carbocation

カチオン-π環化は有機化学における反応様式の一つであり、五員環や六員環化合物の構築に有効である。

非環状分子のカルボカチオンが二重結合などのπ結合の近傍に生じると、このπ結合が求核的に分子内反応し、閉環反応を伴いつつC-C結合を形成して新しいカチオンを含む環状化合物を形成する。このような環化反応は、プロトン酸(H2SO4, HCO2H, CF3CO2H)あるいはルイス酸(F3B・OEt2, TiCl4, SnCl4)を用いて比較的安定なカルボカチオンを穏和な条件で生成できれば、円滑に進行する。アルケン、第三級アルコール、アリルアルコール、エポキシドおよびアセタールなどがカチオンの一般的な前駆体になる。

π結合(パイけつごう、pi bonds)は、分子内の隣り合った原子同士の電子軌道のローブの重なりによってできる化学結合である。π結合はp軌道を意味するギリシャ文字の"π"から命名された。

π結合は二つの原子のp軌道の間で直接的に電子が共有されている。π結合は原子核の正電荷から距離があり軌道の重なりも小さい為に、σ結合よりも結合力が弱く、エネルギー準位が高い。 なお、「π結合」というのはあくまでも「結合軸の周りで軌道を回転すると、半回転したときに符号が逆になる」というものであるため、p軌道同士の重なりに限定されない。例えば結合軸をz軸にとったとき、一方の原子のdxz軌道ともう一方の原子のpx軌道から出来る結合や、両原子のdxz軌道から出来る結合もπ結合である。


二重結合あるいは三重結合している原子は1つのσ結合と残りは通常π結合とから構成される。π結合は平行に配列した軌道の重なりによって生じる。それは2つの軌道が縦方向に一次結合し、σ結合よりも長くなっている。π結合上の電子は時としてπ電子と呼び表される。

カルボカチオン (英: carbocation) は炭素原子上に正電荷を持つカチオンのことである。電気的に中性な有機化合物の炭素原子からヒドリドイオンが脱離した形の3価の炭素のカチオンと、電気的に中性な有機化合物の炭素原子にプロトンが付加した形の5価のカチオンがある。

IUPAC命名法では、そのカルボカチオンにヒドリドイオンを付加した炭化水素の語尾を -ylium に変更して命名するか、そのカルボカチオンからプロトンを除去した炭化水素の語尾を -ium に変更して命名する。すなわち CH3+ は CH4 メタン (methane) の語尾を -ylium に変更してメチリウム (methylium)、CH2 メチレン (methylene) の語尾を -ium に変更してメチレニウム (methylenium) と命名する。CH5+ はメタンの語尾を -ium に変更してメタニウム (methanium) と命名する。

このIUPAC命名法に従うと従来3価のカルボカチオンに対してしばしば使用されてきたカルボニウムイオン (carbonium ion) は5価のカチオンと混同する可能性がある。そのため、3価のカルボカチオンについては2価の炭素化合物であるカルベン (carbene) にプロトンが付加した形であることを強調してカルベニウムイオン (carbenium ion) という語が特に使われることもある。

 

 

 

intercalate

二ホウ化マグネシウム(にホウかマグネシウム、magnesium diboride、MgB2)はホウ素とマグネシウムからなる無機化合物で、六方晶の層状物質。結晶構造は AlB2 型構造 (P6/mmm)。これは、ホウ素がグラファイトのように亀の甲(ハニカム)状となって層状に積層した間を、マグネシウムがインターカレート(intercalate, 挿入)したような構造である。金属間化合物であり、金属の性質を示す。ホウ素層内は主に共有結合であり、ホウ素層、マグネシウム層間はイオン結合的な力で結合している(この点が、グラファイト層間のファンデルワールス結合と異なる)。

2001年1月に青山学院大学の秋光純らのグループが、ごくありふれた物質として市販もされていた MgB2 が、実は 39 K(ケルビン)で超伝導を示すことを発見した[1]。転移温度は銅酸化物を中心とした高温超伝導物質よりはるかに低いが、金属間化合物(あるいは金属)ではNb3Ge(転移温度 23 K)以来の更新であった。

MgB2 における多重超伝導ギャップの起源 (The origin of multiple superconducting gaps in MgB2) についての論文が2003年に出版されている[2]。

超電導リニア用コイルとして東海旅客鉄道などの研究がすすみ、2005年愛知万博超電導リニア用の二ホウ化マグネシウムのコイルが公開された。 JR東海は2007年4月20日、二ホウ化マグネシウムを使った超伝導線材で大型(直径 500 mm)超伝導コイルを製作、これを使用して(液体ヘリウムなどの液体冷媒でなく)冷凍機で冷却して磁界を発生させ錘(おもり)を浮上させる実験に成功したと発表した[3][4]。 二ホウ化マグネシウム山梨リニア実験線で使用されているニオブチタン合金よりも臨界温度が-234℃と35℃高く、効率よく超伝導状態を維持できる。臨界温度はセラミックス系のほうがさらに高いが、二ホウ化マグネシウムはセラミックス系より丈夫で扱いやすく実用化上コストパフォーマンスが高い[要出典]。JR東海では2003年に二ホウ化マグネシウムの線状化に成功、2004年にコイルを製作、当時世界最高の磁界を発生させた。従来は直径 30 mm であったが2007年4月には直径 500 mm の大型コイルを製作、(これを液体ヘリウムに直接浸し冷却した従来の方法に対し)冷凍機による伝導冷却で、磁界を発生させることができ、世界初の試験であった。実際には0.05テスラ程度の磁界が発生したと想定され、約 630 kg の錘を浮上させた[要出典]。 直接浸して冷却する方式は、安定して冷やせる一方で、メンテナンスに手間がかかるという欠点があるが、リニアへの応用実用化を考えれば、伝導冷却ならば冷却装置も簡素化でき、全コストの低減も期待できるという[要出典]。

インターカレーション(Intercalation)とは、分子または分子集団が他の2つの分子または分子集団の間に入り込む可逆反応のこと。

これには下記の種類がある。

グラファイトインターカレーションとはグラファイトの正六角形平面を重ねた構造の特定の一面に他の物質層が入り込む現象。入り込む物質をインターカラントと呼ぶ。たとえばグラファイトの間にカリウムが入り込むC8K、C21K、C36K、C48Kなどがある。 携帯電話などのリチウムイオン二次電池にこの現象が利用されている。

リガンド(ligand; ライガンド)とは、特定の受容体(receptor; レセプター)に特異的に結合する物質のことである。[1]

リガンドが対象物質と結合する部位は決まっており、選択的または特異的に高い親和性を発揮する。例えば、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体などが顕著な例である。リガンドの代わりにはたらく薬物がアゴニスト、リガンドのはたらきを弱める薬物はアンタゴニストである。


特にタンパク質と特異的に結合するリガンドは、微量であっても生体に対して非常に大きな影響を与える。 そのため薬学や分子生物学の分野では重要な研究対象になっている。

リチウムイオン二次電池(リチウムイオンにじでんち、lithium-ion rechargeable battery)は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。正極、負極、電解質それぞれの材料は用途やメーカーによって様々であるが、代表的な構成は、正極にリチウム遷移金属複合酸化物、負極に炭素材料、電解質に有機溶媒などの非水電解質を用いる。単にリチウムイオン電池リチウムイオンバッテリー、Li-ion電池、LIB、LiBとも言う。リチウムイオン二次電池という命名はソニー・エナジー・デバイスによる[9]。

BCS理論では電子-格子相互作用を介して電子同士がフォノンを仮想的に交換(或いはフォノンを介して運動量を交換)することによって、電子同士に引力が働くと考える。この引力によって生じる電子対(スピンは互いに逆向き、かつ対の全運動量がゼロ)をクーパー対(クーパーペア)と言う。

 

核化学

核化学(かくかがく、英語:nuclear chemistry)は原子核改変を扱う物理学の分野。原義は原子核反応で生成する人工放射性元素に関する無機化学である。しかし、発足当時はプルトニウムのようにトン単位で生成する核種が学問の中心にあったが、近年発見される新規人工放射性元素半減期がmsec以下であり、且つ1つ2つと数えられるほどしか生成しないので、すっかり原子核物理学である。あるいは放射化学のことをさしている場合が多い。

原子核に対して、中性子を吸収させるか、他の核種を核融合させると別の核種に転換される。前者は電荷を持たないので比較的容易に核に吸収させることが可能であるが、後者は電荷の障壁を越えるためにエネルギーが必要な一方、余剰なエネルギーは核を不安定化させて、更なる核分裂の要因となるので、精密な入射エネルギーのコントロールが必要である。

転換された核種が陽子過剰あるいは中性子過剰が進むと不安定核となりアルファ崩壊ベータ崩壊核分裂を引き起こす。一方、核子数の魔法数(マジックナンバー)が知られており、特定の数の場合エネルギー準位の閉殻構造をとるので原子核が安定化すると考えられている。

魔法数(まほうすう)とは、原子核が特に安定となる陽子と中性子の個数のことをいう。陽子数または中性子数が魔法数である核種を魔法核と呼ぶ。

核構造のシェルモデルでは、殻(シェル)が「閉じている」状態(閉殻)は安定性が高く、崩壊や核分裂が起きにくくなる。計算上特定の値が該当し、魔法数となる。陽子と中性子はよく似ているので同じ値となる。

現在、広く承認されている魔法数は 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126 の7つで、原子番号がこれらにあたる元素は、周辺の元素に比べて多くの安定同位体を持っている。中性子数がこれに該当する同中性子体についても同様で、例えば核種の一覧を見ると、縦の20と横の20には安定同位体が並んでいるのがわかる。

一部の中性子過剰核では、8, 20, 28は消えて、別の魔法数である 6, 16, 32, 34 が現れる事が研究によって示されている[1][2]。この領域のことを反転の島(Island of inversion)と呼ぶ。(50、82は維持される[3])。

魔法数は1949年にマリア・ゲッパート=メイヤーとヨハネス・ハンス・イェンゼンによって理論的な説明が成され、ノーベル賞授与対象となった。

冷却原子

冷却原子気体とは、レーザー冷却等の技術を用いて絶対零度の付近まで冷却された原子、あるいは原子気体のことである。典型的には、数十マイクロケルビン以下を記録する。このような極低温では、原子気体の量子力学的な性質が重要になる。実験的には、いくつかの技術を組み合わせてこの温度を実現する。通常、実験の初期段階では、原子を磁気光学トラップ中に捕捉し、レーザー冷却により冷却する。さらに限界まで冷却するためには、レーザー冷却された原子を磁気トラップや光学トラップに移し、蒸発冷却等の手法を用いる[1]。

十分に冷却されると、原子気体は量子力学に支配された新たな物質状態を形成する。例えば、ボース原子の場合はボース=アインシュタイン凝縮(BEC)が、フェルミ原子の場合は縮退フェルミ気体[2]が実現する。

冷却原子を用いて、量子相転移BEC、ボソンの超流動、量子磁性、多体スピン・ダイナミクス、エフィモフ効果、BCS超流動、BCS−BECクロスオーバー等の量子現象が研究されている[3]。

ゆらぎの定理

ゆらぎの定理(ゆらぎのていり、英: Fluctuation Theorem, FT)とは、ある過程の実現確率と、その逆過程の実現確率との間に、対称性が存在することを示した定理である。

ゆらぎの定理は、平衡近傍に適応すると相反定理、揺動散逸定理、線形応答理論を、等温系で適応するとJarzynski等式を導くことが出来る。ゆらぎの定理は、線形応答の関係を、非線形な領域にまで拡張したものとも見ることができる。それまで有意味な関係式があると思われてこなかったような領域において発見された関係式であり、そのため発見された90年代以降、ゆらぎの定理に関係した研究は活発に行われている。

ある操作(例えばピストンを引いて始状態から終状態に変化させる)におけるエントロピー生成率を
σ
(
t
)
{\displaystyle \sigma (t)}、その逆操作(終状態からピストンを押して始状態にする)におけるエントロピー生成率を
σ

(
t
)
{\displaystyle \sigma ^{\dagger }(t)}とする。また、エントロピー生成の時間平均を
σ
¯
(
t
)

(
1
/
t
)

0
t
σ
(
s
)
d
s
{\displaystyle {\bar {\sigma }}(t)\equiv (1/t)\int _{0}^{t}\sigma (s)ds}と書くことにする。
σ
(
t
)
{\displaystyle \sigma (t)}を
(
A
,
A
+
d
A
)
{\displaystyle (A,A+dA)}の範囲に見出す確率を
P
(
σ
¯
(
t
)
=
A
)
{\displaystyle P({\bar {\sigma }}(t)=A)}とし、
σ

(
t
)
{\displaystyle \sigma ^{\dagger }(t)}を
(

A
,

A

d
A
)
{\displaystyle (-A,-A-dA)}の範囲に見出す確率を
P
(
σ
¯

(
t
)
=

A
)
{\displaystyle P({\bar {\sigma }}^{\dagger }(t)=-A)}とする。

このとき、ゆらぎの定理は以下で表される。

P
(
σ
¯
(
t
)
=
A
)
P
(
σ
¯

(
t
)
=

A
)
=
e
A
t
{\displaystyle {\frac {P({\bar {\sigma }}(t)=A)}{P({\bar {\sigma }}^{\dagger }(t)=-A)}}=e^{At}}
ゆらぎの定理は、1993年にエヴァンス、コーエン、モリスによって、Nose-Hoover熱浴のシミュレーションにおいて発見された[1]。当時はNose-Hoover熱浴特有の性質と思われていたが、1998年にKurchanによってランジュバン方程式に従う系に[2]、2000年にJarzynskiによって一般のハミルトン系に[3]対して証明がなされ、極めて一般的に成り立つ定理であることが分かった。

ゆらぎの定理は、状態変化の速さ(例えば、ピストンを動かす速さ)に対していかなる制限もなされていない。これは、操作が準静的のみ、あるいは線形応答領域のみのように制限されていたこれまでの定理と一線を画する部分である。また、この定理はエントロピーが増えるような「極めて典型的な状態変化」の発生確率と、エントロピーが減るような「極めてまれな状態変化」の発生確率との間に、上記のような極めてシンプルな関係が存在していることを主張している。ゆらぎの定理以前には、そのような「極めてまれな状態変化」の発生確率について有意義な関係式など存在しないだろうと思われていたので、この定理はそうした常識的な見方を覆したという意義も持っている。

多くの場合、ゆらぎの定理は上記のような「ある遷移過程における順過程と逆過程のエントロピー生成率の関係」を指すが、定常状態におけるエントロピー生成率の大偏差性質についての定理も「ゆらぎの定理」と呼ばれることがある。これらを区別するため、前者を「遷移過程のゆらぎの定理」、後者を「定常過程のゆらぎの定理」と呼ぶこともある。

定常過程のゆらぎの定理は以下で表される。

lim
t


1
t
ln

P
(
σ
¯
(
t
)
=
A
)
P
(
σ
¯
(
t
)
=

A
)
=
A
{\displaystyle \lim _{t\to \infty }{\frac {1}{t}}\ln {\frac {P({\bar {\sigma }}(t)=A)}{P({\bar {\sigma }}(t)=-A)}}=A}

中性子を含むすべての量子的粒子は波の性質を示す。

中性子回折法(ちゅうせいしかいせつほう, Neutron diffraction; ND)とは、結晶による中性子線の回折現象を利用して、物質の結晶構造や磁気構造の解析を行う手法である。

中性子は、ほぼすべての原子の原子核に含まれる粒子であるが、それらは原子核中で束縛されている。中性子回折法に必要な自由中性子は、寿命が短いため通常は自然界に存在せず、核分裂反応からのみ得ることができる。中性子を含むすべての量子的粒子は波の性質を示し(物質波)、その現象のひとつとして回折が知られている。そこで、核分裂によって得られた中性子線のエネルギーを適切に選別し、その波長を結晶の原子核間距離と同程度とすることで、原子核が回折の障害物としてはたらき、結晶構造解析に用いることができる。

物質に入射した中性子線は、X線と同様にブラッグの回折条件

2・d・sin(θ)=n・λ
(d:格子定数、θ:中性子線入射角、n:整数、λ:中性子波長)
を満たして回折する。低エネルギーのX線の有効侵入深さが数μm程度から1mm未満であるのに対して、試料にも依存するが中性子回折に用いられる熱中性子の有効侵入深さは、一般に数mmから数十mmと大きくなる場合が多く、物質内部の結晶配列や磁気構造の情報を取得可能である。特にX線回折は電子が少ない分子では有効でないが中性子回折は低分子量の分子でも解析が可能である。主に電子雲と相互作用するX線の回折においては、原子番号が大きくなるほど回折強度への寄与も大きくなるが、中性子原子核と相互作用するため、回折強度は同位体間でも異なる。このことから、中性子回折法では例えばH(水素)とD(重水素)を区別することもできる。またバナジウムのような元素はX線を強く散乱する物質であるが、核はほとんど中性子を散乱しない。それゆえ、よく容器物質として使われる。

X線との最も大きな違いは、小さな原子核によって散乱が起こるということである。つまり、電子雲の形を表す散乱因子が必要なく、X線のように散乱角の増加に伴って散乱強度が減少しないということである。それゆえ、高角の測定や低温実験でも強い回折パターンを得ることができる。このことから、多くの中性子回折装置には4 K程度までの低温で実験が行える液体ヘリウムやGM冷凍機などの冷却装置が備わっている。このような特徴から、X線では決定が困難であるような結晶中においても原子の位置を正確に決定できるメリットがある。

中性子回折法では、中性子源(原子炉による定常中性子源や核破砕パルス中性子源)、回折計(場合によっては分光器)と試料および検出器が必要である。X線回折に比べて大きな試料が用いられ、主に粉末回折として行なわれる。研究用原子炉から中性子を得る場合は、放出される中性子のうち、実験に必要な波長を持つもののみを取り出すために、モノクロメータ結晶やフィルターによる単色化が必要である。核破砕中性子源の場合は、パルス状の中性子が得られるため、飛行時間法(TOF法)によって入射中性子線のエネルギーを選別できる。このとき、必要な波長以外の中性子を遮断するのに、パルス発生に同期させたチョッパー等が必要である。

中性子回折の実験を初めて行ったのは,1945年アーネスト・ウォラン(英語版)である(この実験はオークリッジ国立研究所にある黒鉛炉が用いられた)。さらにその後1946年6月,ウォランはクリフォード・シャルと共にこの手法の基本原理を確立し,様々な物質への応用に成功した。彼らは,例えば氷の構造や物質中の磁気モーメントの微細配列といった課題に取り組んだ。シャルはこの功績が讃えられ,1994年カナダのバートラム・ブロックハウスとともにノーベル物理学賞を受賞している(ウォランは1984年に死去していたため受賞できなかった)。

中性子回折は、タンパクなど主に軽元素で構成される物質の構造を、シンクロトロンなどの放射光源よりずっと容易に決定することができる。これは軽元素の中には、重い元素よりも中性子的に大きな衝突断面積を持つものも存在するためである。

中性子回折X線回折よりも優れている点を一つ挙げるなら、X線回折が構造中の水素(H)にあまり感度がないのに対して、中性子は1Hと2H(重水素、D)の両方に強く散乱されることである。すなわち、中性子を用いることで、結晶構造中の水素の位置や熱的な挙動をずっと正確に捉えることができる。さらに水素は中性子に対してbH=-3.7406(11) fm[1]とbD=6.671(4) fm[1]という同位体によって対照的な散乱長を有する。そのため同位体比によっては互いにその寄与を打ち消し合うゼロ散乱(null-scattering)と呼ばれる現象が生じる。この場合、Hの散乱強度は大きな非弾性成分を持つため、散乱角度に無関係な大きなバックグラウンドが生じてしまう。その結果、液体の場合はもちろん、結晶のBragg反射さえもバックグラウンドに埋もれてしまう。

それでも、異なる同位体比の試料を用意することで、散乱のコントラストを変え、周囲の複雑な構造の中で単一の元素を浮かび上がらせることができるというメリットは無視できない。特に水素は同位体比を調整することが比較的容易であり、生体構造の中で重要な役割を果たしていること、他の測定法では分析が難しいことなどから、中性子回折における重要なターゲットとなっている。

 

 

Grass Roots〜sustainable energy as the way you are

バイオプラスチック(bioplastic)とは、生物資源(バイオマス)から作られたプラスチックである。

主にデンプンや糖の含有量の多いトウモロコシやサトウキビなどから製造される。技術的には木、米、生ゴミ、牛乳等からも製造可能であるとされている。

バイオプラスチックの大きな利点は、元来地上にある植物を原料とするため、地上の二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルの性質を持っていることである。ただし、従来のプラスチックと同様にバイオプラスチックの製造時にもエネルギーを必要とするため、完全なカーボンニュートラルではないとの意見もある。

バイオマス起源の素材を利用することで地球温暖化対策になる。植物が大気中の二酸化炭素を固定して生成した物質を使ってつくるプラスチックであるため、それを燃焼廃棄しても二酸化炭素の収支はゼロとなる。

焼却する場合、燃焼熱が低い上、ダイオキシン類が発生しない。

バイオプラスチックの多くは生分解性プラスチックとしての性質を持つ。微生物によって水と二酸化炭素に分解され、その二酸化炭素を元に植物が光合成によってデンプンを作り出し、デンプンからまた生分解性プラスチックの原料を作り出すことができるので循環性がある。

生分解性プラスチックは、プラスチックとしての機能や物性に加えて、ある一定の条件の下で自然界に豊富に存在する微生物などの働きによって、分解し最終的には二酸化炭素と水にまで変化する性質を持つプラスチックです。したがって、農業用のマルチフィルムや、食物など有機性廃棄物の堆肥化のための収集袋など、微生物分解性の機能を活用できる分野では、環境負荷低減に寄与することから注目されている素材です、これに対しバイオマスプラスチックは特別な性質を利用するものではなく、原料として植物などの再生可能な有機資源を使用することにより、枯渇が危惧され地球温暖化の一因ともされている石油にできるだけ頼らずに持続的に作ることができることから注目されている新しいプラスチック素材です。
したがって、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは、全く異なった2つの概念をもっています。

バイオマスプラスチックの原料に使われる植物などの再生可能資源は、数億年の長い年月をかけて地中に蓄えられた化石資源と異なり、大気中の炭酸ガスを植物の炭酸同化作用(光合成)により吸収した結果蓄えられたものなので、使用後燃焼などにより二酸化炭素に戻っても、地球温暖化の原因と言われている大気中の温室効果ガスの濃度上昇を来たすことがありません。このようにバイオマスプラスチックは人間の快適な生活に必要な自然環境を維持しながら、有用なプラスチック素材を供給できることから、今後より一層の普及が期待されております。

現在、開発が進んでいるバイオマスプラスチックはポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)等、かなり以前から存在が知られた化合物ですが、当時は、効率よく原料を製造したり、プラスチックに重合したりする技術がありませんでした。しかし、バイオケミストリーの研究開発が進むにつれ、石油を原料にしなくても、植物由来の原料を使って同じレベルのコストで、色々な化学品が製造できる可能性が高くなってきています。また、精製の技術が進歩したことにより品質的にも向上し、また、プラスチック加工技術の進歩により、広い商品分野で、使える状況になってきています。バイオケミストリーを中心とした技術の進展が、バイオマスプラスチックの製品開発を可能にしてきたといえます。

100%植物から作られている製品は、ほとんどありません。バイオマスプラスチックは原料として化石資源を限定的に使用することができ、バイオマスプラスチック製品は従来のプラスチックと同様に、商品として必要とされる性能や機能を確保するために様々な材料を組み合わせて作られます。このように組み合わせて製品を作ることによって、多くの商品の材料としてバイオマスを使用できる可能性が広がります。バイオマスプラスチックの優位性は、基本的に枯渇性の化石資源をできるだけ使わずに有用なプラスチックを持続的に作れることと、それによって、大気中の二酸化炭素濃度を上昇することを抑制する効果に大きな意味がありますので、高い比率で植物から作られているかというよりは、全体としてどれだけの量が、石油からではなく植物から使われるかが重要になります。

バイオマスプラスチック製品は、原料がバイオマスであるという特徴から、普通のプラスチックと見分けることは簡単にはできません。そこで、バイオマスプラスチック製品につき、一般の消費者にも正確に識別・認知できその普及促進につなげていくため、日本バイオプラスチック協会は、バイオマスプラスチック製品であることを示す「バイオマスプラマーク」を定め、一定の基準をクリアーした商品には、その表示を許諾する「バイオマスプラ識別表示制度」を2007年7月より運営しております。

バイオマスプラ識別表示制度は日本バイオプラスチック協会が運営する、バイオマスプラスチック製品の識別認証マークを一定の基準をクリアーした商品に許諾する制度です。製品中のバイオマスプラスチックの含有量(バイオマスプラスチック度)が25%以上であることが、規準の中心になっています。バイオマスプラスチック製品であることを明確に表示するには相応の使用量であることが、必須であるとの考えに基づいています。

バイオマスプラマークは製品中に基準以上のバイオマスプラスチックが使われているという事実を証明するマークです。マークが付いていることが直接、環境負荷低減を証明するものではありません。環境負荷の低減については、LCAなど、環境負荷の見極めにより別途その効果を確認することが必要です。バイオマスプラスチックは、原料の部分で化石資源を使わないため、その部分の環境負荷は少なくなりますが、その後の加工・使用・廃棄などの各段階での環境負荷を含め、総合的に評価することが必要です。

バイオマスプラスチックの使用量は、未だ全体のプラスチック使用量と比較すると、1%以下で少量ですが、一部の商品でバイオマスプラスチックを使った商品であることをアピールしている商品については、一般のお店でも入手することが可能です。例えば、コンビニエンスストアーで売られているソフトドリンクのラベルの一部。家庭用のラップフィルムのカット刃などがあります。大型量販店での、卵パック、生鮮物の包装などにも一部使われております。