元来はモジュラ群に対して定義されていたアイゼンシュタイン級数は、保型形式の理論へ一般化することができる。アイゼンシュタイン級数をヒルベルト・ブレメンタールのモジュラ群のすべてのカスプに関連付けることができる。

アイゼンシュタイン級数(Eisenstein series)は、ドイツの数学者ゴットホルト・アイゼンシュタイン(Gotthold Eisenstein)にちなみ、直接書き下すことができる無限級数展開を持つ特別なモジュラ形式である。元来はモジュラ群に対して定義されていたアイゼンシュタイン級数は、保型形式の理論へ一般化することができる。

τ を虚部が 正となる複素数とする。k ≥ 2 を整数としたとき、ウェイト 2k の正則アイゼンシュタイン級数(holomorphic Eisenstein series) G2k(τ) を


と定義する。

この級数は、上半平面で τ の正則函数へ絶対収束し、下記に与える級数フーリエ展開は、 τ = i∞ へ正則函数として拡張されることを示している。アイゼンシュタイン級数がモジュラ形式であることは注目すべき事実である。実際、キーとなる性質は、級数の SL(2, Z)-不変性である。明らかに、a, b, c, d ∈ Z で ad − bc = 1 であれば、


となり、従って、G2k はウェイト 2k のモジュラ形式である。k ≥ 2 であるという前提は重要で、そうでないと非合理的に和の順番を変更したり、 SL(2, Z)-不変性が保てなくなる。事実、ウェイト 2 の非自明なモジュラ形式は存在しない。にもかかわらず、正則アイゼンシュタイン級数の類似物が k = 1 に対して、準モジュラ形式(英語版)(quasimodular form)でしかないが、定義することが可能ではある。

楕円曲線のモジュラ不変量 g2 と g3 は、アイゼンシュタイン級数の最初の 2 つの項で、次のように与えられる。



これら2つの函数はテータ函数によって表すこともできる。

モジュラ群のどのモジュラ形式も、G4 と G6 の多項式として書き表すことができる。特に、高次オーダーの G2k は漸化式を通して、G4 と G6の項として書くことができる。dk =(2k+3)k!G2k+4 とすると、全ての n ≥ 0 に対し、dk は関係式


を満たす。ここに、 は二項係数であり、 であり、 である。

dk は、ヴァイエルシュトラスの楕円函数


級数展開で発生する。

と定義する。(古い書籍では、q をノーム(nome) として定義してあるものもあるが、現在では が数論では標準的である。)するとアイゼンシュタイン級数フーリエ級数は、


であり、ここにフーリエ係数 c2k は、


で与えられる。

ここに、Bn はベルヌーイ数であり、ζ(z) はリーマンゼータ函数であり、σp(n) は約数函数で、n の約数の p 乗の和である。特に、


を得る。

n を渡る和の部分は、ランベルト級数(英語版)(Lambert series)として表すことができる。すなわち、任意の複素数 |q| ≤ 1 と a に対して、


を得る。アイゼンシュタイン級数のq-展開(q-expansion)を考えると、別な表し方である。


が良くつかわれる。

とし、




として、




と定義する。ここに and はヤコビのテータ函数(Jacobi theta functions)の代わる記法である。すると、



となる。 と であるので、これは、


を意味する。

アイゼンシュタイン級数は、全モジュラ群 SL(2, Z) のモジュラ形式の最も明白な例である。ウェイト 2k のモジュラ形式の空間は、2k = 4, 6, 8, 10, 14 に対しては次元1となるため、これらのウェイトを持つようなアイゼンシュタイン級数の積が複数あるとき、それらは互いに定数倍となる。このようにして、等式


を得る。上で与えられたアイゼンシュタイン級数の q-展開を使い、約数のべき和を意味する等式


に言い換えられる。

よって、


が成り立ち、他も同様に成り立つ。さらに興味深いことには、8 次元偶数モジュラ格子 Γ のテータ函数は、全モジュラ群に対し、ウェイト 4 のモジュラ形式である。このことは、タイプ E8のルート格子(英語版)(E8 lattice)の長さ のベクトルの数 rΓ(n) ついて、等式


をもたらす。

ディレクレ指標(英語版)(Dirichlet character)でツイストされた正則アイゼンシュタイン級数に対する同様のテクニックは、正の整数nに対しn を2、4、もしくは8個の平方数の和として表す方法の数の、nの因子を用いた公式をもたらす。

上記の漸化式を使い、全ての高次の E2k は E4と E6 の多項式で表現することができる。例えば、

アイゼンシュタイン級数の積の間の多くの関係は、ハンケルの判別式(Hankel determinants)、つまり、ガーヴァンの等式(Garvan's identity)を使い、エレガントな方法で、


と表すことができる。ここに

ラマヌジャン(Ramanujan)は、最初のいくつかのアイゼンシュタイン級数微分を含む興味深い関係式を導いた。




とすると、




が成り立つ。

これらの恒等式は、級数の間の恒等式のように、約数函数の畳み込みの等式をもたらす。ラマヌジャンに従い、これらの等式を最も単純な形とするためには、0 を含む σp(n) の領域を拡張する必要がある。そのため、



と置く。すると、例えば、


となる。

L, M, N の函数の間の前述の関係式に直接関係しないこのタイプの他の等式は、ラマヌジャンとギウゼッペ・メルフィ(英語版)(Giuseppe Melfi)により証明された。例として、挙げると、




約数函数に対する畳み込み等式の包括的なリストと関連するトピックは、以下を参照。

 


はモジュラ判別式である。

保型形式(Automorphic form)は、一般リー群のモジュラ形式の考え方を一般化し、アイゼンシュタイン級数を似たような形で一般化する。

OK を総実体 K の整数環とすると、PSL(2,OK) としてヒルベルト・ブレメンタールのモジュラ群(英語版)(Hilbert-Blumenthal modular group)が定義される。従って、アイゼンシュタイン級数ヒルベルト・ブレメンタールのモジュラ群のすべてのカスプに関連付けることができる。

カスプ形式(cusp form)、もしくは尖点形式とは、モジュラー形式のうちカスプでのフーリエ級数展開の定数項が 0 であるものをいう。

カスプ形式はフーリエ級数展開(q-展開(英語版)(q-expansion)を参照)


の定数係数 a0 が 0 である。このフーリエ展開は、変換


の上半平面のモジュラー群の作用の結果として現れる。

他の群の場合には、複数のカスプを持つ場合があり、それに応じて複数のフーリエ展開を持つこととなる。どのカスプにおいても、q → 0 としたときの極限は上半平面の z の虚部を → ∞ としたときの極限である。商をとるとこの極限はモジュラー曲線のカスプ(英語版)(cusp)に対応している。カスプ形式の定義は全てのカスプでゼロとなるようなモジュラー形式となる。

カスプ形式の空間の次元は、リーマン・ロッホの定理を通して、原理的には計算できる。例えば、重さ 12 のカスプ形式の空間の次元は 1 であることが計算できる。このことから、有名なラマヌジャン函数 τ(n) を、a1 = 1 であるようなモジュラー群の重さ 12 のカスプ形式のフーリエ係数として定義する事が意味を持つ。さらにヘッケ作用素が定数倍であることもわかる(ラマヌジャンの等式のモーデルによる証明)。重さ 12 のカスプ形式はモジュラ判別式(すなわち楕円曲線ヴァイエルシュトラスの方程式の右辺の 3 乗の判別式)


およびデデキントのエータ函数の 24 乗と定数倍を除いて等しい。フーリエ係数は、


であり、とくに τ(1) = 1 のものがラマヌジャンのタウ函数と呼ばれる。

より一般の保型形式においては、スペクトル論の「離散スペクトル」/「連続スペクトル」とそれに伴う「離散系列の表現」/「誘導表現」という区分において、カスプ形式はアイゼンシュタイン級数を補完する形になっている。すなわち、アイゼンシュタイン級数は、カスプでの与えられた値をとるように「設計」されている。放物部分群(英語版)(parabolic subgroup)の理論や対応するカスプ表現の理論に基づいた一般論がある。

より一般的なホッジラプラシアン

ラプラス作用素の概念は、リーマン多様体上で定義されたラプラス=ベルトラミ作用素(英語版)と呼ばれる楕円型作用素に一般化することができる。同様にダランベール作用素は擬リーマン多様体上の双曲型作用素に一般化される。ラプラス=ベルトラミ作用素函数に適用すれば、その函数のヘッセ行列のトレース


が得られる。ただし、トレースは計量テンソルの逆に関して取るものとする。ラプラス=ベルトラミ作用素を同様の式でテンソル場に作用する作用素(これもまたラプラス=ベルトラミ作用素と呼ばれる)に一般化することができる。

ラプラス作用素の別な一般化として、擬リーマン多様体上で定義される外微分を用いた「幾何学者のラプラシアン」と呼ばれる


を考えることもできる。ここで d∗は余微分(英語版)で、ホッジ双対を使って書くこともできる。これが上に述べた「解析学者のラプラシアン」とは異なるものであることには注意すべきである。そのことは大域解析学の論文を読むときには常に気を付けねばならない。 より一般に、微分形式に対して定義される「ホッジ」ラプラシアン α は


と書ける。これはまたラプラス=ドラーム作用素(英語版)とも呼ばれ、ヴァイツェンベック不等式(英語版)によってラプラス=ベルトラミ作用素と関係する。

ラプラシアンを適当な仕方によって非ユークリッド空間に一般化することができて、それには楕円型、双曲型、超双曲型(英語版)などが可能である。

ミンコフスキー空間におけるラプラス=ベルトラミ作用素ダランベール作用素


となる。これは考える空間上の等長変換群のもとで不変な微分作用素であるという意味においてラプラス作用素の一般化となるものであり、時間不変函数へ制限する限りにおいてはラプラス作用素に帰着される。ここでは計量の符号を作用素の空間成分に関して負符号を許すようにしてあることに注意(高エネルギー粒子物理学ではこう仮定するのが普通)。ダランベール作用素波動方程式に現れる微分作用素であるという理由で波動作用素と呼ばれることもある。これはまたクライン=ゴルドン方程式(質量の無い場合には波動方程式に帰着される)の成分でもある。

計量における余分な因子 c は、物理学において空間と時間を異なる単位で測っている場合に必要となるものである(例えば同様のことは x-方向をメートルで y-方向をセンチメートルで測ったりするような場合にも出てくる)。実際、理論物理学では方程式を簡単にする目的で、自然単位系などの単位系のもと c = 1 として扱うのがふつうである。

Ω が超球面であるときの、ラプラス作用素の固有函数は球面調和函数と呼ばれる。

ラプラス作用素のスペクトルは、対応する固有函数 f が


を満たすようにできる固有値 −λ の全てからなる[要検証 – ノート]。上の式はヘルムホルツ方程式と呼ばれるものである。 Ω を Rn の有界領域とすれば、ラプラス作用素の固有函数全体はヒルベルト空間 L2(Ω) の正規直交基底を成す。この結果は本質的にはコンパクト自己随伴作用素に関するスペクトル定理をラプラス作用素の逆作用素(これはポワンカレ不等式およびコンドラコフ埋蔵定理(英語版)によってコンパクト)に適用することにより従う[3]。固有函数が無限回微分可能函数であることも示せる[4]。この結果はより一般に、任意の境界付きコンパクトリーマン多様体上のラプラス=ベルトラム作用素について成り立ち、また実際に有界領域上滑らかな係数を持つ任意の楕円型作用素に対するディリクレ固有値問題についても正しい。Ω が超球面であるときの、ラプラス作用素の固有函数は球面調和函数と呼ばれる。

 

現在ではラプラス方程式と呼ばれる方程式 ∆f = 0 の解は調和函数と呼ばれ、自由空間において可能な重力場を表現するものである。ラプラス作用素は、合同変換に対して不変な微分演算子の中で、自明なもの(=恒等的に0を対応させる微分演算子)を除けば最も簡単なものである。ラプラス作用素それ自身は拡散方程式によって記述されるような、科学密度の流入や漏出を表す点を含む非平衡拡散に対する物理的解釈を持つ。

数学におけるラプラス作用素ラプラスさようそ、英: Laplace operator)あるいはラプラシアン(英: Laplacian)は、ユークリッド空間上の函数の勾配の発散として与えられる微分作用素である。記号では ∇·∇, ∇2, あるいは ∆ で表されるのが普通である。函数 f の点 p におけるラプラシアン ∆f(p) は(次元に依存する定数の違いを除いて)点 p を中心とする球面を半径が増大するように動かすときの f(p) から得られる平均値になっている。直交座標系においては、ラプラシアンは各独立変数に関する函数の二階(非混合)偏導函数の和として与えられ、またほかに円筒座標系や球座標系などの座標系においても有用な表示を持つ。

ラプラス作用素の名称は、天体力学の研究に同作用素を最初に用いたフランス人数学者のピエール=シモン・ド・ラプラス (1749–1827) に因んでいる。同作用素は与えられた重力ポテンシャルに適用すると質量密度の定数倍を与える。現在ではラプラス方程式と呼ばれる方程式 ∆f = 0 の解は調和函数と呼ばれ、自由空間において可能な重力場を表現するものである。

微分方程式においてラプラス作用素は電気ポテンシャル、重力ポテンシャル、熱や流体の拡散方程式、波の伝搬、量子力学といった、多くの物理現象を記述するのに現れる。ラプラシアンは、函数の勾配フローの流束密度を表す。

ラプラス作用素はn 次元ユークリッド空間上の函数 f の勾配 ∇f の発散 ∇· として定義される二階の微分作用素である。つまり、f が二回微分可能実数値函数ならば f のラプラシアン


 
(1)
で定義される。ただし、あとの記法は形式的に と書いたものである。あるいは同じことだが、f のラプラシアンは直交座標系 xi における非混合二階偏導函数の全てにわたる和


 
(2)
としても書ける。二階の微分作用素として、ラプラス作用素はCk 級函数を Ck − 2 級の函数へ写す (k ≥ 2)。つまり、式 1 (あるいは同値な 2) は作用素 ∆: Ck(Rn) → Ck − 2(Rn) を定める。あるいはより一般に任意の開集合 Ω に対して作用素 ∆: Ck(Ω) → Ck − 2(Ω) を定める。

ラプラス作用素は、合同変換と可換である。すなわち、任意のC∞級関数φ : Rn → Rと任意の合同変換Tに対し、


が成立する[1]。

しかもラプラス作用素は、上記の性質を満たす非自明な微分演算子で最も簡単なものとして特徴づけることができる。これを説明する為、記号を導入する。Rを実数の集合とし、n個の実数からなる組の集合をRnとする。x=(x1,…,xn)∈Rnとn個の非負整数の組α=(α1,…,αn)に対し、



と表記する。微分演算子


が任意のC∞級関数φ : Rn → Rと向きを保つ任意の合同変換Tに対し、


が成立していたとする。このとき、実数係数の1変数多項式p(X)=Σm umXmが存在し、


が成立する[1]。

よってラプラス作用素は、合同変換に対して不変な微分演算子の中で、自明なもの(=恒等的に0を対応させる微分演算子)を除けば最も簡単なものである。

 
拡散の物理理論において、ラプラス作用素は(ラプラス方程式を通じて)平衡の数学的記述に自然に現れる[2]。具体的に、u が化学濃度のような適当な量の平衡密度であるとき、u の滑らかな境界を持つ領域 V を通る流束が、V に流入も漏出も無いとすれば、0 であるから


と書ける。ただし、 は領域 V の境界に対して外側を向く単位法ベクトルである。発散定理により


は領域 V が滑らかな境界を持つ限りにおいて成り立つから、これにより


が導かれる。方程式の左辺はラプラス作用素である。ラプラス作用素それ自身は拡散方程式によって記述されるような、科学密度の流入や漏出を表す点を含む非平衡拡散に対する物理的解釈を持つ。

φ が電荷分布 q に付随した電位を記述するものとすると、電荷分布自身は φ のラプラシアンとして


 
(1)
で与えられる。これはガウスの法則の帰結である。実際、V が任意の滑らかな領域ならば、電場 の電束に関するガウスの法則により、(単位当たりの)電荷


になる。ただし、最初の等号は静電場は静電位の勾配に等しいという事実を用いた。発散定理により、


が成り立ち、これは任意の領域 V に対して成り立つことから (1) を得る。

同じ説明によって、重力ポテンシャルのラプラシアンが質量分布となることが導かれる。電荷や質量の分布が与えられていてそれらに付随するポテンシャルは未知ということはよくあることである。適当な境界条件の下でポテンシャル函数を求めるということは、ポワソン方程式を解くことに同じである。

物理学においてラプラス作用素が現れる別な理由は、領域 U における方程式 ∆f = 0 の解はディリクレエネルギー汎函数を停留させる函数


となることである。これを見るために f: U → Rは函数で、函数 u: U → R は U の境界上で消えていると仮定する。このとき


が成り立つ(ただし、最後の等号はグリーンの第一恒等式(英語版)を用いた)。この計算により、∆f = 0 ならば E は f の周りで停留する。逆に E が f の周りで停留するならば変分法の基本補題(英語版) により ∆f = 0 である。

二次元のラプラス作用素は x, y を xy-平面上の標準直交座標として


で与えられる。

極座標

三次元では様々な座標系がラプラシアンを記述するために広く用いられる。

直交座標系

円筒座標系

球面座標系

一般の曲線座標系(英語版)

N 次元球座標系において、r を正の実数をとる半径、θ は単位球面 SN−1 の元として、パラメータ表示 x = rθ ∈ RN をすれば


と書ける。ただし、∆SN−1 は球ラプラシアンとも呼ばれる (N−1)-次元球面上のラプラス=ベルトラミ作用素である。二つの球対称微分項は


と書いても同じことである。一つの帰結として、SN−1 ⊂ RN 上で定義される函数の球ラプラシアンは へ延長した函数の通常のラプラシアンとして計算することができて、それは半直線に沿って定数(つまり、斉零次の斉次函数)になる。

 

ワイルズによる、有理数体上の半安定楕円曲線のモジュラー性の証明は、ラングランズ予想の一部と見做すことができる[なぜ?]が、ワイルズの方法を任意の数体上に拡張することはできない。

GL(1, K) に対するラングランズ予想は類体論から従う(というよりは本質的には同じものである)。
ラングランズ自身は、アルキメデス局所体(R および C)に対するラングランズ予想を、既約表現に対するラングランズ分類を与えて肯定的に解決している。
ルスティックによる、有限体上のリー型の群の既約表現の分類は、有限体に対するラングランズ予想に相当するものと考えられる。
ワイルズによる、有理数体上の半安定楕円曲線のモジュラー性の証明は、ラングランズ予想の一部と見做すことができる[なぜ?]が、ワイルズの方法を任意の数体上に拡張することはできない。
有理数体上の二次一般線型群 GL(2, Q) に対するラングランズ予想は未解決。
ラフォルグは函数体 K 上の一般線型群 GL(n, K) に対するラングランズ予想を保証するラフォルグの定理(英語版)を示した。これは GL(2, K) の場合を示したウラジーミル・ドリンフェルトの先行研究に続くものである。

Kutzko (1980) は、局所体上の二次一般線型群 GL(2, K) に対する局所ラングランズ予想(英語版)を証明した。一般次元の場合には、Laumon, Rapoport, and Stuhler (1993) が、大域理論を含む論法を以って正標数局所体 K 上の一般線型群 GL(n, K) に対する局所ラングランズ予想を証明し、標数 0 の局所体上の一般線型群 GL(n, K) に対する局所ラングランズ予想は Taylor and Harris (2001) の証明や、あるいは Henniart (2000) の証明などがある(何れも大域的な議論を用いるものである)。

2008年にゴ・バオ・チャウ(Ngô Bảo Châu)は、所謂「基本補題(英語版)」と称される補助的だが非常に難しい主張を示した。基本補題はもともとラングランズ自身によって1983年に述べられたものである[3][4]。

これらすべての予想を、有理数体 Q に替えてより一般の体、例えば(もともとの予想であり、最も重要な場合である)代数体や局所体、あるいは(素数 p に対するp-元体 Fp 上の有理函数体 Fp(t) の有限次拡大体であるような)函数体に対して定式化することができる。

ラングランズ・プログラム(英: Langlands program)は、代数的整数論におけるガロア群の理論を、局所体およびそのアデール上で定義された代数群の表現論および保型形式論に結び付ける非常に広汎かつ有力な予想網である。同プログラムは Langlands (1967, 1970) により提唱された。

非常に広い脈絡において、既存の概念を用いて、ラングランズプログラムは構築される。これには例えば、それより少し前にハリッシュ=チャンドラ(英語版)と Gelfand (1963) が定式化していたカスプ形式の哲学や、半単純リー群に関するハリシュ=チャンドラの手法及び結果、セルバーグの跡公式などが含まれる。

初めこそ非常に新しかったラングランズの研究も、技術的に深められる中で、豊かに体系立った仮説的な構造(いわゆる函手性)を伴って数論との直接的な繋がりを提示するものとなった。

例えば、ハリッシュ=チャンドラの仕事において、半単純(あるいは簡約)リー群に対してできることは、任意の代数群に対してできるはずであるという原理を見ることができる。従って、その手法というのは、既に知られていたモジュラ形式論における GL(2) や、後から認識されるようになった類体論における GL(1) などの、ある種の低次元リー群が果たす役割を、少なくとも一般に n > 2 に対する GL(n) についての考察を明らかにすることであるということができる。

カスプ形式の概念の出所は、モジュラー曲線上のカスプのみならずスペクトル論においても(アイゼンシュタイン級数からの連続スペクトル(英語版)と対照を成す)離散スペクトルとも見ることができる。より大きなリー群に対してカスプ形式を考えることは、放物型部分群(英語版)の数が膨大になるため、より技巧的な扱いを要する。

こういった手法の何れにおいても技術的な近道となる方法はなく、しばしば本来帰納的でとりわけレヴィ分解(英語版)に基づいているが、その分野は昔も今も非常に多くのことが要求される[1]。

モジュラー形式の側からは、例えばヒルベルトモジュラー形式(英語版)、ジーゲルモジュラー形式(英語版)、テータ級数などの例があった。

ラングランズ予想の述べた方は様々に異なった方法があり、それらは密接に関連しているが、それらの同値性については明らかなことではない。

ラングランズプログラムの出発点は、二次の相互律を一般化したアルティンの相互律であると考えられる。アルティンの相互律は、ガロワ群が可換であるような代数体のガロワ拡大に適用して、L-函数をガロワ群の一次元表現に対応させ、さらにそれら L-函数がある種のディリクレ L-級数やヘッケ指標から構成されるより一般の級数(つまり、リーマンゼータ函数のある種の対応物)と同一視できることを主張するものである。これら種々の異なる L-函数の間の具体的な対応が、アルティンの相互律を構成しているのである。

非可換なガロワ群やその高次元表現に対しても、L-函数は自然な方法で定義することができる(アルティン L-函数)。

ラングランズの考察は、アルティンの主張をより一般の仮定の下で定式化することを許すような、ディリクレ L-函数の真の一般化を求めることであった。

ヘッケ(英語版)は既に、ディリクレ L-函数を保型形式(C の上半平面上で定義される正則函数である種の函数等式を満たすもの)に関連付けていたが、ラングランズはそれを(有理数体 Qのアデール環 A 上で定義される一般線型群GL(n, A) の無限次元既約表現の一種である)保型尖点表現に対して一般化した。(Q のアデール環というのは、Q の任意の完備化を一斉に扱ったようなものである)。

ラングランズは、保型 L-函数をその保型表現に対応させ「任意のアルティンのL-函数が、代数体のガロワ群の有限次元表現から生じることと、保型尖点表現から生じることとは等しい」と予想した。これをラングランズの「相互律予想」という。一口に言えば、相互律予想は簡約代数群の保型表現とラングランズ群からL-群への準同型との間の対応を与えるものである。この相互律は、ラングランズ群や L-群の定まった定義がないために、いくつものバリエーションがある。局所体上での相互律は、局所体上の簡約代数群の既約許容表現のL-パケット(英語版)の径数付けを与えることが期待される。例えば、実数体上での相互律は実簡約代数群の表現のラングランズ分類(英語版)であり、大域体上では保型形式の径数付けを与える。

函手性予想の主張するところは、L-群の適当な準同型が(大域体の場合の)保型形式や(局所体の場合の)表現の間の対応を与えることが期待されるということである。簡単にいえば、ラングランズの相互律予想は函手性予想のうちで簡約代数群が自明である特別の場合である。

ラングランズは函手性の概念を、一般線型群 GL(n) の代わりに他の連結簡約代数群を用いることができるように一般化した。さらにラングランズは、そのような群 G に対してラングランズ双対群 LG を構成して、G の任意の保型尖点表現と LG の任意の有限次元表現に対し、ある種の L-函数を定義した。ラングランズの予想の一つは、この L-函数が既知の L-函数函数等式を一般化したある種の函数等式を満足することを主張する。

こうしてラングランズは、非常に一般な「函手性原理」を定式化するに至る。これは、二つの簡約代数群とそれらに対応する L-群の間の(素性の良い)準同型が与えられたとき、これらの群の保型表現はその L-函数に対して整合的な仕方で関連することを予想するものである。この函手性予想からは、これまでにあった全ての予想が系として導かれる。これは誘導表現(英語版)の構成の特質である(もっと従来からの保型形式論において「持ち上げ(英語版)」と呼ばれていたもので、特別な、従って(表現の制限(英語版)が反変的であるのに対して)共変的であるような場合が知られていた)。直接的な構成を明示的に述べることが試みられたが、いくらか限定的な結果が得られただけであった。

これらすべての予想を、有理数体 Q に替えてより一般の体、例えば(もともとの予想であり、最も重要な場合である)代数体や局所体、あるいは(素数 p に対するp-元体 Fp 上の有理函数体 Fp(t) の有限次拡大体であるような)函数体に対して定式化することができる。

ドリンフェルトのアイデアに従ってローモンの提唱した、いわゆる幾何学的ラングランズプログラムは、通常のラングランズプログラムを幾何学的に定式化しなおして、単に既約表現だけを考える以上のものを関連付けようとして生じたものである。単純な場合だと、代数曲線のエタール基本群(英語版)の l-進表現を、その曲線上のベクトル束のモジュライスタック(moduli stack)上で定義された l-進層の導来圏の対象に関連付ける。