de

完全に。

ドラエモン(どらえもん) [日本番組]

中国語 : 多拉A梦

健康 (jian4 kang1・健康である/健全である)

広 東 語

休息下

yau1 sik1 ha6

粤語(えつご)は、シナ・チベット語族、シナ語派の言語の一つである。広東省の中部および西南部、広西チワン族自治区東南部を中心とする各地で話される。

粤語を代表する方言に広州方言を基盤に成立した広東語があり、一種の共通語として広州だけでなく広く粤語地域や海外華僑社会においても用いられる。日常的には広東語のことを「粤語」と称することもあるが、これは上海語を「呉語」と呼ぶのと同様に、学問的には正確でない。

音節頭子音(声母)のうち、中古音の全濁は、阻害音の場合に声調によって異なる変化をとげている。すなわち、平声・上声では有気音に、去声・入声では無気音に変化している。ただし、広東語の文語層と四邑方言(「b」以外)は上声でも無気音に変化している[1]。いっぽう広西の粤語では全濁が息もれ声を帯びているため無声の無気音・有気音とは区別され、中古音の三項対立がそのまま残っている[1]。

中古音で音節頭子音に続く介母音は衰退しているが、その一方で音節末子音(韻尾)の -m/n/ŋ, p/t/k の区別はよく保たれている。

声調は平声・上声・去声がそれぞれ声母の清濁によって陰陽2つに分かれる。他の方言では陽上声が陽去声に合流しているのが普通だが、粤語では両者が分かれているのが特徴である。入声はさらに母音の種類によって陰入声が2つに分かれる方言がある(広東語を含む)。陽入声も分かれる方言もある。

中国系アメリカ人はその多くが台山出身であった[2]。台山の言葉は粤語の四邑(台山・新会・開平・恩平)方言に属し、広東語の有気音の t が h に、ts が t に変化するなど、声母にかなりの違いがある。このため、初期のアメリカの地名の漢字音訳にはマンハッタンを「民鉄吾」とするような、不思議な文字が使われていることがある[3]。

粤語の内部には以下の下位方言が含まれる。広州市街の方言は、以下の各下位方言を含む粤語地域における標準語としての役割を果たしているが、粤語全体の広がりからすると広州は東端に位置する。

粤海方言片
広州方言(広州話、広府話、省城話)
香港粤語
南番順方言(南海話、番禺話、順徳話)
中山方言(中山話、石岐話)
莞宝方言片
東莞話
宝安粤方言(囲頭話)
羅広方言片(肇慶話)
四邑方言片(台山話)
高陽方言片(陽江話)
桂南方言片(広西話)
邕潯粤語(南寧話)
梧州粤語(梧州話)
勾漏粤語(玉林話)
欽廉粤語(欽廉話)
呉化方言片(呉川話、化州話)
疍家話(水上話)
論争が行われている方言片
龍門本地話(客家語に入れる説もある)
儋州話
平話(粤語と対等の大方言とする説もある)

^ S・R・ラムゼイ 『中国の諸言語』 大修館書店、128頁。「中国系アメリカ人の推定86パーセントが, 自分の先祖を広東省, 普通は広州の約100キロ南西に在る小さな田舎町の台山にたどっている。」
^ 黄剛 (2014), 美國地名中譯的華夏情, 宏観電子報
^ Wurm, Stephen Adolphe; Li, Rong; Baumann, Theo; Lee, Mei W. (1987), Language Atlas of China, Longman, ISBN 978-962-359-085-3

音韻的に入声や鼻音韻尾を有し、白文異読が少ないなど、中古音との整合性が高い。

一方で、広州は清代から他の地域に先駆けてイギリスなどの外国との接触が始まったため、英語からの借用語も少なくない。特にイギリスの植民地支配を長く受け、英語を併用していた香港の広東語には、英語からの借用語が多く使われている。同様にポルトガルに統治されていたマカオの広東語には少量のポルトガル語からの借用語がある。

統語論的には、オーストロ・アジア語族の言語と同じように、修飾辞が被修飾辞の後ろに付く単語(「鷄公」、「椰青」、「豆腐潤」など)が少なくないこと、二重目的語の順序が異なること、数詞を伴わない量詞(類別詞)で名詞を限定するなど、他の中国語の方言と異なる部分がある。逆修飾は古中国語でも見られる[2]。

香港では、テレビ、ラジオのメディアで使われている公用言語であり、映画、演劇、歌謡曲でも広く使用されている。また、新聞、雑誌、Webサイトでも方言を使った文章が広く書かれており、これを表記するための話し言葉も多く作られている。

香港のテレビ番組では基本的にチャンネル別で広東語か英語が使われており、字幕は繁体字表記の書面語である[3]。一方、広東省のテレビ、ラジオでは、独自番組を広東語で放送することが多いが、普通話の番組も放送している。広東電視台珠江チャンネル、南方電視台南方衛星テレビは広東語のみのチャンネルである。仏山市、湛江市など、地方のテレビ局でも、広東語番組を放送している例がある。

広東語は経済地域として独立していた香港の経済発展によって、その影響力や地位が上昇し、日本の大学の中国語学部では広東語の講義を行う例もあり、日本でも広東語の教材も多く販売されている。香港映画に憧れて習得する日本人も少なくない。これはドイツの一方言という扱いから国語になったオランダ語の例に似ている。

2010年7月5日、広州市の諮問機関、人民政治協商会議が地元テレビの広東語チャンネルを標準語に改めるべきだと同市に提案した結果、地元住民が反発。7月25日には、「広東語を守れ!」と叫ぶ2000人以上の地元住民による抗議集会が開かれ、出動した警察隊に解散させられた。広州市は同月28日、広東語チャンネルを維持する考えを表明し事態収拾に乗り出したが、住民の抗議活動は収まらず、8月1日には広州と香港でほぼ同時に広東語擁護を求める住民デモが行われた。広州市では数百人が参加して「広東語万歳!」とのスローガンを連呼、警察隊が抗議集会を解散させて一部の参加者が拘束され、香港でも民主派活動家ら約150人が参加して広州市住民運動を支援するデモが繰り広げられた。

2011年12月1日、広東省政府は『広東省国家通用語言文字規定』[4]を制定し、普通話の使用促進と方言の使用についてさらに明確な規定をし、2012年3月1日より施行するとした。これに関して、テレビなどの広東語放送ができなくなるなどの報道があったが、2011年12月24日広東省政府は記者会見を行い、広東省広播電影電視局何日丹副局長は、批准を受けている限り施行後も広東語などの方言放送ができなくなることはないと明言した[5]。

上記の声母に加えて、広東語の子音としては入声の音節末に見られる内破音がある。内破音には両唇 (-p [p̚])、歯茎 (-t [t̚] )、軟口蓋 (-k [k̚])の3種がある。また、非入声の音節末には両唇 (-m [m])、歯茎 (-n [n])、軟口蓋 (-ng [ŋ])の3種の鼻音韻尾を持つものがあり、意味の弁別に使われている。

s-、j-、ch-は歯茎音で発音される場合と後部歯茎音で発音される場合があり、現在はこの違いは意味に影響しないが、20世紀前半までは意味の弁別に使われていた。

両唇閉鎖音
b- [p]: 無声無気両唇破裂音
p- [pʰ]: 無声有気両唇破裂音
-p [p̚]: 両唇内破音
m-, -m [m]: 両唇鼻音
f- [f]: 無声唇歯摩擦音
歯茎閉鎖音
d- [t]: 無声無気歯茎破裂音
t- [tʰ]: 無声有気歯茎破裂音
-t [t̚]: 歯茎内破音
n-, -n [n]: 歯茎鼻音
s- [s]: 無声歯茎摩擦音
歯茎破擦音
j- [ts]: 無声無気歯茎破擦音
ch- [tsʰ] : 無声有気歯茎破擦音
l- [l]: 歯茎側音
y- [j] 硬口蓋接近音
軟口蓋閉鎖音
g- [k]: 無声無気軟口蓋破裂音
k- [kʰ]: 無声有気軟口蓋破裂音
-k [k̚]: 軟口蓋内破音
円唇軟口蓋閉鎖音
gw- [kʷ]: 円唇無声無気軟口蓋破裂音
kw- [kʷʰ]: 円唇無声有気軟口蓋破裂音
ng-, -ng [ŋ]: 軟口蓋鼻音
h- [h]: 無声声門摩擦音
w- [w]: 両唇軟口蓋接近音

母音と音節末の子音の組み合わせである韻母は、50数種程度(借用語や擬音語にのみ見られる韻母などの数え方で異なる)ある。母音に長母音と短母音の対立があるなど、タイ語群の基層が残っていると考えられる。

広東語は、他の中国語と同様に声調言語であり、広州や香港の発音では平声、上声、去声、入声が陰陽(高低)各1対と、陰入声がさらに高低に分かれて増えた中促調の、計9つの声調がある。他に、意味に違いはないが、陰平声を高平調で発音する事も多く、高平調、高昇調、高昇降調と3つの変調があるので、細かく分けると12種、または13種の声調があるとも言えるが、実際には基本的に6種類か7種類の調値を区別すればよい。

ここで示した調値は5度式であり、5が最も高く、1が最も低いことを表す。

広東語では、連続変調現象は多くなく、同一成分が反復される場合や、接頭語の「阿」の後に陰平調の語が続く場合や、単音節語を強調していう場合などに変調が起きる。単音節語の強調の場合、上昇後下降する変調である。

妹妹 mui6mui6 → mui4mui2(妹)
阿 a3+ 王 Wong4 → A2wong2(王ちゃん)
有 yau5 → yau2'(有るとも)
また、個別の語彙が陰上調に変調して意味を区別する例が少なくない。

女 neui5(女) → 女 neui2(娘)

一つの漢字に「白読音」(口語音)と「文読音」(文語音)が有る例はさほど多くないが、個別の字では見られる。

 白読 : 文読

名 meng2 : ming4(名)(同様の韻母の交替例: 青、正、聲など)
斷 tyun5 : dyun6(切れる)
白読音で読ませるために別の漢字が作られ、方言字となっている場合もある。

嚟 lai4 : 來 loi4
埗 bou2 : 埠 bou6

香港を中心として次のような現象が多くみられ、否定的なニュアンスを伴って「懶音」とよばれる。

頭子音のnがlに変化する 例:「你 nei5」(あなた)→「lei5」(=李)
頭子音のngが脱落する 例:「我 ngo5」(わたし)→「o5」
gwoがgoに、kwoがkoに変化する 「廣東 Gwong2dung1」→「Gong2dung1」
音節末のngやmがnに変化する 例:「行 hong4」→「hon4」(=寒)、「曇 taam4」→「taan4」(=壇)

広東語の語彙には北京語と比べて、古中国語と共通する語彙が多い。

 広東語 : 北京語

食 sik6 : 吃 chī (食べる)
飲 yam2 : 喝 hē (飲む)
徛、企 kei5 : 站 zhàn (立つ)
行 haang4 : 走 zǒu (歩く)
面 min6 : 臉 liǎn (顔)

広東語にはチワン語と関連すると思われる語彙がいくつか見られる。基層となっている語彙なのか、借用語なのかは不明である。これらの多くは方言字で書かれる。

 広東語 : チワン語

啲 di1 : di (少し、もっと、割に)
曱甴 gaat6jaat2 : gaenxcaengh (ゴキブリ)
冚 kam2 : hoemq (かぶせる、覆う、蓋をする)
踎 mau1 : maeuq (しゃがむ)
啱 ngaam1 : ngamj (ちょうど良い、正しい)
呢 ni1 : neix (この)
痾 o1 : ok (排泄する)
嘥 saai1 : sai (無駄にする)

「子」のような接尾語を多用する北京語と比べ、基本語彙には単音節語が多い。

 広東語 : 北京語

檯 toi2 : 桌子 zhuōzi (テーブル)
知 ji1 : 知道 zhīdao (知る、分かる)

広東語には英語からの借用語が多い。これは、清代からイギリスとの接触を持ち、ピジン英語が話されていた時代もあったことと関係がある。また、香港は155年間のイギリスによる統治を経て、さらに英語からの借用語が増えた。

英語からの借用語はかなり多いが、常用されるものの例を挙げる。

爹地 de1dei6(変調:de1di4) : daddy (父親)
媽咪 maa1mai1(変調:ma1mi4) : mummy (母親)
肥佬 fei4lou2 : fail (不合格)
亞摩尼亞、阿摩尼阿 a3mo1nei4a3 : ammonia (アンモニア)
巴士 ba1si6(変調:ba1si2) : bus (バス))
杯葛 bui1got3 : boycott (ボイコット)
暢 cheung3 : change (両替する)
的士 dik1si6(変調:dik1si2) : taxi (タクシー)
多士 do1si6(変調:do1si2) : toast (トースト)
菲林 fei1lam4(変調:fei1lam2) : film (フィルム)
吉列 gat1lit6 : cutlet (カツレツ)
基 gei1 : gay (ゲイ、レズビアン)
檸檬 ling4mung4(変調:ling4mung1) : lemon (レモン)
忌廉 gei6lim4(変調:lim1) : cream (クリーム)
芝士 ji1si6(変調:ji1si2) : cheese (チーズ)
茄士咩 ke4si6me1(変調:ke1si6me1) : cashmere (カシミヤ)
曲奇 kuk1kei4 : cookie (クッキー)
咪 mai1 : mic (マイク)
米 mai1 : mile (マイル)
三文治 saam1man4zi6 : sandwich (サンドイッチ)
士多 si6do1 : store (食料品店などを売る雑貨店)
士多啤梨 si6do1be1lei4(変調:si6do1be1lei2) : strawberry (ストロベリー)
士碌架 si6luk1gaa2 : snooker (スヌーカー)
保齡 bou2ling4 : bowling (ボウリング)
貼士 tip3si6(変調:tip1si2) : tips (チップ(心付け)、ヒント)
碌士 luk1si6(変調:luk1si2) : notes (筆記)
波士 bo1si6(変調:bo1si2): boss (ボス、上司)
安士 on1si6(変調:on1si2) : ounce (オンス)
餐士 caan1si6(変調:caan1si2) : chance (機会)
渣 zaa1 : jar (瓶 [単位系])
沙律 saa1leot6(変調:saa1leot2) : salad (サラダ)
咖啡 kaa1fei1(変調:gaa3fe1) : coffee (コーヒー)
咭/卡 gat1(変調:kaat1) : card (カード)
卡通 kaa1tung1 : cartoon (アニメ)
香港ではイニシャル化したり、音をアルファベットに当てて借用する例もある。

開P hoi1pi1 : 開 party (パーティーを開く)
Q版 kiu1baan2 : cute 版(キュート版、デフォルメ版)

日本語からの借用語の例を挙げる。

壽司 sau6si1 : 寿司
卡拉OK ka1la1ou1kei1 : カラオケ
寫眞集 se2jan1jaap6 : (ヌードの載った)写真集(和製漢語からの逆借用)
榻榻米 taap3taap3mai5 : 畳(台湾華語経由)
鐵板燒 tit3baan2siu1 : 鉄板焼き(鉄板は漢語)
人氣 yan4hei3 : 人気(和製漢語からの逆借用)
物語 mat6yu5 : 物語
WASABI wa6sa1bi4 : わさび
烏冬 wu1dung1 : うどん

マカオの広東語にはポルトガル語からの借用語がいくつか見られる。

□□ mi1go6 : amigo (友だち、黒人兵士)
窿丁 lung1ding1 : não tem (無い)
馬介休 ma5gaai3yau1 : bacalhau (バカリャウ、鱈の塩辛い干物)
梳巴 so1ba1 : sopa (野菜スープ)

マレーシアの広東語にはマレーシア語からの借用語がいくつか見られる。

甘榜 gam1bong1 : kampung (田舎)
鐳 leui1 : duit(金銭)

日本語における広東語からの借用語には以下がある。

キョンシー (殭屍 geung1si1)
シューマイ (燒賣 siu1maai6)
チャーシュー (叉燒 cha1siu1)
パクチョイ (白菜 baak6choi3)
ハトシ (蝦多士 ha1do1si2)
ファンタン (番攤 faan1taan1)
ヤムチャ (飮茶 yam2cha4)
ライチ (荔枝 lai6ji1)
ワンタン (雲吞 wan4tan1)

英語における広東語からの借用語には以下がある。

bok-choy (白菜 baak6choi3) (パクチョイ)
chop suey (雜碎 jaap6seui3) (チャプスイ)
chow mein (炒麵 chaau2min6) (焼きそば)
conpoy (乾貝 gon1bui3) (乾し貝柱)
cumquat, kumquat (金橘 gam1gwat1) (キンカン
longan (龍眼 lung4ngaan2) (リュウガン)
loquat (蘆橘 lou4gwat1) (ビワ)
wampee (黄皮 wong4pei2) (キンカン)
wok (鑊 wok6) (中華鍋)
wonton (雲呑 wan4tan1) (ワンタン)
dim sum (點心 dim2sam1) (テンシン)
ketchup (茄汁 ke4zap1) (ケチャップ)

基本の語順はSVO型である。

我 食 蛋糕。 : 私はケーキを食べる。 (主語+動詞+目的語)
例外として、目的語を主題として、先に提示する事がよく行われる。(実際に使う事は少ない)

蛋糕, 我 食! : ケーキは私が食べる! (主題化された目的語+主語+動詞)
また、補足的に文法成分を後に付け足す言い方が、他の方言よりも多く見られる。

食 蛋糕 嘑, 你! : ケーキ食べてよ、おまえ! (動詞+目的語+語気助詞+補足された主語)
佢 食緊 蛋糕,我 諗。 : 彼はケーキを食べている、私が思うに。 (目的語となる句+主語+動詞)

修飾語は被修飾語よりも前に置くが、個別の語彙においては修飾成分が後置される例もある。

青 沙律 : グリーンサラダ (修飾語+被修飾語)
青菜 : 青菜 (修飾成分+被修飾成分)
椰青 : 青い椰子の実 (被修飾成分+修飾成分)

北京語もしくは普通話とは違う語順となる。
 広東語 : 北京語

我 高 過 佢  :  我 比 他 高 (私は彼より背が高い)

北京語もしくは普通話とは違う語順となる場合が多い。(以下の例では「你」が間接目的語)
 広東語 : 北京語

我 畀 錢 你  :  我 給 你 錢 (私はあなたにお金をあげる) 
我 對 你 唔 住  :  我 對 不 起 你 (私はあなたに顔向けできない)

繋辞として「係」(hai6)が用いられる。「係」は中国語の書面語に表れることがある古語である。

我 係 學生 : 私は学生です。
書面語では中国語共通の「為」や「是」も用いられる。

通常動詞よりも前に置かれるが、ベトナム語にみられるような、動詞の後に置かれる副詞「先」や「添」などがある点が北京語などと異なる。

我 慢慢 食 飯 : 私はゆっくりご飯を食べる (主語+副詞+動詞+目的語)
我 食 飯 先 : 私が先にご飯を食べる (主語+動詞+目的語+副詞)
我 又 食 飯 : 私はご飯も食べる (主語+動詞+目的語+副詞)

方向補語、可能補語、結果補語など、動詞の後に補充する成分がある点は北京語などと同じである。

行 出去 : 歩いて出て行く
食 唔落 : 呑み下せない、食欲がない

中国語で「量詞」と呼ぶ類別詞が発達しており、数詞と名詞の間に置くのは中国語共通であるが、北京語とは異なる類別詞を使うものがある。

 広東語 : 北京語

張 jeung1 : 把 bǎ (脚:椅子を数える場合)
把 ba2 : 口 kǒu (声を数える場合)
單 daan1 : 件 jiàn、起 qǐ (件:事件、商売などを数える場合)
身 san1 : 頓 dùn (発:体を殴る回数を数える場合)
類別詞の前に数詞を伴わず、特定化のためだけに使うことが行われる。

佢 有 一 架 車 : 彼は車を一台持っている
架 車 係 佢 嘅 : あの車は彼のだ

中国語の中で最も豊富な文末語気助詞を持ち、100種以上が常用されている。 例:

啊(または 呀) a3 : 断定、強調、説明、疑問、反復など多くの語気の表し、最も多用される
㗎(口へんに架) ga3 : 疑問、説明を表す
咩 me1 : 省略した「乜嘢」から。意外さや驚きを込めた疑問を表す
啩 gwa3 : 推量を表す

香港、マカオでは広東語は繁体字で書かれるが、広東省では簡体字の普及が進んでいる。広東語に特有の語彙を書き表すための方言字が発達しており、もともとは粤劇の台詞などを書き残すのに考案されたと考えられる。異体字も少なくないが、現在は、多くの字で自然に選別が進んで、香港の新聞や雑誌に使っても十分に理解されるものが多い。香港では香港増補字符集と呼ばれる、広東語の表記に必要な方言字などを補充する、コンピュータ用の文字セットが作られ、使用されている。広東省ではこれを簡体字の規則に従って書き換えた方言字も一部で俗字として使われている。香港、広東の事物が中国各地に広まった結果、中国の正式な漢字として『通用規範漢字表』に収録された「4962 焗」、「5506 煲」、「7156 啫」などの方言字もある。

広東語の発音表記は統一されておらず、書籍毎に異なる表記が用いられている。香港の英語書籍ではイェール大学のイェール粤語ピン音及びその変形が比較的多く使われている。香港の字書ではIPAを簡略化したものを使用している事が多く、また教育機関では教院式が使われており、他に粤拼(ユッピン)と呼ばれる香港語言学会の方式も広がりを見せている。中国大陸では、広東省教育部門の試案かIPAを使っている例が多い。日本では、これらの他、千島式(2種)などがある。ネット上では、本項で使用した、Yale式の声調表記を数字に改めたものがASCII文字だけで打てて簡便なため、比較的多く使用されている。