核化学

核化学(かくかがく、英語:nuclear chemistry)は原子核改変を扱う物理学の分野。原義は原子核反応で生成する人工放射性元素に関する無機化学である。しかし、発足当時はプルトニウムのようにトン単位で生成する核種が学問の中心にあったが、近年発見される新規人工放射性元素半減期がmsec以下であり、且つ1つ2つと数えられるほどしか生成しないので、すっかり原子核物理学である。あるいは放射化学のことをさしている場合が多い。

原子核に対して、中性子を吸収させるか、他の核種を核融合させると別の核種に転換される。前者は電荷を持たないので比較的容易に核に吸収させることが可能であるが、後者は電荷の障壁を越えるためにエネルギーが必要な一方、余剰なエネルギーは核を不安定化させて、更なる核分裂の要因となるので、精密な入射エネルギーのコントロールが必要である。

転換された核種が陽子過剰あるいは中性子過剰が進むと不安定核となりアルファ崩壊ベータ崩壊核分裂を引き起こす。一方、核子数の魔法数(マジックナンバー)が知られており、特定の数の場合エネルギー準位の閉殻構造をとるので原子核が安定化すると考えられている。

魔法数(まほうすう)とは、原子核が特に安定となる陽子と中性子の個数のことをいう。陽子数または中性子数が魔法数である核種を魔法核と呼ぶ。

核構造のシェルモデルでは、殻(シェル)が「閉じている」状態(閉殻)は安定性が高く、崩壊や核分裂が起きにくくなる。計算上特定の値が該当し、魔法数となる。陽子と中性子はよく似ているので同じ値となる。

現在、広く承認されている魔法数は 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126 の7つで、原子番号がこれらにあたる元素は、周辺の元素に比べて多くの安定同位体を持っている。中性子数がこれに該当する同中性子体についても同様で、例えば核種の一覧を見ると、縦の20と横の20には安定同位体が並んでいるのがわかる。

一部の中性子過剰核では、8, 20, 28は消えて、別の魔法数である 6, 16, 32, 34 が現れる事が研究によって示されている[1][2]。この領域のことを反転の島(Island of inversion)と呼ぶ。(50、82は維持される[3])。

魔法数は1949年にマリア・ゲッパート=メイヤーとヨハネス・ハンス・イェンゼンによって理論的な説明が成され、ノーベル賞授与対象となった。