線形基底展開。ウェーブレット変換は時間と周波数の両方の成分を局在化するが、標準的なフーリエ変換は周波数成分だけを局在化する。

信号表現は入力信号に合致するようなウェーブレット波形の拡大縮小(スケーリング)・平行移動(シフト)により行われる。より正確には、この信号表現はウェーブレット系列と呼ばれ、これは2乗可積分関数のヒルベルト空間における完全正規直交系の基底関数集合(正規直交基底)を用いた線形基底展開である。

ウェーブレット理論における大きな貢献には、Strombergによる離散ウェーブレット変換における初期研究(1983年)、イングリッド・ドブシー(英語版)によるコンパクト台を持つ直交ウェーブレット(1988年)、Mallatによる多重解像度解析に関する提案(1989年)、Delpratによる連続ウェーブレット変換における時間-周波数変換(1991年)、Newlandによるハーモニックウェーブレット変換(英語版)など、枚挙にいとまがない。

連続ウェーブレット変換(英語版)は、ハイゼンベルク不確定性原理に支配されている。同様に、離散ウェーブレットにおいても不確定性原理は考慮されなければならない。

多くの場合に有用である離散ウェーブレット変換は、有限インパルス応答(FIR)フィルタで構成されるフィルタバンクである。

ウェーブレット変換は3つに分類されることが多い。連続ウェーブレット変換(英語版)、離散ウェーブレット変換、多重解像度解析(MRA)による離散ウェーブレット変換である。

実応用での効率性を考えると、マザー(プロトタイプ)ウェーブレット(関数)はコンパクトサポートの連続微分可能関数であることが望ましい。しかし、(連続ウェーブレット変換における)解析的であることの要求と、理論的な理由から、一般的にウェーブレット関数は 空間 の部分空間から選ばれる。これは絶対値積分可能かつ2乗積分可能な可測関数の空間である。


この関数空間では必ずゼロ平均と二乗ノルムの条件が定式化できる。



が 連続ウェーブレット変換(英語版)(正確な議論はリンク先参照)のウェーブレットであるためには、マザーウェーブレットは安定な逆変換を持つための許容性の規範(簡単に言うとこれは半微分可能性のようなもの)を満たさなければならない。

離散ウェーブレット変換における最低限満たさなければならない条件として、ウェーブレット系列はLp空間 中の単位元でなければならない。離散ウェーブレット変換のほとんどの構成は多重解像度解析を用いており、この場合ウェーブレットはスケール関数により決定される。このスケール関数自体が汎関数方程式である。

多くの場合において をvanishing moments を表すより大きい数字 M の連続関数、つまり全ての整数 m<M について以下の式を満たす関数に限定することは有用である。


マザーウェーブレットは、 の因数による拡大縮小(スケール)と、 の因数による平行移動(シフト)により、(Morlet によるオリジナルの定式化のように)以下のように与えられる。


連続ウェーブレット変換では、(a,b) のペアは全半平面 上で変化する。また離散ウェーブレット変換では、このペアは、affine群とも呼ばれる離散部分集合上で変化する。

これらの関数はたびたび(連続)変換の基底関数という誤った捉え方をされる。事実、連続フーリエ変換にあるような基底は、連続ウェーブレット変換にはみあたらない。時間周波数解釈では少し違う定式化が使用される(Delpratによる)。

ウェーブレット変換は、三角関数級数表現のフーリエ変換としばしば比較される。主な違いは、ウェーブレット変換は時間と周波数の両方の成分を局在化するが、標準的なフーリエ変換は周波数成分だけを局在化することである。短時間フーリエ変換も時間と周波数の両方を局在化できるが、時間周波数分解能に問題がある。一方、ウェーブレット変換ではしばしば多重解像度解析という、より良い表現が用いられる。

また、離散ウェーブレット変換の計算量はO(N)であり、高速フーリエ変換のO(N log N)に比べて小さい(ここで、Nはデータの大きさである)。