恋の季節があったなら(あったらなー)

ああ。恋したいよ。最初ぐらいはお金も気にせず使ってみたい。美味しいもん食べてオシャレして。誰がこんな息詰まるような生活望むんだろう。大人の勝手な都合じゃないけれど。自由な空気に包まれて。街を颯爽と歩いてみたい。恋の季節があったなら。ああ。あったんだろうな。ばかにするかもしれないけど。抱き合うことなんてなかったし。俺の常識に息詰まる。もしかしてこれって令和じゃみんな一緒?悲しく抱き合いたくはないから。降って湧いた金なんて幻でしかない。そんなもの君に見せれるか?嘘でもいいから愛してると。よく聞く話なんだけどさ。幻みたいな豊かな生活を送ってみたいな。愛してる愛してるとあんなに言ってた頃は。言葉ぐらい好きにさせてよ。

言葉ぐらい好きにさせてよ。ほんとうにそう思う。人と人との手段なんだけど。口を開けるのも俺だし。誰にも届かないでいいように。口づけ合って悦に浸って。「キスしよう」なんてささやく。(言ってみる。)でね。デカパイとか。やば。あらららら。好きでもないものを響きだけで言っちゃった。せんずりとか言ってみてー。もっと貧乏臭い場面で。たしかにディーンフジオカがせんずりって言ったらやばいもんな。米倉涼子がデカパイって言ったら。なんか女子が米倉涼子見てデカパイって連呼したがるんだよね。女子が米倉涼子に「デカパイ」って言ってるとこ笑えるわ。

エレベーターに乗り込むとエヅコはナエコに言った。

「あんたのせいでとんだハジかいたじゃない。しれっとその場を離れるなんてよくできたものね。」

「だまれよ」ナエコは言った。

「はあ?」

ナエコはエヅコに口づけてまたぐらをさぐった。

「ちょっと!えっ?あっ。上手じゃない。」

「このデカパイ」

「あっ!ちょっと!」