ステロイド核のA-D環及びステロイドの炭素番号

コレステロール代謝を受けてプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)(下図左)となったあと、皮膚上で紫外線を受けてステロイド核のB環が開き、プレビタミンD3((6Z)-タカルシオール)(下図右)となる。

プレビタミンD3(下図左)は、自然発生的にビタミンD3(コレカルシフェロール)(下図右)へ異性化する。プレビタミンD3からのビタミンD3(コレカルシフェロール)への転移は、室温では12日間で完了する[13]。

皮膚で産生されたものであれ経口摂取されたものであれ、ビタミンD3(コレカルシフェロール)(下図左)は、肝臓でC25の位置でヒドロキシ化の代謝を受け 25-ヒドロキシコレカルシフェロール(別名25(OH)D3、カルシジオール)(下図右)へと変化し[14]肝細胞に貯えられ、必要なときにα-グロブリンと結合しリンパ液中に放出される。なお、Cの番号はステロイドコレステロールの構造と炭素の番号に由来する。

カルシジオール(下図左)は、腎臓の尿細管に移送され、2つの種類のビタミンDの型に変化する。一つは活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3、カルシトリオール)(下図右)となる[14]。ヒドロキシ化されたC1は下側リング右側に位置する。 ホルモン作用を有する活性型ビタミンD(カルシトリオール)は、副甲状腺ホルモンに加えて低カルシウム、低リン酸状態により活性化したカルシジオール-1-モノオキシゲナーゼ(1α-ヒドロキシ酵素)によって生成される。

1α-ヒドロキシ酵素が不活性な場合には、別の酵素がカルシジオールのC-24をヒドロキシ化して、もう一つの非活性型ビタミンD(24,25-ジヒドロキシビタミンD3)(下図左)を生成する[14]。この反応によりカルシジオールは生化学的な作用から不活性化される。 また、不要となったカルシトリオールは、カルシトリオール24-ヒドロキシラーゼの触媒作用によってカルシトロン酸(下図右)が生成される。この物質は、水に溶け、尿中に排泄される。

カルシトリオールは、循環器系に放出される。リンパ液中の輸送物質であるビタミンD結合タンパク質(VDBP)と結びついてカルシトリオールは、様々な対象臓器に運ばれる[15]。 カルシトリオールは、対象細胞の細胞核内に主に所在するビタミンD受容体(VDR)と結びついてその生体効果を発現する[15]。カルシトリオールとビタミンD受容体(VDR)との結びつきは、腸内でカルシウム吸収に関わっているようにビタミンD受容体が(TRPV6(腸内でのカルシウム吸収の第一段階をつかさどる膜カルシウムチャンネル)やカルビンディン(腸及び腎臓でのビタミンD依存型のカルシウム結合タンパク質として初めて発見されたカルシウム結合タンパク質)のような)輸送タンパク質の遺伝子発現を調節する転写因子として作用させることである。 ビタミンD受容体は、ステロイド/甲状腺ホルモンの核内受容体の一群に属している。脳、心臓、皮膚、生殖腺、前立腺及び乳房を含むほとんどの臓器の細胞で作用している。腸、骨、腎臓及び副甲状腺の細胞でのビタミンD受容体の活性化は、(甲状腺ホルモン及びカルシトニンの補助により)血中のカルシウム及びリン酸の濃度の維持及び骨密度の維持を司っている[16]。 ビタミンD受容体は、細胞の増殖と分化に関わっていることが知られている。ビタミンDは免疫システムにも影響を及ぼしているし、ビタミンD受容体は、単核白血球、活性化T細胞及びB細胞を含むいくつかの白血球で作用している[17]。 ビタミンD受容体以外の様々なメカニズムの作用が知られている。これらの作用のうち重要なものの一つとして形態形成に関わるホルモンなどシグナル伝達経路によるシグナル伝達の天然の酵素阻害剤としての作用がある[18][19]。
24,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール