群 G の位数が 1 であれば、群は自明群と呼ばれる。元 a が与えられると、ord(a) = 1 と a が単位元であることは同値である。

群の位数と元の位数はよく群の構造の情報をもたらす。大ざっぱに言えば、位数の分解が複雑であればあるほど群も複雑である。

群 G の位数が 1 であれば、群は自明群と呼ばれる。元 a が与えられると、ord(a) = 1 と a が単位元であることは同値である。G のすべての(単位元でない)元がその逆元と同じで (a2 = eで)あれば、ord(a) = 2 でありしたがって G は初等的な群論(英語版)によって なのでアーベル群である。このステートメントの逆は正しくない。例えば、6を法とした整数のなす(加法的)巡回群 Z6 はアーベル群であるが、数 2 は位数 3 をもつ:


位数の2つの概念の関係は次のようである。a によって生成される部分群を


と書けば、


任意の整数 k に対して


一般に、G の任意の部分群の位数は G の位数を割り切る。よりきちんと書くと、H が G の部分群であれば、


上から直ちに出る結果として、群のすべての元の位数は群の位数を割り切ることがわかる。例えば、上で示された対称群において、ord(S3) = 6 であったが、元の位数は 1, 2, 3 である。

以下の部分的な逆が有限群に対して正しい: dが群 G の位数を割り切り d が素数であれば、Gの位数 d の元が存在する(これはコーシーの定理と呼ばれることがある)。主張は合成数の位数に対しては成り立たない、例えば、クラインの四元群は位数 4 の元をもたない。これは帰納法によって証明できる[1]。定理の結果は次を含む:群 G の位数が素数 p のベキであることと G のすべての a に対して ord(a) が p のあるベキであることは同値である[2]。

a の位数が無限であれば、a のすべてのベキも同様に無限の位数をもつ。a の位数が有限であれば、次の公式が a のベキの位数に対して成り立つ: すべての整数 k に対して


とくに、a とその逆元 a−1 は同じ位数をもつ。

任意の群において、


積 ab の位数を a と b の位数に関係付ける一般的な公式は存在しない。実は、a と b の位数が両方有限であるのに ab の位数が無限であったり、a と b の位数が無限であるのに ab の位数が有限であることがある。前者の例は群 において a(x) = 2-x, b(x) = 1-x で ab(x) = x-1。後者の例は a(x) = x+1, b(x) = x-1 で ab(x) = id。ab = ba であれば、少なくとも ord(ab) は lcm(ord(a), ord(b)) を割り切るということは言える。その結果、有限アーベル群において、m で群の元のすべての位数の最大値を表せば、すべての元の位数は m を割り切ることを証明できる。

位数

数学の分野である群論において、群の位数(order) はその濃度、すなわち、その集合に入っている元の個数である。また、群の元 a の位数(order, ときに period)は am = e であるような最小の正の整数である(ただし e は群の単位元を表し am は a の m 個のコピーの積を表す)。そのような m が存在しなければ、a の位数は無限であるという。

群 G の位数は ord(G) や |G| で表記され、元 aの位数は ord(a) や |a| で表記される。

例。対称群 S3 は以下の乗積表をもつ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この群は 6 つの元をもつので、ord(S3) = 6 である。定義によって、単位元 e の位数は 1 である。s, t, w の各々は自乗すれば e になるので、これらの群の元の位数は 2 である。一覧表を完成するには、u と v の位数はどちらも 3 である、というのも u2 = v であり u3 = vu = e であり、v2 = u であり v3 = uv = e だからだ。

 

体は演算に関して閉じている。体 の拡大体 は, 上のベクトル空間になっています.

ある体 に,幾つかの元を付け足すことで, を含む体 を作れるとき, を の 拡大体 (もしくは単に 拡大 )と呼びます.


群論では,群の部分群を考えることに興味があり,正規部分群,中心,固定部分群など,部分群に関する色々な話題がありました.一方,体論で興味があるのは,ある体に何か元をつけたして体を拡大していくことです.

さて,体 の元を とし,ここに新たに元 を添加する場合を考えてみましょう.体は演算に関して閉じていますから,もともと に含まれていた元と を四則演算して組み合わせた元,例えば なども に含まれるなければなりません.そのため,元を一個だけ添加したつもりでも,通常,拡大体は よりずっと大きな集合になることに注意してください.

いま,添加された元と,それらの四則演算によって新しく増えた元をまとめて と書きましょう.つまり です. が や を含むことを考えれば,一般に の元は全て のように, の元と新たに増えた元の線形結合の形で表現できるはずです.また, の元と の元の間には分配法則 がなりたちます.これより,『 は 上のベクトル空間になっている』と見ることできます.

 

体 の拡大体 は, 上のベクトル空間になっています.
ベクトル空間の基底は新たに増えた元 で,係数は の元 というわけです.また, 上のベクトル空間と見たときの の次元を EのF上の次数 もしくは 拡大次数 と呼び, と書きます. が有限のとき を 有限次拡大体 ,無限のとき 無限次拡大体 と呼びます.

 

既約

アイゼンシュタインの既約判定法(アイゼンシュタインのきやくはんていほう、英: Eisenstein's criterion)は整係数の多項式有理数体 上で既約であるための十分条件を与える定理である。ゴットホルト・アイゼンシュタインが1850年に発表した論文が由来[1]。20世紀初頭では、シェーネマン=アイゼンシュタインの既約判定法とも呼ばれていた。これは、1846年にテオドル・シェーネマン(英語版)がこの定理を最初に発表した[2]ことに由来する.[3][4]。


を整数係数の多項式とする。ある素数 p が存在して、整数 a0, a1, …, an が

i ≠ n の場合は ai は p で割り切れる
an は p で割り切れない
a0 は p2 で割り切れない
を満たすならば、 は有理数体 上で既約である。

多項式の求根は古代ギリシアの時代より重要な問題であった。しかしいくつかの多項式、例えば X2 + 1 のようなものは実数体 R の範囲で考える限りにおいて根を持たない。そのような多項式に対する分解体の構成は、新たな体の中に多項式の根を求めることを可能にするものである。

多項式の求根は古代ギリシアの時代より重要な問題であった。しかしいくつかの多項式、例えば X2 + 1 のようなものは実数体 R の範囲で考える限りにおいて根を持たない。そのような多項式に対する分解体の構成は、新たな体の中に多項式の根を求めることを可能にするものである。

F を体、p(X) は多項式環 F[X] の n-次多項式とする。多項式 p(X) の F 上の分解体を構成する一般の過程は、体の拡大の列 F = K0, K1, …, Kr−1, Kr= K で、各 Ki が p(X) の新たな根を含む Ki−1 の拡大となっているようなものを構成することである。p(X) は高々 n 個しか根を持たないのだから、この構成も高々 n 段階の拡大を想定すればよい。各 Ki に対する構成は以下のようにする:

p(X) を Ki 上の既約因子の積 f1(X)f2(X) … fk(X)に因数分解する。
そのうちの一次式でない既約因子 f(X) = fi(X)を選択する。
体の拡大 Ki+1/Ki を、f(X) の根体、すなわち剰余環 Ki+1 = Ki[X]/(f(X)) として構成する。ここに、記号 (f(X)) は f(X) の生成する Ki[X] のイデアルである。
p(X) が完全に分解されていなければ、Ki+1 に対して上記の操作 1–3 を繰り返す。
上記の剰余環の構成に用いる既約因子 fi の取り方は任意でよいが、取り方が異なれば得られる拡大体の列は異なることに注意せよ。それにも拘らず最終的に得られる最小分解体は同型の意味で一意である。

f(X) を既約にとることで、イデアル (f(X)) は極大イデアルとなり、従って剰余環 Ki[X]/(f(X)) が実は体となることが導かれる。さらに言えば、剰余環への自然な射影 π: Ki[X] → Ki[X]/(f(X)) は


を満たすから、π(X) は f(X) の(したがって p(X)の)根になる(根体の項も参照)。

各拡大における拡大次数 [Ki+1 : Ki] は既約因子 f(X) の次数に等しいから、求める拡大の次数 [K : F] は各拡大の次数すべての積 [Kr : Kr−1] … [K2 : K1][K1 : F] に等しく、高々 n! である。

上記の通り、剰余環 Ki+1 := Ki[X]/(f(X)) は f(X) が既約であるとき体を成す。この体の元は、cj ∈ Ki および α = π(X) として、


なる形に表すことができる(Ki+1 を Ki 上のベクトル空間と見れば、α の冪 αj (0 ≤ j ≤ n−1) がその基底を与えるということ)。

つまり Ki+1 の各元は α の次数高々 n の多項式と看做すことができる。Ki+1 の加法は多項式の加法によって、乗法は f(X) を法とする多項式の乗法で与えられる。すなわち、g(α), h(α) ∈ Ki+1の積 g(α)h(α) = r(α) は、Ki[X] において g(X)h(X)を f(X) で割った剰余 r(X) によって与えられる。

剰余 r(X) は多項式長除法によって計算することができるが、もっと直接的な簡約規則によっても r(α) = g(α)h(α) を直接計算することもできる。まず f(X) は体上の多項式であるから、それが最高次係数 1


と仮定して一般性を失わない。α が f(X) の根とすれば、


であり、積 g(α)h(α) の m ≥ n なる項 αm は


と簡約することができる。

この簡約規則を用いる例として、Ki = Q[X] を有理係数多項式環として、既約多項式 f(X) = X7 − 2 をとる。g(α) = α5 + α2, h(α) = α3 + 1 を Q[X]/(X7 − 2) の二元とすれば、f(X) による簡約規則は α7 = 2 だから、g(α)h(α) = (α5 + α2)(α3 + 1) = α8 + 2 α5 + α2 = (α7) α + 2α5 + α2 = 2 α5 + α2 + 2αと計算できる。

^ すべての元の二乗を計算すればわかるが、7 は 4 を法として 1 に合同でないことからもわかる。

K の拡大体 L が、K 上の多項式からなる適当な集合に対して、同時にそれら全ての多項式の(それを一次式の積に分解することができるという意味で)分解体となっているとき、L は K の正規拡大であると言う。

抽象代数学において、与えられた多項式の分解体(ぶんかいたい、英: splitting field)とは、その多項式を一次式の積に因数分解 (splitting) できるような係数体の拡大体を言う。特にそのような拡大体のうち拡大次数(英語版)が最小となる最小分解体 (smallest splitting field) は多項式に対して同型を除いて一意に定まるため、最小分解体のことを指して単に分解体と呼ぶことも多い。

体 K 上の多項式 p(X) の(最小)分解体とは、Kの拡大 L であって、L において p が一次因子 (X− ai) ∈ L[X] の積


に分解され、なおかつ L がこれら根 ai によって K 上生成されるときに言う。したがって拡大体 L は p が分解するような K の拡大体の中で、拡大次数(英語版)が最小のものになる。そのような分解体の存在と同型を除く一意性を証明することができる。そのような同型の取り方の自由度は、多項式 p のガロワ群と呼ばれる(p は分離的であるものとする)。

実数体 R 上の二次式 x2 + 1 の分解体は複素数体 C である。
有理数体 Q 上の二次式 x2 − 2 の分解体は二次体 である。
素数 p とそのべき q = pn に対して、素体GFp 上の多項式 xq − x の分解体は有限体 GFqである。

例えば、K が有理数体 Q であり、

P(X) = X3 − 2
のとき、P(X) の分解体 L は 1 の原始立方根と 2 の立方根を含む。 従って、


であり、L は K = Q の6次拡大である。ここで、


は、1 の立方根である。

標数 7 の素体 GF7 上の二次式 x2 + 1 の分解体は、位数 49 のガロア体 GF49 である。−1 は GF7 上平方根を持たないからである[1]。
GF7 上の二次式 x2 − 1 の分解体は、GF7 である。 x2 − 1 = (x + 1)(x − 1) と GF7 で一次式の積に因数分解できるからである。

K の拡大体 L が、K 上の多項式からなる適当な集合に対して、同時にそれら全ての多項式の(それを一次式の積に分解することができるという意味で)分解体となっているとき、L は Kの正規拡大であると言う。

K を含む代数閉体 A を固定して考えるとき、拡大 A/K の中間体で K 上の多項式 p の分解体となるものがただ一つ存在し、それは p の A における根を K に全て添加して得られる体に他ならない。K が複素数体の部分体ならば分解体の存在については直ちにいえるが、一般には代数閉包の存在がこの分解体に対する結果の「ある種の極限」として証明されることもしばしばであるので、循環論法を避けるためにはこれらは独立に証明されなければならない。

K の分離拡大 K' に対し、K' のガロワ閉包 (Galois closure) L は分解体の一種で、K の K' を含む最小のガロワ拡大を言う。そのようなガロワ閉包は各元 a ∈ K' の K 上の最小多項式として得られる全ての K-係数多項式に対する最小分解体を含まなければならない。