クルクミン

カレー粉は、ミックススパイスの一種。18世紀後半にイギリスのクロス・アンド・ブラックウェル(C&B)社が考案し、はじめて製品化したものである[14]。この「カレー粉」の製法はなかなか解明できず、そのため長いあいだC&B社の製品が市場を独占していた。

カレーに含まれるスパイスの1つとしてアキウコン(ターメリック、C. longa )が含まれ、有効成分にクルクミンが含まれている。

クルクミンの生理作用として抗腫瘍作用や抗酸化作用、抗アミロイド作用、抗炎症作用などが知られている。

抗炎症作用はエイコサノイド合成の阻害によるものだと考えられている[15]。また、フリーラジカル捕捉能を持ち、脂質の過酸化や活性酸素種によるDNA傷害を防ぐ。クルクミノイドはグルタチオンS-トランスフェラーゼを誘導するため、シトクロムP450を阻害しうる。

クルクミンの生理活性と医学的有用性は近年盛んに研究されている。抗がん効果では、がん細胞特異的にアポトーシスを誘導するとの報告がある。また、クルクミンはがんをはじめとした多くの炎症性疾患に関連する転写因子であるNF-κBを抑制しうる[16]。実際、事前に発がん物質を投与されたマウスやラットに、0.2%のクルクミンを添加した食餌を与えたところ、大腸癌の発症において有意な減少が見られたとの報告がある[17]。

カレーをよく食べるインドでがんを死因とするものは8%であり、中国では22%、米国では25%である[18]。

2004年、UCLAの研究チームはアルツハイマー病モデルマウスを用いて実験を行い、クルクミンが脳におけるβアミロイドの蓄積を抑制し、アミロイド斑を減少させることを示した[19]。

クルクミンが精神的機能に影響をおよぼすとの疫学的調査結果も存在する。高齢のアジア人を対象としたミニメンタルステート検査で、半年に1度以上黄色カレーを食する群において相対的に高いスコア(より健康な精神的機能)が見られた[20]。

アミロイド(Amyloids)はある特定の構造を持つ水に溶けない繊維状のタンパク質である(詳細な定義は本文参照)。器官にアミロイドが異常に蓄積すると、アミロイド症などの神経変性疾患の原因になると言われている。

クルクミン (curcumin) は、ウコン(ターメリック、学名Curcuma longa)などに含まれる黄色のポリフェノール化合物[2]。クルクミノイドに分類される。スパイスや食品領域の着色剤として利用され[3]、日本ではウコン色素として既存添加物(着色料)に指定されている。[4][5]ウコン由来のクルクミンは「医薬品の範囲に関する基準」では医薬品でないものに分類され[2]、効用を謳わない限りは食品扱いとなる。

鮮やかな黄色を持つことから、天然の食用色素として用いられる[2]。食用色素としての表示例としては、ウコン色素、クルクミン、ターメリック色素、などのように表記され、伝統的な用途例としては、漬物、水産ねり製品、栗のシロップ漬、和菓子などがあげられる。上掲写真のように鮮やかな黄色が有名であるが、酸性-中性条件の溶液中では明るい黄色を、弱酸性(アルカリ)条件では赤褐色(赤茶色)を呈す。アルコール溶液(またはジエチルエーテル溶液)でも鮮黄色となるが、紫外線下では青緑色の蛍光を発する。

俗に、「抗酸化作用がある」「肝臓によい」「発がんを抑制する」などされ[2]、様々なドリンク剤や健康食品(栄養補助食品)が販売されているが、人間での有効性・安全性に関して、信頼に足る立証はなされていない[2]。

ホウ酸と反応して赤色の化合物ロソシアニンを生じるため、ホウ素の定量に用いることができる(クルクミン法)[6]。 。ケト型とエノール型の2つの互変異性体が存在し、固体および溶液中においては後者の方がエネルギー的に安定である[7]。フィトケミカル(植物が由来の化学物質で、植物が自分達の身体を守るために作り出す自己防衛成分-野菜の色素や辛味成分)に分類され、上記のようにポリフェノール類の一種でもあり、抗酸化物質としても知られている。

クルクミンはいくつかの官能基によって構成されており、ポリフェノールの芳香族環が、2つのα,β-不飽和カルボニル基で連結された構造をとっている。ジケトン体は安定したエノール型もしくは、α,β-不飽和カルボニル基中で容易に脱プロトン化したエノラートを形成し、マイケル反応の良い受容体になって求核付加を受ける。

この化学的構造は、1910年に、J. Miłobędzka、Stanisław KostaneckiおよびWiktor Lampeによって同定された[8]。

水に難溶性であり、可視光や、紫外光、弱アルカリ条件下で分解され易い性質を有するため[9][10]、利用できる範囲を拡大できるように、各種の改善手法(配糖化、補助剤添加、ナノミセル化、超細粒化、フィトソーム化など)が試みられることが多い。熱には比較的安定であるが、耐光性(特に紫外線)には弱く、微量の金属イオン(特に鉄イオン)の共存でも暗色化する傾向にある。