熱海にて

ここに来るのも久しぶりだ。二年前。もう三年になるかも。愛は少し大きくなったお腹にショルダーバッグを揺らしながら笑顔で尚輝を見やった。あの日も今日みたいに肌寒い風が吹いてる日だった。君と出会ったあの日。その日の登場人物も今日と同じ4人だった。草憲は寝ぼけまなこで愛を見た。僕と草憲にはそれが天使に見えた。オカアサン?お母さんよ。オカアサン!あの日から何か変わっただろうか。何も変わらない。すべてが変わっちゃったのかもしれないけど何も変わらない。魁身は走ってきて愛ちゃんの前で思い切りジャンプした。うれしそうだ。4人で外出なんてとんとしてなかったから。

「猫のおる。」

愛ちゃんは浜辺のデッキに猫を見つけた。僕は猫。と愛ちゃんは口ずさんで尚輝に笑い掛けた。愛ちゃんもうれしそうだ。みんなうれしいに違いない。