赤色光吸収タンパク質(フィコシアニン)と緑色光吸収タンパク質(フィコエリスリン)

比率が赤色光と緑色光によって調節される現象は古くから知られており、Complementary chromatic adaptation(補色順化)と呼ばれている。

Gloeobacter を除く他の藍色細菌は細胞内にチラコイド膜をもち、光化学系複合体などはおもにチラコイド膜に存在し、細胞膜にはほとんど存在しない。一方、原始的な Gloeobacter にはチラコイド膜はなく、細胞膜上に光化学系複合体が存在し、フィコビリソームは細胞膜の内側表面に結合している。多くの遺伝子の系統解析も、Gloeobacter がもっとも古く分岐したことを示しており、興味深い生きた化石といえる。

また、クロロフィルbやジビニルクロロフィルをもつ種ではPcbと呼ばれる特殊なクロロフィルa/b結合タンパク質をもつ種も存在する。Acaryochloris marinaという藍色細菌はクロロフィルaの代わりにクロロフィルdを主要な光合成色素としてもっている。光化学系Iや光化学系IIの反応中心では、クロロフィルdが光励起で電荷分離する光化学反応を起こすことが最近判明した。

炭酸固定の基質として、細胞内に重炭酸イオン(HCO3–) を大量に蓄積する。カルボキシソームにはルビスコ(リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)と炭酸脱水酵素が存在し、細胞内に蓄積した重炭酸イオンから脱水反応で二酸化炭素を生成し、ルビスコに供給している。カルボキシソームは真核藻類のピレノイドとほぼ相同な器官といえる。炭酸固定の初期産物はホスホグリセリン酸で、C3型光合成といえるが、細胞内に大量に重炭酸イオンを濃縮するためほとんど光呼吸を示さない点はC4光合成に似ている。

Anabaena、Synechocystis、Thermosynechococcus 等の藍色細菌からは、シアノバクテリオクロムと呼ばれる独自のフィトクロム様の光受容体が発見されている。これまでに青 / 緑色光、緑 / 赤色光を受容するシアノバクテリオクロムが報告されており、補色順化や走行性の制御に関わることが示唆されている。

ゲノムサイズは小さいものは Prochlorococcus 類で180万塩基対、大きいものは Nostoc punctiforme でプラスミドを含めて900万塩基対を超える。これは7000個近くの遺伝子をもっており、真核生物の酵母や原始紅藻よりも多い。

糸状性藍色細菌にはさまざま細胞分化を示す種があり、高等な真正細菌といえる。ただし、すべての糸状性藍色細菌が細胞分化を示すわけではない。

ヘテロシスト(異質細胞、heterocyst):シストというが、休眠細胞ではなく、酸素がある条件で窒素固定を行うために分化した細胞。一部の糸状性藍色細菌で分化する。一度これに分化すると、再び栄養細胞には戻れない。また、窒素固定のための遺伝子を発現するために、染色体の不可逆的な組換をするものもいる。異質細胞の細胞壁は特別に肥厚し、酸素を発生する光化学系IIを失っており、酸素に弱い窒素固定酵素(ニトロゲナーゼ、nitrogenase)を酸素から守っている。