「知事。」清田は言った。「知事。」
「なんですか?」尚輝は答えた。
「がんセンターこども病院は全国でもトップクラスの施設であると思うのですが、総合病院はどうでしょうか。いまいち地域に根ざしているとは言えないのではないでしょうか。」
「地域に根ざしていると言えないとは思わないが、どういうことかな。」
「つまりです。収益が前者と比べて埋もれてしまっているのではということです。これについてはどうお考えでしょうか。いいえ。ただ医師たちはもっと機材があればいい診療ができると言っているのですが」清田は言った。
「それは総合病院だからだよ。まさか収益を上げるために医師をやっているわけではないでしょう?」
「まさか」清田は言った。「医師はどんな機材でも出来る限りのことはします。県の財政だってわかっております。ただ同じように力を入れていただけるならそれこそ全国から患者が集まってくるような病院にもできるでしょうということです。悪い話ではないはずだ。」
「集まってほしいのは医師じゃないだろうね。」
「それはもちろん!どういうことです?」
「医師を集めてあちらの県からこちらの県に患者が移動してきて、つまりは医師があちらの県からこちらの県に」
「わかりました。」
「あまりいい話でもないだろう?」
「もういいです。そうですね。」