宇宙空間のエロージョン

スーパーで男の子が万引きを疑われて「ほらポケットの中見せてごらん」と店員に言われたとき、男の子は無実を晴らすためにポケットをひっくり返して「何もないじゃん」と言うかもしれない。両手を広げて。だがそこには有難いことに「空気」があるのだ。我々が日常で「ほらね何もない」(たとえば引き出しなんかを開けて)と言うときでさえ空気があるのだ。つまり何が言いたいかというと地球はその重力で周りにある大気のベールを引き寄せているのだ。地球は空気の衣を纏っている。それは裸の王様と同じだ。有難いことに裸の王様は空気のお洋服を召されておられるのだ。決して何も召されていないわけではない。私が見た絵本だとギリギリパンツまで履いておられた。前回の記事で宇宙のエロージョンについて書きたいと言っていたが、つまりはこういう事なのだ。水も100℃で沸騰するが、それは100℃になるとめでたく水が大気のベールの仲間入りを果たすと言ってよい。あの水も天に召されるように大気のベールになってしまわれたのだ。富士山あたりに行くと大気のベールが薄衣になってしまわれて70℃あたりで大気の仲間入りができると聞く。つまりたいした努力もなしに上の世界に行けちゃうのだ。そりゃそうだろう。重力のエネルギーは距離の2乗に反比例するのだ。ぐぐぐっと頭を押さえつけていた大気のベールさんが地球から離れるにしたがってカスみたいな力で俺を押さえつけるだけのスカスカ野郎になってしまうのだ。有難い。これでやっと自由に飛び回れるぜ。つまり常温の水と思われる20℃の水でさえいきなり沸騰するわけだ。地面を這いつくばっていたなかば俺らのパシリだった水が宇宙に行ったとたん俺はパワー全開だとばかりに飛び去っていく。そうだ。ー270℃の宇宙にしてみれば20℃の水なんてファイアーボールなのだ。「地球でパシリだった頃の俺なんてもう関係ねーんだよ。」そんな声が聞こえてきそうだ。それはそうと買ったばかりの新車だったりそうでなくても展示されている車だったりは「新車特有の臭い」がしますよね。あれは車を作成する際に使用された塗料なり素材なりが揮発しているのです。ですので水と同じように地球で作られた材料も宇宙空間では揮発していくことになります。もちろん宇宙でダメージを受けるのは紫外線だったり周回軌道だったら8km/sで当たってくる熱電子だったりするわけですが、こんなようにして我々の地上では観測されないような機材のエロージョンが引き起こされるわけです。