Immunoglobulin E

アナフィラキシーの症状は、IgEと他のアナフィラトキシンの反応が関与する。これらの物質は肥満細胞からヒスタミンや他の媒介物質(メディエーター)を遊離(脱顆粒)させ、さらにヒスタミンは細動脈の血管拡張や肺の細気管支の収縮、気管支痙攣(気管の収縮)を引き起こす。

ヒスタミンや他のメディエーターは身体の別器官の組織で遊離されるが、これらが(血流等を介して他の部位に運ばれ)気管収縮とこれに伴う喘鳴や呼吸困難、そして胃腸症状(腹痛、さしこみ、嘔吐、下痢など)を引き起こす。ヒスタミンは血管拡張(これに伴う血圧低下)と血流から組織への体液漏出(これに伴う血流量低下)を引き起こし、これらが影響してショック症状を呈する。

免疫グロブリンE(めんえきグロブリン・イー、英語: Immunoglobulin E、IgE)とは哺乳類にのみ存在する糖タンパク質であり、免疫グロブリンの一種である。1966年、日本人である石坂公成はジョンズホプキンス大学(アメリカ)においてブタクサに対してアレルギーをもつ患者の血清からIgEを精製した。IgEの"E"というアルファベットはこの抗体が紅斑(Erythema)を惹起するということに由来している。IgE分子は2つの重鎖(ε鎖)と2つの軽鎖(κ鎖およびλ鎖)から構成され、2つの抗原結合部位を有している。健常人における血清中のIgE濃度はng/ml単位であり他の種類の免疫グロブリンと比較しても非常に低いが、アレルギー疾患を持つ患者の血清中では濃度が上昇しマスト細胞や好塩基球の細胞内顆粒中に貯蔵される生理活性物質の急速な放出(脱顆粒反応)を誘起する。これらのことからIgEはヒスタミンなどと並んでアレルギー反応において中心的な役割を果たす分子の一つとして数えられる。また、IgE分子の性質として胎盤通過能や補体結合能を有さない。分子量188kDa。

「抗体」の名は、抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(めんえきグロブリン、immunoglobulin)と呼ばれ、「Ig(アイジー)」と略される。

全ての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)ーグロブリンにあたる。

紅斑(英: erythema)とは毛細血管拡張などが原因で皮膚表面に発赤を伴った状態をいう[1]。同部を圧迫すると消失する。皮膚温度の上昇はないが、より深部の動脈の拡張の合併があれば皮膚温は上昇する。

マスト細胞表面受容体上のIgEに抗原タンパク質が結合すると、IgEが抗原を架橋するような形になり細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなどの放出が行われる。その結果として炎症反応を促進するが、炎症には急性炎症と慢性炎症が存在し、それぞれ関与するメディエーター・細胞などが異なる。マスト細胞の脱顆粒により放出される物質のうちヒスタミンは血管透過性を亢進させることにより急性炎症を促進する。また、ロイコトリエンやサイトカイン、ケモカイン等の分子は炎症における遅延型反応に関与し、炎症性細胞を動員するなどの役割を果たす。気管支喘息等のアレルギー性疾患の患者では血清中IgE濃度が高値を示し、これらの反応が亢進されている。

喘息の病態は解明されていない部分も多い。IgE型の免疫不全症とする考え方もある。

アトピー型の喘息患者が発作を引き起こすのはI型アレルギーにより化学伝達物質が発生するためである。その誘因は細菌・ウイルス、過労、ハウスダスト(埃・ダニ・花粉・カビなど)・食物・薬物などのアレルゲン、運動、タバコ、アルコール、気圧変化などさまざまである。

一方、非アトピー型の喘息の病態生理はまだはっきりしていない。