ハダカデバネズミは、完全地中棲であるので太陽光にあたることはない。興味深いことには、ハダカデバネズミは、老化に対して耐性があり、健康な血管機能を維持でき[11]、げっ歯類の中でとび抜けて寿命が長いことである.[12]。

ビタミンD (vitamin D) は、ビタミンの一種であり、脂溶性ビタミンに分類される。ビタミンDはさらにビタミンD2(エルゴカルシフェロール、Ergocalciferol)とビタミンD3(コレカルシフェロール、Cholecalciferol)に分けられる。ビタミンD2は大部分の植物性食品には含まれず、キノコ類に含まれているのみであり、[1]ビタミンD3は動物に多く含まれ、ヒトではビタミンD3が重要な働きを果たしている。ちなみにビタミンD1はビタミンD2を主成分とする混合物に対して誤って与えられた名称であるため、現在は用いられない。

必須栄養素だが、日光浴によって生合成もされる。

ビタミンD2


IUPAC
(3β,5Z,7E,22E)-9,10-secoergosta-5,7,10(19),22-tetraen-3-ol
(3β,5Z,7E,22E)-9,10-セコエルゴスタ-5,7,10(19),22-テトラエン-3-オール
別称
Ergocalciferol
エルゴカルシフェロール
識別情報
CAS登録番号
50-14-6
日化辞番号
J1.907K
KEGG
D00187
C05441
特性
化学式
C28H44O
モル質量
396.65
融点
114-118
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ビタミンD3


IUPAC
(3β,5Z,7E)-9,10-Secocholesta- 5,7,10(19)-trien-3-ol
(3β,5Z,7E)-9,10-セココレスタ-5,7,10(19)-トリエン-3-オール
別称
Cholecalciferol
コレカルシフェロール
Vitamin D3
ビタミンD3
識別情報
CAS登録番号
67-97-0
日化辞番号
J2.367A
KEGG
D00188
C05443
SMILES
O[C@H](C/C1=C/C=C3/ C2CC[C@@H]([C@@](CCC3)2C) [C@H](C)CCCC(C)C)CCC1=C
特性
化学式
C27H44O
モル質量
384.64
融点
84.5-87
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ビタミンDは、活性型ビタミンD(カルシトリオールまたは、1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)として、次の方法により血中のカルシウム(Ca2+)濃度を高める作用がある。

腸からカルシウムの吸収を高め血中濃度を高める。
腎臓の働きによりカルシウムの血中から尿への移動を抑制する。
骨から血中へカルシウムの放出を高める[2]。
また、ビタミンDは免疫反応などへの関与も示唆されている。作用機構および機能の多様性から、ビタミンAとともにホルモンに分類されることがある。

ビタミンとは人体で合成できない微量栄養素という意味である。ビタミンDコレステロールから人体内で合成できるが、消化管からのビタミンDの吸収が低下すると容易にビタミンD欠乏症になることから外因性のビタミンDは不可欠である。

皮膚の表皮の層。基底層(図の赤色部分)及び有棘層(オレンジ色部分)での生成が最大となる。
皮膚は、主要な2層で形成されている。内側の層は真皮で、結合組織の大部分を占めており、外側の層は薄い表皮である。表皮は、5層で構成されており、外側から内側に順に、角質層、顆粒層、顆粒膜層、有棘層、基底層である。

1923年に7-デヒドロコレステロールに紫外線を照射することによって脂溶性ビタミンを生成できた。アルフレッド・ファビアン・ヘスは、「光はビタミンDと同等である。」ということを示した[3]。ドイツのゲッティンゲン大学のアドルフ・ヴィンダウスは、ステロールと関連ビタミンの構造の解明で、1928年にノーベル化学賞を受賞した[4]。彼は、さらに、1930年代にビタミンDの化学構造を確定した。

コレカルシフェロールは、皮膚で7-デヒドロコレステロールから光化学的に生成される。7-デヒドロコレステロールは、ヒトを含むほとんどの脊椎動物の皮膚中で大量に生成される[5]。ビタミンDの生成に効果のある波長300nm付近の紫外線(UV-B線)はドルノ線と呼ばれる。

ヒトにおいては、午前10時から午後3時の日光で、少なくとも週に2回、5分から30分の間、日焼け止めクリームなしで、顔、手足、背中への日光浴で、十分な量のビタミンDが体内で生合成される[6][7]。日本人に最も多い肌の色スキンタイプIIIで顔と手のひらだけに紫外線を浴びた場合、7月の日本の北海道札幌、茨城県つくば、沖縄県那覇では、10μgのビタミンD生成に必要な日光浴時間は10~20分であり、12月では、それぞれ139分、41分、14分となり大幅に増加する[8]。紫外線が皮膚に有害となるのはその約2倍から3倍の時間浴びた場合である。

ある種の動物では、毛皮や羽根が紫外線の皮膚への到達を妨げている。鳥類や毛皮を持つ哺乳類においては、皮膚から毛皮や羽根に皮脂を分泌し毛繕いすることによって口からビタミンDを摂取している[9]。

ハダカデバネズミでは、25-ヒドロキシビタミンDが血中で検出されないように元来コレカルシフェロール(ビタミンD)を欠損しているように見える[10]。実際、ハダカデバネズミは、完全地中棲であるので太陽光にあたることはない。興味深いことには、ハダカデバネズミは、老化に対して耐性があり、健康な血管機能を維持でき[11]、げっ歯類の中でとび抜けて寿命が長いことである.[12]。