A重油、B重油及びC重油

重油の種類は、動粘度により1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類される。

さらに1種は硫黄分により1号及び2号に細分される。3種は動粘度により1号、2号及び3号に細分される。

A重油は軽油90%に少量の残渣油を混ぜたものである。
B重油は残渣油と軽油を半量程度ずつ調合したものである(なお、最近B重油はほとんど生産されない)。
C重油は90%以上が残渣油である。
一般的に、残留炭素の多い重油は粘度が高い。重油の硫黄の大部分が有機硫黄分として存在している。

品質は、内燃機関用、ボイラー用及び各種炉用などの燃料として適当な品質の鉱油であって、次の規定に適合しなければならない。

重油の規格 (JIS K 2205)

動粘度
(50℃)
cSt
(mm2/s) 流動点
℃[※ 1] 残留炭素分
質量% 水分
容量% 灰分
質量% 硫黄分
質量%
1種(A重油) 1号 中性 60以上 20以下
(20以下) 5以下 4以下 0.3以下 0.05以下 0.5以下 (LSA重油
2号 中性 60以上 20以下
(20以下) 5以下 4以下 0.3以下 0.05以下 2.0以下 (HSA重油
2種(B重油) 中性 60以上 50以下
(50以下) 10以下 8以下 0.4以下 0.05以下 3.0以下
3種(C重油) 1号 中性 70以上 250以下
(250以下) - - 0.5以下 0.1以下 3.5以下
2号 中性 70以上 400以下
(400以下) - - 0.6以下 0.1以下 -
3号 中性 70以上 400を超え1000以下
(400を超え1000以下) - - 2.0以下 - -
^ 1種及び2種の寒候用のものの流動点は0℃以下とし、1種の暖侯用の流動点は10℃以下とする。
A重油の1種1号は、硫黄分(Sulfur、サルファー)が0.5%以下とされ、LSA重油 (Low Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。この低硫黄のA重油の色は生産施設にもよるが半透明の黒色か黄色である。また、低硫黄のLSA重油はメーカによってはSCF(出光興産)またはSCFO (Super Clean Fuel Oil) とも称されることがある。

同じくA重油1種2号は、硫黄分が0.5%以上2.0%以下とされ、HSA重油 (High Sulfur A Fuel Oil) とも呼ばれる。

JIS規格と国際的名称

国際的名称
軽油 GO(Gas Oil : 軽油)
DO(Diesel Oil : ディーゼル油)
MDF(Marine Diesel Fuel : 船舶用ディーゼル燃料)
MDO(Marine Diesel Oil : 船舶用ディーゼル油)
A重油
B重油 -
C重油 MFO(Marine Fuel Oil : 船舶用燃料油)
HFO(Heavy Fuel Oil : 重質燃料油)
RFO(Residual Fuel Oil : 残渣燃料油)

A重油

低硫黄のLSA重油は、主として農耕機や漁業用の中小型船舶の燃料として使用されている。最近では環境問題や大気汚染問題に配慮するため、ビル、ホテル、寮、病院、学校の暖房・給湯用、食品工場の加熱用、クリーニング工場のプレス・温水供給に運用されるボイラーに多く用いられ、農産物用のビニールハウスのボイラー、温風暖房でも使用されている。

高硫黄のHSA重油は、低硫黄のLSA重油を特に必要としない非自動車用ディーゼルエンジン、及び工場、病院、学校、ビルなどの小・中規模ボイラーの燃料などに用いられる。

また、火葬場で遺体を火葬する際の燃料に使われる事が多かったが、環境面への配慮から灯油やガスに切り替わってきている。

B重油及びC重油

B重油、C重油は、船舶用の大型ディーゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラーの燃料などに用いられる。

B重油及びC重油は粘度が高いため予熱した上で使用される。また、残渣油には不純物が多く含まれることから、船舶用のディーゼルエンジン燃料としてC重油を使用する場合、油清浄機により不純物を取り除いた上で使用される。それでもなお硫黄や灰分を多く含むため、レシプロエンジンで用いる場合には、燃焼時に生成される硫酸によるシリンダーライナーの腐蝕や、アブレシブ摩耗に注意する必要がある。