バーゼル問題(バーゼルもんだい、英: Basel problem)は、級数の問題の一つで、平方数の逆数全ての和はいくつかという問題である。1644年に ピエトロ・メンゴリ(イタリア語版、英語版)によって提起され、1735年にレオンハルト・オイラーによって解かれた。バーゼルはオイラーの故郷であり、この問題を解くのに失敗したベルヌーイ一家の故郷でもある。
オイラーはこの問題の一般化を解決した。ベルンハルト・リーマンはそのアイディアを取り入れることでゼータ関数を定義し、その性質を調べることに繋がった(1859年の論文「与えられた数より小さい素数の個数について」)。
求める平方数の逆数和を記号で書くと、
となる。これは、ゼータ関数
の s = 2 における値 ζ(2) でもある。その値は π2/6 (= 1.644934…) である(π は円周率)。オイラー積によれば
となる。
比較判定法による。
である。したがってこの級数は収束する。一般にゼータ関数 ζ(s) は Re s > 1 の範囲で収束する。
オイラーは、sin x のマクローリン展開を利用して解く方法を編み出した。まずは sin x を
と展開する。この両辺を x で割ると
となる。左辺はちょうど x = ±nπ(n は正の整数)のとき 0 であるから、右辺を形式的に以下のように「因数分解」できる。
隣接する2項を掛け合わせると
(1) と (2) の右辺の x2 の係数は
である。これらは等しいはずなので
である。ゆえに、求める級数の値は
である。なおオイラーは一般的に、k 番目のベルヌーイ数を Bk とすると
が成り立つことも示した。
放物線をフーリエ級数で表す方法を用いる。
を考える。この放物線は偶関数であるから余弦関数で展開できる:
ここで
であり、an (n ≥ 1) は
である。ゆえに、f(x) のフーリエ級数は
であり、両辺に x = π を代入すると
となる。ゆえに、バーゼル問題の解
が得られる。