体は演算に関して閉じている。体 の拡大体 は, 上のベクトル空間になっています.

ある体 に,幾つかの元を付け足すことで, を含む体 を作れるとき, を の 拡大体 (もしくは単に 拡大 )と呼びます.


群論では,群の部分群を考えることに興味があり,正規部分群,中心,固定部分群など,部分群に関する色々な話題がありました.一方,体論で興味があるのは,ある体に何か元をつけたして体を拡大していくことです.

さて,体 の元を とし,ここに新たに元 を添加する場合を考えてみましょう.体は演算に関して閉じていますから,もともと に含まれていた元と を四則演算して組み合わせた元,例えば なども に含まれるなければなりません.そのため,元を一個だけ添加したつもりでも,通常,拡大体は よりずっと大きな集合になることに注意してください.

いま,添加された元と,それらの四則演算によって新しく増えた元をまとめて と書きましょう.つまり です. が や を含むことを考えれば,一般に の元は全て のように, の元と新たに増えた元の線形結合の形で表現できるはずです.また, の元と の元の間には分配法則 がなりたちます.これより,『 は 上のベクトル空間になっている』と見ることできます.

 

体 の拡大体 は, 上のベクトル空間になっています.
ベクトル空間の基底は新たに増えた元 で,係数は の元 というわけです.また, 上のベクトル空間と見たときの の次元を EのF上の次数 もしくは 拡大次数 と呼び, と書きます. が有限のとき を 有限次拡大体 ,無限のとき 無限次拡大体 と呼びます.