四重極公式

四極子(しきょくし、英: quadrupole, quadrapole)または四重極とは、モーメントが等しい双極子が、2個逆向きに接近して並んでいるような単極子の分布をいう。単極子を正方形状に配置したものと、直線状に配置したものがあり、それぞれ横型、縦型と呼び分けられる。

電荷の分布を電気四極子、磁荷の分布を磁気四極子という。電磁気学においては単に四極子といえば、電気四極子を指すことが多い。

一般に四極子のポテンシャルφは単極子のそれφmonopole の空間についての2階微分で表される[1]。



電荷などの場合、ポテンシャルは距離に反比例するため、四極子は距離の3乗に反比例するポテンシャルを作る。たとえば電気四極子が誘電率 ε の媒質中で作る電位 φ は以下のように表される。


ここで Q は2階の対称トレースレステンソルで四極子モーメントと呼ばれる。四極子モーメントは、電荷 qi がri の位置に存在するとすると以下のように定義される。


ここで δij はクロネッカーのデルタである。

また、音響学においても用いられ[2]、音源の一種として扱われる。

前節では,真空中の重力波の伝播を決める方程式 (2.56) を導いた。この節では,重力波 の生成について考える。
天体から発生する重力波を計算するときは,式 (2.53) の右辺にエネルギー運動量テンソ ルを導入しなければならない。しかし,背景時空が真空(T(0) =0)で,エネルギー運動
テンソルが h と同じオーダーの量,すなわち T (1) であれば,やはり R(0) = 0, R(0) = 0 μν μν μν
と置くことができる。結局,式 (2.56) の右辺に,hμν と同じオーダーのエネルギー運動量 テンソルを導入した形になる:
hμν|λ|λ + 2R(0) hαβ = 16πGTμν. (2.57) μανβ c2
こうなると,時空全体はもはや真空ではないので,前節のような TT ゲージはとることが できない。最終的には天体の重力場から重力波の成分だけを抜き出すため,TT 作用素を かける作業をするのだが,ここでの hμν には,天体のニュートンポテンシャルなども含ま れていることに注意されたい。
波源から十分遠い場所 5 で重力波の振幅を計算することにすると,遠方では背景となる 波源の重力場は無視できるから
hμν,λ,λ = 16πGTμν (2.58) c4
となる。これは源泉がある波動方程式であるから,遅延グリーン(Green)関数を使って, hμν(t,x)= 4G∫ Tμν(t−|x−y|/c,y)d3y (2.59)
c4 |x − y| と形式的に解くことができる。いま考えている位置は,天体のスケール L に比べて十分
遠いところ r ≡ |x| ≫ L であるから,
|x − y| = r − x · y + · · · (2.60)
r
μν
となる。この展開を用いて,式 (2.59) のエネルギー運動量テンソルを展開すると, ( |x−y| )
Tμν t− c ,y (r)x·y∂(r)
5天体のスケールに比べて十分遠く:R ≫ L,重力波の波長は背景時空の曲率半径よりも十分小さい: R B ≫ λ– 。
=Tμν t−c,y + cr ∂tTμν t−c,y +···
(2.61)

第 2 章 重力波 14
となる。ここで,天体の運動がゆっくりであるとするスローモーション近似を施す。それ はすなわち,天体のエネルギー運動量テンソルの変化の時間スケール ∂/∂t が,光が天体 の大きさを横切る時間スケール c/R に比べて十分長いとする近似で,上の式では,
􏰁􏰁􏰁 x · y ∂ ( r ) 􏰁􏰁􏰁 R 􏰁􏰁􏰁 ∂ ( r ) 􏰁􏰁􏰁 􏰁cr ∂tTμν t−c,y􏰁≤c􏰁∂tTμν t−c,y􏰁
􏰁􏰁 ( r )􏰁􏰁 ≪􏰁Tμν t−c,y 􏰁
(2.62)
(2.63)
(2.64)
(2.65)
とすることに対応する。これで,式 (2.59) は,
4G∫ ( r ) 3
hμν(t,x)=c4r Tμν t−c,y dy
と変形できる。
重力波の成分は hij に入っている。これを評価するために,
(Tαβxμxν),αβ = (Tμβxν + Tνβxμ),β = 2Tμν という関係式を使うと,

Tij d3y = = = =
1(∫ ∫ ∫ ) 2 (T00yiyj),00 d3y + 2 (Tk0yiyj),k0 d3y + (Tklyiyj),kl d3y 1(∫ ∫ ∫ )
2 (T 00yiyj ),00 d3y + 2 (T k0yiyj ),0 dSk + 1 ∫
(T klyiyj ),l dSk
2 (T00yiyj),00 d3y 1 d2 ∫
2 dt2 ρyiyj d3y
と変形できる。3個目の等号では,表面積分を十分遠方で評価することで落とせることを 使った。ここで,天体の四重極モーメントを,
と定義すると,式 (2.63) は,

Dij ≡ ρyiyj d3y
2G ̈( r) hij(t,x)= c4rDij t− c
(2.66)
(2.67)
となる。
この摂動 hμν の中にはニュートンポテンシャル等の成分も含まれている 6。そこで,こ
こから重力波の成分のみを抜き出すために,TT ゲージへ移行する。ただし,ここでは座 標変換をあらわに施すことはせずに,hμν に対して TT 演算子を作用させてその成分を取
6きちんと計算すると,h00 = 2GM/c2r, h0i = 0 となることが分かる。

15 第 2 章 重力波
り出すことにする。天体から十分離れた場所を考えているので,重力波の波数ベクトルは 天体を原点とする動径方向に向いているとしてよい。ゆえに,hμν の TT 成分は,
()
hTT=hTT= PkPl−1PPkl h ij ij ij2ij kl
Pij ≡δij −ninj, ni ≡ xi r
と書くことができる。更に,トレースフリーの四重極モーメントを,
(2.68)
(2.69) と定義すると,これに式 (2.68) の TT 演算子を作用させても変化しないので,結局,
(2.70)
D– ij ≡ Dij − 1δijIkk 3
2G( 1 ) ( r) TT klkl ̈
hij (t,x)=c4r Pi Pj −2PijP D–kl t−c となる。これを四重極公式という。