が低い素材は振動がすぐに減少する性質がある。これを利用して防振材、防音材に用いられる。

混合ガス(こんごうガス)とは、各種高純度ガスを原料とし、それらを混合したガス。

溶接、特にアーク溶接において、溶接部に空気が混入することを避けるために混合ガスが用いられることがある。溶接で溶融している金属に空気が接すると、大量の窒素が金属の中に溶け込む。溶融金属が凝固する際、この窒素が一気に析出し泡となってそのまま固まってしまう。この状態になると溶接部分の機械的強度が著しく低下し、接合部分が非常にもろくなってしまう。そのため空気中でアーク溶接を行うには何らかの方法で空気と溶接部を遮断する必要があるのである。このように溶接部を空気から遮断するために用いられるガスのことをシールドガスと呼ぶ(シールドガスのアーク溶接における役割、機能についてはシールドガスおよびアークとシールドガスに詳述)。

シールドガスとして用いられる混合ガスとしては、不活性ガス(アルゴンなど)と二酸化炭素の混合ガスが有名である。この混合ガスを用いて行うアーク溶接を特にマグ溶接と呼ぶ。

半導体製造において、ウェハー上の結晶を促進させるなどさまざまな目的で混合ガスが使用される。半導体製造で用いられる混合ガスの種類は1万を超え、それらのほとんどが人体にとって有害なガスである。よってその取り扱いには細心の注意を払う必要がある。

比較的よく使用される混合ガスには、ヘリウムと酸素を混合したヘリオックス(HELIOX)、窒素と酸素を混合した(普通の空気よりも酸素の割合が多い)ナイトロックス(NITROX)、ヘリウム、窒素、酸素の3つを混合したトライミックス(TRIMIX)の3種類がある。それ以外、アルゴンと酸素を混合したアルゴックスや水素と酸素を混合したハイドロックスなど試験段階の混合ガスもある。

ヘリオックスとは、ヘリウムと酸素の混合気体の名称である。人工的に合成した呼吸ガスで、通常は窒素酔いが発生する45m以深の深度で使用し、その深度に合わせて酸素分圧を調整する。酸素分圧はUPTD(Unit of Pulmonary Toxic Dose、肺毒性単位)を考慮して混合される。不活性ガスであるヘリウムは、窒素と比較して体内へのとけ込みは早く、また体外への排出が遅いため、短時間あるいは浅い深度での潜水では、空気潜水(普通の空気を使用した一般的な潜水)よりも減圧停止時間が長くなる場合がある。ヘリウムは熱伝導率が高く使用時間によって体温の保持を考慮(ホットウォータースーツの使用が一般的で、極寒地では呼気を暖めるためガスヒーターを用いる)する必要がある。大深度においては、高圧神経症候群等も考慮する必要がある。またヘリウムを大量に産出する北米を除けば、ヘリウム自体が非常に高価なため、ヘリオックスを使用する潜水は、潜水ベルを使用したバウンス潜水や、DDC等を使用した飽和潜水等のシステム潜水が主である。閉鎖式スクーバや半閉鎖式スクーバ、あるいは送気式潜水では、ダイバーが吐き出したガスを回収するホースを付加(大循環)していたが、機器トラブルや管理が煩雑であるため呼気中のヘリウムを再利用できる形で使用するのは商業潜水においては一般的ではない。

ナイトロックスとは、窒素と酸素の混合気体の名称である。一般に空気より酸素分圧を高め高圧環境下における不活性ガスの解け込みを減少させる目的で使用する。しかし酸素中毒、毒性等の問題があり水深20~30m程度で使用するのが一般的で無減圧時間の延長と減圧停止時間の短縮を目的として使用する混合ガスである。たとえば一般的に使用される酸素32%窒素68%のナイトロックスを使用した潜水では、水深37mにおける窒素分圧が通常の空気潜水における水深31mに相当することとなり、タンクを用いたスキューバ式潜水では減圧時間の短縮により潜水時間を長くとることが出来る。言い換えるとナイトロックスを使用することによりある一定に条件下では水中での活動時間を長くすることが出来る。したがって潜水時間と減圧時間の比率に限ると空気を使用して潜水する場合に比較して減圧症に罹るリスクを若干ではあるが軽減出来ることになる。しかし前述のナイトロックスを使用した場合、水深40mを超えると酸素分圧が1.6気圧を超えるのでこのガスの使用深度は最大でも水深40m、理想的には酸素分圧が1.4気圧におさまる水深33mまでにすべきでそれを超えて使用する場合は急性酸素中毒等のリスクを十分に承知した上で使用すべきである。使用するガスが酸素と窒素というごく一般的なガスであるため、他の混合ガスと比べ非常に安価に製造できるという利点があるが、あくまで人工的に製造した呼吸ガスであることを理解して使用すべきである。ガスの製造にあたっては国家資格と許可を得た製造施設が必要で人工的に製造する呼気ガスの混合方法、検査方法など専門知識が必要であるためこの点を注意すべきである。

トライミックスは、ヘリオックスの欠点である高圧神経症候群を回避する目的で、鎮静作用をもたらす窒素を添加したものである。高価なヘリウムを節約できるのでテクニカルダイバーの主流になる混合ガスになる。 窒素酔いを回避する為、水深40m以上の比較的浅い水深より使われることも多くなった。 また水深130m以上の大深度潜水においてはトライミックス潜水が一般的である。

テクニカルダイビング(英語:technical diving)とは、オーバーヘッド環境(閉鎖環境)や減圧(仮想閉鎖環境)を伴う潜水のことである。

混合ガスを使用してとくに大深度へ潜水する場合には、深度に応じて呼吸する混合ガスの組成を変えることも必要になる。

たとえば水深150mまで潜水する場合、水深150mで酸素分圧を1.4気圧以下に抑えるためには酸素濃度9%以下の混合ガスを使用する必要がある。しかし、低酸素濃度の混合ガスを水面近くで呼吸すればただちに酸素欠乏を起こす。つまり、深いところでは酸素中毒の防止のため酸素の割合が低い混合ガスを使用し、浅いところでは減圧停止の時間を短くする意味でもできるだけ酸素の割合が高い混合ガスを使用する必要がある。

閉鎖式スクーバでは酸素分圧は設定した範囲に自動的に調整されるが、半閉鎖式スクーバや一般の開放式スクーバを使用する場合使用中に酸素分圧を変更することはできないので、深度別に何種類もの混合ガスのタンクを携行するか、あらかじめ必要な深度に必要な混合ガスのタンクをロープなどで固定しておく必要がある。

 

linear time-invariant system

LTIシステム理論(英語: LTI system theory)は、電気工学、特に電気回路、信号処理、制御理論といった分野で、線型時不変系(linear time-invariant system)に任意の入力信号を与えたときの応答を求める理論である。通常、独立変数は時間だが、空間(画像処理や場の古典論など)やその他の座標にも容易に適用可能である。そのため、線型並進不変(linear translation-invariant)という用語も使われる。離散時間(標本化)系では対応する概念として線型シフト不変(linear shift-invariant)がある。

伝達関数法(でんたつかんすうほう)とは、複素関数論(ラプラス変換など)を用いた制御系の解析法である。

伝達関数 (transfer function) とはシステムへの入力を出力に変換する関数のことをいう。伝達関数は、すべての初期値を 0 とおいたときの、制御系の出力と入力のラプラス変換(または Z 変換)の比で表される。すなわち、連続システムのとき、出力信号 y(t) のラプラス変換を Y(s)、入力信号 x(t) のラプラス変換を X(s) とすれば、伝達関数 G(s) は

G
(
s
)
=
Y
(
s
)
X
(
s
)
=
L
[
y
(
t
)
]
L
[
x
(
t
)
]
G(s)={\frac {Y(s)}{X(s)}}={\frac {{\mathcal {L}}\left[y(t)\right]}{{\mathcal {L}}\left[x(t)\right]}}

と表される。

離散システムに対して、伝達関数は Z 変換によって、

H
(
z
)
=
Y
(
z
)
X
(
z
)
=
Z
[
y
(
n
)
]
Z
[
x
(
n
)
]
H(z)={\frac {Y(z)}{X(z)}}={\frac {{\mathcal {Z}}\left[y(n)\right]}{{\mathcal {Z}}\left[x(n)\right]}}

と表される。

この伝達関数法では、時間領域の関数を、ラプラス変換(または Z 変換)によって複素平面写像を取り、さらに周波数領域に変換することにより、系の特性や安定性を解析するのに用いる。ただし、対象となる系が 1 入力 1 出力(線形関数)に限られているため、複雑な系(多入力多出力、非線形)の解析には状態空間法を用いる。しかしながら、この伝達関数法は、今日の制御理論においても基礎となる重要な理論である。

フーリエ級数フーリエきゅうすう、Fourier series)とは、複雑な周期関数や周期信号を、単純な形の周期性をもつ関数の(無限の)和によって表す方法である。フーリエ級数は、フランスの数学者ジョゼフ・フーリエによって金属板の中での熱伝導に関する研究の中で導入された。

熱伝導方程式は、偏微分方程式として表される。フーリエの研究の前までには、一般的な形での熱伝導方程式の解法は知られておらず、熱源が単純な形である場合、例えば正弦波などの場合の特別な解しかえられていなかった。この特別な解は現在では固有解と呼ばれる。フーリエの発想は、複雑な形をした熱源をサイン波、コサイン波の和として考え、解を固有解の和として表すものであった。 この重ね合わせがフーリエ級数と呼ばれる。

最初の動機は熱伝導方程式を解くことであったが、数学や物理の他の問題にも同様のテクニックが使えることが分かり様々な分野に応用されている。 フーリエ級数は、電気工学、振動の解析、音響学、光学、信号処理、量子力学および経済学[1]などの分野で用いられている。

ラプラス方程式ラプラスほうていしき、英: Laplace's equation)は、2階線型の楕円型偏微分方程式

∇2φ = Δφ = 0
である。ここで、∇2 = Δ はラプラシアンラプラス作用素ラプラス演算子)である。なお、∇ についてはナブラを参照。ラプラス方程式は、発見者であるピエール=シモン・ラプラスから名づけられた。ラプラス方程式の解は、電磁気学天文学流体力学など自然科学の多くの分野で重要である。ラプラス方程式の解についての一般理論はポテンシャル理論という一つの分野となっている。

R3 の場合に標準座標を用いてラプラス方程式を書くと次のようになる:


2

x
2
ϕ
(
x
,
y
,
z
)
+

2

y
2
ϕ
(
x
,
y
,
z
)
+

2

z
2
ϕ
(
x
,
y
,
z
)
=
0.
{\displaystyle {\partial ^{2} \over \partial x^{2}}\phi (x,y,z)+{\partial ^{2} \over \partial y^{2}}\phi (x,y,z)+{\partial ^{2} \over \partial z^{2}}\phi (x,y,z)=0.}
数学以外の自然科学の分野では、たとえば電荷分布のない一様な媒質中の静電ポテンシャルや、熱伝導など拡散方程式の定常な場合などがこの方程式で表される。ラプラス方程式には、時間に当たる変数 t が含まれていない。即ち、ラプラス方程式は、時間によって変化しない定常状態を表す偏微分方程式であると言える。時間を反映した変数がないので、ラプラス方程式には、初期条件はなく、境界条件だけが必要となる。

ラプラシアン固有値は、ある関数 u ≠ 0 について


u
=
λ
u
\triangle u=\lambda u
を満たすような λ である。これはヘルムホルツ方程式である。

ヘルムホルツ方程式(ヘルムホルツほうていしき、Helmholtz equation)は、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツの名にちなむ方程式で、

(

2
+
k
2
)
A
=
0
{\displaystyle (\nabla ^{2}+k^{2})A=0}
という楕円型偏微分方程式である。 ここで

2
\nabla ^{2}はラプラシアン、k は定数、A = A (x, y, z ) は3次元ユークリッド空間 R3 で定義された未知関数である。k = 0 はラプラス方程式である。

ヘルムホルツ方程式はしばしば、時間と空間の両方を含む偏微分方程式が関わる物理学の問題を扱うときに現れる。そうした偏微分方程式を扱うにあたって変数分離を行うことにより、時間によらない部分 としてヘルムホルツ方程式が出てくるのである。

例えば波動方程式

(

2

1
c
2

2

t
2
)
u
(
r
,
t
)
=
0
{\displaystyle \left(\nabla ^{2}-{\frac {1}{c^{2}}}{\frac {\partial ^{2}}{\partial t^{2}}}\right)u({\boldsymbol {r}},t)=0}
を考える。関数 u (t ) が時間部分と空間部分に分離できると仮定して

u
(
r
,
t
)
=
A
(
r
)
T
(
t
)
{\displaystyle u({\boldsymbol {r}},t)=A({\boldsymbol {r}})T(t)}
と変数分離し、これを波動方程式に代入し整理すると

(

2
+
k
2
)
A
=
0
{\displaystyle (\nabla ^{2}+k^{2})A=0}
(
d
2
d
t
2
+
ω
2
)
T
=
0
{\displaystyle \left({\frac {d^{2}}{dt^{2}}}+\omega ^{2}\right)T=0}
という2つの微分方程式が得られる。ここで k は分離定数であり、また ω = kc とおいた。 これで、空間変数 r に関するヘルムホルツ方程式と、時間に関する2階の常微分方程式が得られた。時間の常微分方程式の解は角振動数 ω の sin と cos の線形結合で表される。一方、空間の微分方程式の解は境界条件によって決まる。 また、ラプラス変換フーリエ変換などの積分変換によって、双曲型の偏微分方程式ヘルムホルツ方程式に変換されることもある。

ヘルムホルツ方程式は波動方程式と関連があるので、電磁波の放射、地震学、音響学などの物理学の諸分野で出てくる。

偏微分方程式は、自然科学の分野で流体や重力場、電磁場といった場に関する自然現象を記述することにしばしば用いられる。これらの場というものは例えば、フライトシミュレーションやコンピュータグラフィックス、あるいは天気予報などといったものを扱うために重要な役割を果たす道具である。また、一般相対性理論量子力学の基本的な方程式も偏微分方程式である。また、経済学においても重要な概念であり、特に金融工学において多用される。

数学の分野における楕円型偏微分方程式(だえんがたへんびぶんほうていしき、英: elliptic partial differential equation)とは、一般的な二階の偏微分方程式

A
u
x
x
+
2
B
u
x
y
+
C
u
y
y
+
D
u
x
+
E
u
y
+
F
=
0
{\displaystyle Au_{xx}+2Bu_{xy}+Cu_{yy}+Du_{x}+Eu_{y}+F=0\,}
で次の条件を満たすもののことを言う:

B
2

A
C
<
0.

{\displaystyle B^{2}-AC<0.\ }
(ここで、暗に
u
x
y
=
u
y
x
{\displaystyle u_{xy}=u_{yx}} を意味している)。

円錐断面や二次形式を分類する際に判別式
B
2

4
A
C
{\displaystyle B^{2}-4AC} を利用するように、二階の偏微分方程式に対しても、ある与えられた点において、同様の分類が行われる。しかし、偏微分方程式に対する判別式はそれとは異なり、
B
2

A
C
{\displaystyle B^{2}-AC} で与えられることが慣例となっている(詳細については「二階の方程式(英語版)」を参照されたい)。前述の形式は、平面上の楕円の方程式

A
x
2
+
2
B
x
y
+
C
y
2
+

=
0
{\displaystyle Ax^{2}+2Bxy+Cy^{2}+\cdots =0}
と同様のものである。この方程式は(
u
x
y
=
u
y
x
=
0
{\displaystyle u_{xy}=u_{yx}=0} である場合には)

A
u
x
x
+
C
u
y
y
+
D
u
x
+
E
u
y
+
F
=
0
{\displaystyle Au_{xx}+Cu_{yy}+Du_{x}+Eu_{y}+F=0}
および
A
x
2
+
C
y
2
+

=
0
{\displaystyle Ax^{2}+Cy^{2}+\cdots =0} へと変わる。これは、標準的な楕円の方程式
x
2
a
2
+
y
2
b
2

1
=
0
{\displaystyle {x^{2} \over a^{2}}+{y^{2} \over b^{2}}-1=0} に類似している。

一般的に、n 個の独立変数 x1, x2 , ..., xn が与えられた際に、二階の線型偏微分方程式は次の形で記述される:

L
u
=

i
=
1
n

j
=
1
n
a
i
,
j

2
u

x
i

x
j
+ (lower-order terms)
=
0
{\displaystyle Lu=\sum _{i=1}^{n}\sum _{j=1}^{n}a_{i,j}{\frac {\partial ^{2}u}{\partial x_{i}\partial x_{j}}}\quad {\text{ + (lower-order terms)}}=0\,},
ここで、L は楕円型作用素である。

例えば、三次元 (x,y,z) においては

a

2
u

x
2
+
b

2
u

x

y
+
c

2
u

y
2
+
d

2
u

y

z
+
e

2
u

z
2
+ (lower-order terms)
=
0
,
{\displaystyle a{\frac {\partial ^{2}u}{\partial x^{2}}}+b{\frac {\partial ^{2}u}{\partial x\partial y}}+c{\frac {\partial ^{2}u}{\partial y^{2}}}+d{\frac {\partial ^{2}u}{\partial y\partial z}}+e{\frac {\partial ^{2}u}{\partial z^{2}}}{\text{ + (lower-order terms)}}=0,}
が得られる。ここで、u が完全分離可能(英語版)(すなわち、u(x,y,z)=u(x)u(y)u(z))である場合には、

a

2
u

x
2
+
c

2
u

y
2
+
e

2
u

z
2
+ (lower-order terms)
=
0
{\displaystyle a{\frac {\partial ^{2}u}{\partial x^{2}}}+c{\frac {\partial ^{2}u}{\partial y^{2}}}+e{\frac {\partial ^{2}u}{\partial z^{2}}}{\text{ + (lower-order terms)}}=0}
が得られる。

これは、楕円体の方程式
x
2
a
2
+
y
2
b
2
+
z
2
c
2

1
=
0
{\displaystyle {x^{2} \over a^{2}}+{y^{2} \over b^{2}}+{z^{2} \over c^{2}}-1=0} と対応している。 いちばん簡単な例は,


u
=
f
(
x
)
{\displaystyle \triangle u=f(x)}
のようなラプラス方程式である。

楕円体(だえんたい、ellipsoid)とは楕円を三次元へ拡張したような図形であり、その表面は二次曲面である。楕円面の方程式は

x
2
a
2
+
y
2
b
2
+
z
2
c
2
=
1
{\frac {x^{2}}{a^{2}}}+{\frac {y^{2}}{b^{2}}}+{\frac {z^{2}}{c^{2}}}=1
である。ここで a, b, c はそれぞれx軸、y軸、z軸方向の径の半分の長さに相当する。なお a = b = c である楕円体は球である。また a, b, c のうちいずれか2つが等しい楕円体は楕円の軸を中心に楕円を回転して得られる回転体であり、回転楕円体と呼ばれる。楕円体は球と同様にxy平面、yz平面、zx平面に関して対称である。

楕円面の媒介変数表示は極座標系を用いると

x =asin⁡θcos⁡φ y =bsin⁡θsin⁡φ z =ccos⁡θ{\begin{aligned}x&=a\sin \theta \cos \varphi \\y&=b\sin \theta \sin \varphi \\z&=c\cos \theta \end{aligned}}
0

θ

π
,
0

φ

2
π
0\leq \theta \leq \pi ,\quad 0\leq \varphi \leq 2\pi
と表される。楕円体の体積 V は

V
=
4
3
π
a
b
c
V={\frac {4}{3}}\pi abc
である。表面積 S は

S
=
2
π
(
c
2
+
b
a
2

c
2
E
(
o
ε
,
m
)
+
b
c
2
a
2

c
2
F
(
o
ε
,
m
)
)
S=2\pi \left(c^{2}+b{\sqrt {a^{2}-c^{2}}}E(o\!\varepsilon ,m)+{\frac {bc^{2}}{{\sqrt {a^{2}-c^{2}}}}}F(o\!\varepsilon ,m)\right)
となる。
o
ε
o\!\varepsilon はモジュラー角、
m
=
b
2

c
2
b
2
sin
2

o
ε
m={\frac {b^{2}-c^{2}}{b^{2}\sin ^{2}o\!\varepsilon }}、
E
(
o
ε
,
m
)
E(o\!\varepsilon ,m)、
F
(
o
ε
,
m
)
F(o\!\varepsilon ,m) はそれぞれ第一種および第二種楕円積分である。近似式で

S

4
π
(
a
p
b
p
+
a
p
c
p
+
b
p
c
p
3
)
1
/
p
S\approx 4\pi \!\left({\frac {a^{p}b^{p}+a^{p}c^{p}+b^{p}c^{p}}{3}}\right)^{{1/p}}
という公式が知られている。ここでpは定数で、p = 1.6075 のとき誤差は最大でも1.061%である。

convolution

関数解析学において、ラプラス変換ラプラスへんかん、英: Laplace transform)とは、積分で定義される関数空間の間の写像(線型作用素)の一種。関数変換。

ラプラス変換の名はピエール=シモン・ラプラスにちなむ。

ラプラス変換によりある種の微分積分は積などの代数的な演算に置き換わるため、制御工学などにおいて時間領域の(とくに超越的な)関数を別の領域の(おもに代数的な)関数に変換することにより、計算方法の見通しを良くするための数学的な道具として用いられる。

フーリエ変換を発展させて、より実用本位で作られた計算手法である。1899年に電気技師であったオリヴァー・ヘヴィサイドが回路方程式を解くための実用的な演算子を経験則として考案して発表し、後に数学者がその演算子に対し厳密に理論的な裏付けを行った経緯がある。理論的な根拠が曖昧なままで発表されたため、この計算手法に対する懐疑的な声も多かった。この「ヘヴィサイドの演算子」の発表の後に、多くの数学者達により数学的な基盤は1780年の数学者ピエール=シモン・ラプラスの著作にある事が指摘された(この著作においてラプラス変換の公式が頻繁に現れていた)。

従って、数学の中ではかなり応用寄りの分野である。ラプラス変換の理論は微分積分線形代数、ベクトル解析、フーリエ解析複素解析を基盤としているため、理解するためにはそれらの分野を習得するべきである。

これと類似の解法として、より数学的な側面から作られた演算子法がある。こちらは演算子の記号を多項式に見立て、代数的に変形し、公式に基づいて特解を求める方法である。

実数 t ≥ 0 について定義された関数 f (t) のラプラス変換とは

F
(
s
)
=

0

f
(
t
)
e

s
t
d
t
{displaystyle F(s)=int _{0}^{infty }f(t)mathrm {e} ^{-st}mathrm {d} t}

で定義される s の関数 F(s) のことである。ここで s は複素数であり、2 つの実数 σ, ω を用いて s = σ + iω と表すことができる(i は虚数単位)。右辺の積分ラプラス積分 (Laplace integral) と呼ばれる。これは時間領域から複素平面への写像である。

また、c > 0 として、関数 F(s) から元の関数 f (t) を計算することを逆ラプラス変換 (inverse Laplace transform) といい、

f
(
t
)
=
lim
p


1
2
π
i

c

i
p
c
+
i
p
F
(
s
)
e
s
t
d
s
{displaystyle f(t)=lim _{p o infty }{rac {1}{2pi i}}int _{c-ip}^{c+ip}F(s)mathrm {e} ^{st},mathrm {d} s}

のように定義されている。右辺の積分はブロムウィッチ積分 (Bromwich integral) と呼ばれる。これは複素平面から時間領域への写像である。

これは複素積分となっている。定義通りの積分経路では計算が難しくなるが、閉曲線となるように積分経路を変更して留数を計算することにより簡単に逆ラプラス変換を求める事が可能となる。結果を言えば複素平面上の全ての特異点の留数の総和となる。ここで、f (t) を原関数 (original function)、F(s) を像関数 (image function) という。

ラプラス変換の他の記述の仕方として、次のようなものもある。

F
(
s
)
=
L
[
f
(
t
)
]
{displaystyle F(s)={mathcal {L}}[f(t)]}

同様に逆ラプラス変換は、次のようにも記述される。

f
(
t
)
=
L

1
[
F
(
s
)
]
{displaystyle f(t)={mathcal {L}}^{-1}[F(s)]}

また、これらの記号を用いた写像

L
: f↦F,
L

1
:F↦f{egin{aligned}{mathcal {L}}&colon ~fmapsto F,\{mathcal {L}}^{{-1}}&colon Fmapsto fend{aligned}}

のことも、それぞれラプラス変換、逆ラプラス変換と呼ぶ。

普通、ラプラス変換および逆ラプラス変換を行う際には変換表を参照して計算する場合が多いので、前述した定義式にしたがって計算することは少ない。だが場合によっては定義式から計算したほうが簡単なときもある。たとえば逆ラプラス変換をする際に部分分数分解をしなければならない場合、むしろブロムウィッチ積分を計算したほうが早いことも多い。

注:
ラプラス変換は、関数 f (t) にいったん e−σtθ(t) を乗じてからフーリエ変換する操作であると考えることができる(ここで θ(t) はステップ関数である)。
F
(
s
)
:=
F
(
σ
,
ω
)
=




θ
(
t
)
f
(
t
)
e

σ
t
e

i
ω
t
d
t
=
=
s
=
σ
+
i
ω

0

f
(
t
)
e

s
t
d
t

両側ラプラス変換積分区間を全実数域へと拡張したもので、以下のように定義される。

F
(
s
)
=
L
{
f
(
t
)
}
=




e

s
t
f
(
t
)
d
t

数列 an の(通常型)母関数

G
(
a
n
;
x
)
=

n
a
n
x
n
G(a_{n};x)=sum _{n}a_{n}x^{n},
において x = e−s とすると、

G
(
a
n
;
e

s
)
=

n
a
n
e

s
n
G(a_{n};{mathrm {e}}^{{-s}})=sum _{n}a_{n}{mathrm {e}}^{{-sn}},
となる。 ここで和を積分に変えれば

G
(
a
t
;
e

s
)
=

a
t
e

s
t
d
t
{displaystyle G(a_{t};mathrm {e} ^{-s})=int a_{t}mathrm {e} ^{-st}mathrm {d} t,}
となり、関数 at のラプラス変換と一致する。この意味においてラプラス変換は母関数の「連続版」とみなすことができる。 こうした理由により、母関数とラプラス変換は同種の性質を満たすことがある。たとえば母関数の性質

G
(
a
n
;
x
)
G
(
b
n
;
x
)
=
G
(
a
n

b
n
;
x
)
G(a_{n};x)G(b_{n};x)=G(a_{n}*b_{n};x),
ラプラス変換の性質

L
[
f
]
(
s
)
L
[
g
]
(
s
)
=
L
[
f

g
]
(
s
)
{mathcal {L}}[f](s){mathcal {L}}[g](s)={mathcal {L}}[f*g](s),
に対応する。ここで * は畳み込み積。

2つの正方形による畳み込み。解として得る波形は三角波となる。黄色の領域で示されている面積が2つの方形波の合成積である。

正方形がRC回路に入力された場合の出力信号波形を得るために、RC回路のインパルス応答と方形波の畳み込みを行っている。 黄色の領域で示されている面積が合成積である。

畳み込み(たたみこみ、英: convolution)とは関数 g を平行移動しながら関数 f に重ね足し合わせる二項演算である。畳み込み積分、合成積、重畳積分、あるいは英語に倣いコンボリューションとも呼ばれる。

ラプラス変換と逆ラプラス変換は互いに他の逆変換である。

L
L

1
=
L

1
L
=
I
{displaystyle {mathcal {L}}{mathcal {L}}^{-1}={mathcal {L}}^{-1}{mathcal {L}}=I}

ここで、I は恒等変換を表わす。

ラプラス変換は線型性を持ち、したがって特に重ね合わせの原理 を用いて計算することが可能である。ラプラス変換が線型性を持つとは、任意の関数 f(t), g(t) に対して

L
[
a
f
(
t
)
+
b
g
(
t
)
]
=
a
F
(
s
)
+
b
G
(
s
)
{mathcal {L}}[af(t)+bg(t)]=aF(s)+bG(s)

が成り立つということである。ただし、a, b は t に関係しない定数。逆ラプラス変換も同様に線形性を持ち、

L

1
[
a
F
(
s
)
+
b
G
(
s
)
]
=
a
f
(
t
)
+
b
g
(
t
)
{mathcal {L}}^{{-1}}[aF(s)+bG(s)]=af(t)+bg(t)

が成り立つ。したがって、与えられた関数を部分分数分解できるとき、各因子がラプラス変換の表にあるものに合致すれば、その変換が求められる。

関数解析学において、Z変換(ゼッドへんかん、Z-transform)とは、離散群上で定義される、ローラン展開をベースにした関数空間の間の線形作用素。関数変換。

Z変換は離散群上でのラプラス変換とも説明される。なお、Z変換という呼び方は、ラプラス変換のことを「S変換」と呼んでいるようなものであり、定義式中の遅延要素であるzに由来する名前である。

列xnのZ変換は以下の式で定義される:

Z
[
x
n
]
=
X
(
z
)
=

n
=



x
n
z

n
{\displaystyle {\mathcal {Z}}[x_{n}]=X(z)=\sum _{n=-\infty }^{\infty }x_{n}z^{-n}}

ここでnは整数でzは複素数である。なお後述の片側Z変換に対してこれを両側Z変換(two-sided Z-transform、bilateral Z-transform)と呼ばれる。

n<0 でxn=0のような場合は、総和の範囲を 0 〜 ∞ で計算できる:

Z
[
x
n
]
=
X
(
z
)
=

n
=
0

x
n
z

n
{\displaystyle {\mathcal {Z}}[x_{n}]=X(z)=\sum _{n=0}^{\infty }x_{n}z^{-n}}

これを元の定義と区別して片側Z変換(single-sided Z-transform、unilateral Z-transform)と呼ぶこともある。工学の分野などでは因果律を想定するので、こちらの式で定義することがある。

二次元信号(例えば画像)に対する二次元Z変換の定義は類似的である:

Z
[
x
(
n
1
,
n
2
)
]
=
X
(
z
1
,
z
2
)
=

n
1
=




n
2
=



x
(
n
1
,
n
2
)
z
1

n
1
z
2

n
2

なお、Z変換級数は一般には発散することがある。収束するzの領域(収束領域,Region of Convergence)を以下のように書ける:

ROC
=
{
z
:

n
=



x
n
z

n
<

}
{\displaystyle {\mbox{ROC}}=\left\{z:\sum _{n=-\infty }^{\infty }x_{n}z^{-n}<\infty \right\}}

厳密にはこの収束領域内においてのX(z)を、xnのZ変換と定義する。

二次元Z変換の収束領域の定義は類似する:

ROC
=
{
(
z
1
,
z
2
)
:

n
1
=




n
2
=



x
(
n
1
,
n
2
)
z
1

n
1
z
2

n
2
<

}

Z変換の逆変換である逆Z変換(inverse Z-transform)は次のようになる:

x
n
=
Z

1
[
X
(
z
)
]
=
1
2
π
i

C
X
(
z
)
z
n

1
d
z
{\displaystyle x_{n}={\mathcal {Z}}^{-1}[X(z)]={\frac {1}{2\pi i}}\oint _{C}X(z)z^{n-1}\,dz}

ここでiは虚数単位で積分路CはX(z)の極を全て含むような閉路である。

なおこの式は留数定理を用いて留数の和として計算することができる。しかし、手計算で計算するときは以下の方法がよく使われる:

X(z)が既に級数展開されている場合、z-kの係数をxkの値とすることで簡単に逆変換ができる。例えば、z+2-3z-1の逆変換は { ..., 0, x-1=1,x0=2,x1=-3, 0, ...} のように係数をならべるだけで得られる。
X(z)を部分分数分解し、各々の部分分数を変換表を用いて逆変換したものの和として逆変換を得る。
いずれにせよ、定義に示した積分計算そのものを直接計算することは稀である。