風の知事

「知事。」清田は言った。「知事。」

「なんですか?」尚輝は答えた。

「がんセンターこども病院は全国でもトップクラスの施設であると思うのですが、総合病院はどうでしょうか。いまいち地域に根ざしているとは言えないのではないでしょうか。」

「地域に根ざしていると言えないとは思わないが、どういうことかな。」

「つまりです。収益が前者と比べて埋もれてしまっているのではということです。これについてはどうお考えでしょうか。いいえ。ただ医師たちはもっと機材があればいい診療ができると言っているのですが」清田は言った。

「それは総合病院だからだよ。まさか収益を上げるために医師をやっているわけではないでしょう?」

「まさか」清田は言った。「医師はどんな機材でも出来る限りのことはします。県の財政だってわかっております。ただ同じように力を入れていただけるならそれこそ全国から患者が集まってくるような病院にもできるでしょうということです。悪い話ではないはずだ。」

「集まってほしいのは医師じゃないだろうね。」

「それはもちろん!どういうことです?」

「医師を集めてあちらの県からこちらの県に患者が移動してきて、つまりは医師があちらの県からこちらの県に」

「わかりました。」

「あまりいい話でもないだろう?」

「もういいです。そうですね。」

 

ぐうたらだなんてごめんなさい。

音はいらない。そう言って手を伸ばしたさきに。ペンがころがっていたんだ。太くてやわらかいペンがよかったな。だけど針のような硬いペンだった。まあるい愛情。そんなものにも似た。絵をかけたなら。名前も知らない誰かにさらわれた光は。この手で生み出せそうなのに。線はとまり。点は打てない。君はテレビが好きだった。僕は音楽が好きだ。そんなところも好きだった。ぐうたらだなんてごめんなさい。

科学者兼アーティスト

これが科学のなせる技だと。精神病のど真ん中にいるよ。そこから逃げていいなんて教わってない。君は目の病気なんだろう。eyeだからさ。それもよくわかってる。誰かが必ず病名を付けてくることも。空に昇ってたはずだった。そしてアーティストだって。瞳の中心へ。君は喉が痛くて話せないと言った。それが右の乳首だと。俺は不安なそぶりは見ないし見えないと言ってた。つまりはさ。ここから話すことはそんなに意味がないんじゃないかって。君は科学者なのか?それとも風に耳を澄ますの?俺のどうでもいい話を聞いてくれよ。こないだは俺の歯からこぼれる風の音が聞こえたんだ。今じゃ言葉しか話せないや。生きてるのに揺れてないのさ。そよいでないのさ。

CIA

渦の中心を指差して。中心はすごい圧力で静かだ。パンのにおいがして。静かに渦じゃなくなった。めったにこんなことするもんじゃないな。

shi.shi.shi.CIA。

3つのお手玉宙をまわる。1つはじいて。1つ加わった。もう一つはどこにいったんだ?いつのまにか入れかわっている。

shi.shi.shi.CIA。

長官が28の罪を数えたら。29の罪は自分なんじゃないのかって。エージェントは世界を思いやった。悪よ。もうそんな言葉でもないよ。パンのにおいがして。静かに渦じゃなくなった。めったにこんなことするもんじゃないな。

パンのにおいがしたって。パンのにおいがしたって。パンのにおいがしたって。涙とともにパンを食べたものじゃなきゃ人生のほんとの意味なんてわからないんだって。パンのにおいがしたって。パンのにおいがしたって。パンのにおいがしたって。

 

巨大な街

東京の人の心の中には少し沖縄が見える。波音が聞こえる。誰に話しかけられることもない。こんな地球の片隅にさえクオンツは染み込む。少し寂しくなったんだ。なぜ世界は止まらない?都会で生きる僕らはかえってその静けさを知っている。包まれているのは優しさですか。それだけ僕らの耳はやられている。ペシャンコになった都会でなぜか僕は平和を感じたんだ。波がそれを砂に変えていく。それは止められないんだと思って都会を眺めたら儚い光に愛しさを感じませんか。明かりの消えた街。静かに息を吸っている。東京。君となんとか折り合いをつけたい。すばらしい歌にその壁一面を変えてくれないか。誰に届かなくていい。俺に届くように。「なんだか働きたくなくて。これは俺の気持ち?それとも誰かの疲れ?」生きて揺れる。ときにこの街に飲み込まれる。国会議員にでもなろうかなと。情熱を履き違える。その両方を抱えて生きていくこともできる。美しい式がこの世界を浮き彫りにする。環境を変化させた。人波が渦を巻いて変化していく。誰もそのことに気づかない。僕は少し怖くなったんだ。ネズミじゃあるまいし。僕らを操っているのは微量なミネラルの変化でもないし、それは確かな式だと思う。生物は波に違いない。矢印は式に違いない。永遠に近いほど僕は矢印の中心にいる。中心が壊れたら生物はまた次の中心を探す。