実験計画法

計算代数統計とは,代数学の理論を利用して統計学の諸問題に取り組む,比較的新しい研究分野をいう。統計学の諸概念を代数的にとらえ,必要なら再定義して,代数幾何,可換代数,組み合わせ幾何などの理論を駆使して研究するという,分野横断的な側面をもつ。グレブナー基底は,これらの理論を繋ぐキーワードのひとつである。計算代数統計は,90年代の初めに発表された2つの論文を契機に誕生し,以後20年間で,代数学,統計学の両分野の研究者の精力的な研究により,急速に進展した。その背景には,グレブナー基底の理論と計算代数ソフトウェアの発展がある。現在では,簡単な問題であれば,手元の計算機で手軽に計算を実行して出力を確認することができ,このことは,計算代数統計を学ぶ最大の魅力である。
線型代数の基礎知識を学んでいる読者を想定し,身近な例を題材にグレブナー基底の導入を行った後,計算代数統計の発端となった研究のひとつである,実験計画法への応用を説明する。豊富な例題を通して,計画,交絡,識別性などの統計学の概念を,代数幾何的に扱う方法を理解する。