LIGAとはドイツ語でX線を用いたフォトリソグラフィ(Lithographie)、電解めっき (Galvanoformung)、形成(Abformung)による微細加工を意味する。
1980年代初頭にカールスルーエ核開発研究所(Institut für Kernverfahrenstechnik IKVT)[1][2]のErwin Willy BeckerとWolfgang Ehrfeldのチームによってウラン濃縮のための圧力勾配で噴出すガスの遠心力を用いる流体素子の一種である同位体分離ノズルを製造するために開発された[3][4][5][6]。
LIGAは高縦横比の微細構造物を作成する要求に応える最初の主要な技術の一つである。MEMS素子の製造において重要な役割を担う。高輝度のX線を要するのでシンクロトロン放射光を使用する。
今日では3種類の異なるLIGA技術がある。
X-線 LIGA 最初に開発されたLIGA技術でシンクロトロン放射光を使用。
UV-LIGA 通常は水銀灯からの紫外線を使用する。特殊なSU-8のようなフォトレジストを使用する。
シリコン-LIGA シリコンの加工にDRIEを使用する。
サンディア国立研究所の研究者達は1990年代から2000年代初頭にかけて開発した。
深掘りRIE(ふかほりアールアイイー、Deep RIE)とは、反応性イオンエッチング (RIE) の一つで、アスペクト比の高い(狭く深い)反応性イオンエッチングをいう。アスペクト比が高いことから高アスペクト比エッチングとも言われる。「深堀り」は誤字。「深掘りエッチング」とも呼ばれる。
半導体デバイスのDRAMなどでは耐圧を上げたり大きなコンデンサを作製する場合に使われる。また、MEMSにおけるバルクマイクロマシニングの主要な作製技術であり、多くのデバイスはこの方法を用いて作製されている。
深く掘る手法は通常高密度プラズマを使い、サンプルを低温に冷やす方法とボッシュプロセスと呼ばれるエッチング技術を用いる方法、その両方を用いるものがある。
高密度プラズマを発生する方法は主に、誘導結合プラズマ (ICP) RIEが用いられる。ECR-RIE (Electron Cyclotron Resonance-RIE) と呼ばれるマイクロ波を用いた方法もあるが、装置が高くなるためICP-RIEが主流となっている。
MEMSではより深いエッチングが要求されるので、ボッシュプロセスと呼ばれるエッチング側面の保護とエッチングを繰り返し行うエッチング方法が用いられる。
ボッシュプロセス (Bosch process) は、ドイツのロバート・ボッシュ社のフランツ・レルマー (Franz Lärmer) とA・シルプ (A. Schilp) によって1992年に開発されたシリコンの深掘りエッチング技術である。エッチングとエッチング側壁保護を繰り返しながら行うエッチング手法でアスペクト比の高いエッチングが可能である。カタログに表示されるアスペクト比は50程度であるが、研究段階や特定のパターンに最適化した場合は100程度にすることもできる。
プロセスは以下の2つの処理を繰り返す。場合によってはさらにステップが増えることもある。
エッチングステップ:主に六フッ化硫黄 (SF6) を用いて等方エッチングを行う。エッチング穴底面に保護膜が付いている場合があるので底面の保護膜を除去する働きもある。
保護ステップ:テフロン系のガス(C4F8など)を用いて側壁を保護する。側壁を保護することで横方向のエッチングを抑制する。
保護膜により横方向のエッチングが抑制されるため細く深い(高アスペクト比)穴を掘ることができる。側壁の角度はほぼ垂直にすることができ、また、プロセス条件を変えることで他の角度にもできる。垂直のエッチングができるため、マスクパターン形状を保持した厚い構造が作製できる。
反応性イオンエッチング (Reactive Ion Etching; RIE) はドライエッチングに分類される微細加工技術の一つである。
原理としては、反応室内でエッチングガスに電磁波などを与えプラズマ化し、同時に試料を置く陰極に高周波電圧を印加する。すると試料とプラズマの間に自己バイアス電位が生じ、プラズマ中のイオン種やラジカル種が試料方向に加速されて衝突する。その際、イオンによるスパッタリングと、エッチングガスの化学反応が同時に起こり、微細加工に適した高い精度でのエッチングが行える。
通常のドライエッチングと違い、異方性エッチングも出来ることが特徴である。
磁性体は反応性イオンエッチングの難しい遷移金属元素を主成分としており、さらに多くは多結晶体であるため、化学的組成や結晶構造の違いを問題としない汎用プロセスの開発が難しく実用化への障壁となっていた。一酸化炭素(CO)ガスを用いたプラズマにアンモニア(NH3)ガスを加えたことでCOプラズマで鉄のエッチングを試みると不均化反応によってCOがCとCO2に分かれて鉄と反応することで蒸発しにくい炭化鉄が生成されるが、NH3ガスを加えるとCOのまま鉄と反応するため、蒸発しやすい鉄カルボニルが生成され、エッチングが可能になる[1]。
ドライエッチング(英語:dry etching)は、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。主に化学的な反応によるエッチングを指し、反応による生成物は気体である場合が多い。これに対して液体によるエッチングをウエットエッチングと呼ぶ。イオンミリングなどのようにイオンを衝突させてエッチングする方法など化学的な反応を伴わないものは物理エッチングと呼ぶ場合もある。実際には化学的な反応と物理的なものが同時に起こっている。
反応ガス中に材料を曝す方法(反応性ガスエッチング)とプラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチング。
シリコンをエッチングする場合は、フッ素系のガスを用いる場合が多い。この場合にできる生成物は四フッ化ケイ素 (SiF4) である。
反応性イオンエッチングに使われるもの
六フッ化硫黄 (SF6)
四フッ化炭素 (CF4)
トリフルオロメタン (CHF3)
反応性ガスエッチングに使われるもの
二フッ化キセノン (XeF2)
MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に微細加工技術によって集積化したデバイスを指す。プロセス上の制約や材料の違いなどにより、機械構造と電子回路が別なチップになる場合があるが、このようなハイブリッドの場合もMEMSという。
主要部分はLIGAプロセスや半導体集積回路作製技術にて作るが、立体形状や可動構造を形成するための犠牲層エッチングプロセスをも含む。
本来、MEMSはセンサなどの既存のデバイスの代替を主な目的として研究開発が進められていたが、近年はMEMSにしか許されない環境下での実験手段として注目されている。例えば、電子顕微鏡の中は高真空で微小な空間だが、MEMSならばその小ささと機械的性質を利用して電子顕微鏡下での実験を行うことができる。また、DNAや生体試料などのナノ・マイクロメートルの物質を操作・捕獲・分析するツールとしても活躍している。
現在、製品として市販されている物としては、インクジェットプリンタのヘッド、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、プロジェクタ・写真焼付機等に利用されるDMD、光造形式3Dプリンターやレーザープロジェクタ等に使用されるガルバノメータなどがあり、徐々に応用範囲は拡大しつつある。
市場規模が拡大して応用分野も多岐にわたるため、期待は大きく、第二のDRAMと言われたこともある。
市販されている代表的なデバイス
プリンタヘッド: 特にインクジェットプリンタ用
圧力センサ
加速度センサ
ジャイロスコープ
光スキャナ (ガルバノメータ)
AFM用カンチレバー
流路モジュール
デジタルミラーデバイス(DMD)
HDDのヘッド
DNAチップ
光スイッチ
ボロメータ型赤外線撮像素子
波長可変レーザー (共振器を可変長化する)
光変調器
主に微小な高周波スイッチや共振器を実現する。
機械的な高周波スイッチの場合、半導体の高周波スイッチより動作速度は遅いものの、低損失のスイッチが実現できる。
共振器は小型で高いQ値を持つものが作製可能である。水晶を用いても高いQ値を実現できるが、シリコンで作製できるため集積回路との集積化が容易である。
高周波スイッチ
フィルタ
発振器用振動子:水晶振動子と置き換えて使う
光通信用光スイッチ
光スキャナ
投射型ディスプレイ
電子ペーパ
ヘッドマウントディスプレイ
マイクロバルブ
マイクロ流路
DNA分析チップ
蛋白質分析チップ
血液検査チップ
能動カテーテル
ドラッグデリバリシステム
構造が簡単で小型化に向いている。発生力は他の方法に比べて小さい。MEMSでは最も使われる駆動原理
平行平板型静電アクチュエータ
櫛歯型静電アクチュエータ
スクラッチドライブアクチュエータ (Scratch Drive Actuator:SDA)
静電マイクロモータ
能動カテーテル(のうどうカテーテル)とは、マイクロアクチュエータを搭載し、その動作を体外から自在にコントロールできるカテーテルのこと。
内視鏡や心臓内で用いられている一部のカテーテルは、シャフトに内蔵したワイヤーを体外から牽引することで先端部を屈曲制御している。しかし、構造が複雑なため細くすることが難しい。また、ワイヤーの牽引で座屈しないようにシャフトを比較的硬くする必要があり、体内で安全に使える場所が限られる。先端にマイクロアクチュエータを搭載し、能動的に動けるようにすることで、体内の曲がりくねった先でも、その動作を体外から自在にコントロールできるようになる。さらに、マイクロアクチュエータの構成を工夫することで屈曲動作ばかりでなく、ねじれ回転運動や伸縮動作など様々な動きを実現できる。能動機構のためのマイクロアクチュエータとして形状記憶合金やポリマーアクチュエータ、液圧駆動アクチュエータなどが提案されている。また、マイクロアクチュエータを用いていないが、カテーテル先端に小さな磁性体を内蔵し、体外から電磁石を用いて磁気的に牽引するものもある。