G のアデール形式の商に対する L2-空間の内で、保型表現は無限個の有限素点に対する p-進群の表現たちと無限素点に対する特定の展開環の表現たちとの無限テンソル積である。

その後に続く保型表現 (automorphic representation) の概念は、G としてアデール代数群としての代数群を採用することに技術的に大きな価値があることを証明した。アデールの使用は、合同部分群の族を一度に全部扱う方法であるという点で言えば、保型表現は上で導入した保型形式の概念に完全に含まれるというようなものではない。G のアデール形式の商に対する L2-空間の内で、保型表現は無限個の有限素点に対する p-進群の表現たちと無限素点に対する特定の展開環の表現たちとの無限テンソル積である。これがどれほど重要な転換かといえば、これによりヘッケ作用素カシミール作用素と同じレベルにおかれるということになるのである(これは函数解析学の観点からは自然であるけれども、数論にとってはそれほど明らかではない)。この考え方は、ラングランズ哲学の定式化の基礎を成している。

ポワンカレが1880年代までに初めて興味を持った数学の分野は保型形式論であった。ポワンカレはその保型形式を、優秀な教師として知られ、微分方程式論・函数論の研究を行っていた数学者ラザラス・フックスに因んでフックス函数と名づけている。ポワンカレは博士論文の一部としてそれらの函数の概念を精力的に研究した。ポワンカレの定義によると、保型函数とは、その定義域で解析的かつ、一次分数変換からなるある可算無限群の作用で不変となる函数である。したがって、保型函数は三角函数および楕円函数双方を一般化するものである。

ポワンカレは如何にしてフックス函数を発見したかを以下のように説明している。

For fifteen days I strove to prove that there could not be any functions like those I have since called Fuchsian functions. I was then very ignorant; every day I seated myself at my work table, stayed an hour or two, tried a great number of combinations and reached no results. One evening, contrary to my custom, I drank black coffee and could not sleep. Ideas rose in crowds; I felt them collide until pairs interlocked, so to speak, making a stable combination. By the next morning I had established the existence of a class of Fuchsian functions, those which come from the hypergeometric series; I had only to write out the results, which took but a few hours.

モジュラー形式は、モジュラー群あるいは合同部分群(英語版)のひとつを離散部分群として持つ SL2(R)(特殊線型群)や PSL2(R)(射影特殊線型群)の上に定義された保型形式である。この意味では、保型形式の理論はモジュラー形式の理論の拡張である。

調和解析や数論において、保型形式(ほけいけいしき、英: automorphic form)は、位相群 G上で定義された複素数(あるいは複素ベクトル空間)値の函数で、離散部分群 Γ ⊂ G の作用の下に不変なものである。保型形式は、ユークリッド空間における周期函数(これは離散位相群としての 1 次元トーラス上の函数と見なされる)を、一般の位相群に対して一般化したものである。

モジュラー形式は、モジュラー群あるいは合同部分群(英語版)のひとつを離散部分群として持つ SL2(R)(特殊線型群)や PSL2(R)(射影特殊線型群)の上に定義された保型形式である。この意味では、保型形式の理論はモジュラー形式の理論の拡張である。

アンリ・ポアンカレ (Henri_Poincaré) は、三角函数や楕円函数の一般化として、最初に保型形式を発見した。ラングランズ予想を通して、保型形式は現代の数論で重要な役割を果たす[1]。
 

保型形式の定式化に当たっては、Γ に対する一般的な意味での保型因子(群コホモロジーの言葉で言えば 1-コサイクルの一種)j が必要である。j は複素数値(あるいは一般にベクトル値の保型形式を考える場合にはそれに応じて複素正方行列値)の函数である。保型因子に課されるコサイクル条件は、j がヤコビ行列から導かれる場合には連鎖律を用いて機械的に確認することができる。

一般的な状況では、保型形式は G 上の(ベクトル値で考える場合は、ある固定された有限次元ベクトル空間 V に値をとる)函数 F で、

Γ の元 γ による平行移動による変換は所与の保型因子 j に比例する、
G 上のあるカシミール作用素(英語版)の固有函数である、
無限遠での増加について特定の条件を満足する
という三種類の条件を満たすものである。最初の条件は F が「保型性」を持つ (automorphic)、つまり γ に対して F(g) と F(γg) との間に興味深い函数等式が満足されることを言っている。ベクトル値の場合は具体的に、群の有限次元表現 ρ が成分に作用して、それらを「ひねる」。カシミール作用素云々は、あるラプラス作用素が F を固有函数にもつということであり、これは F が優れた解析的性質を持つことを保障するが、しかしそれが実際に複素解析函数となるかどうかは場合による。三つ目の条件は G/Γ がコンパクトだが尖点を持つ場合を扱うためのものである。

(1960年ごろに)この非常に一般な状況が提示される以前に、モジュラー形式以外の保型形式は既に十分研究されていた。Γ がフックス群(英語版)である場合は、1900年よりも前に既に知られていた(後述)。 ヒルベルト・モジュラー形式(英語版)(あるいはヒルベルト-ブルメンタル形式と呼ばれることもある)がその後まもなく提唱されたが、その完全な理論は長らく得られなかった。ジーゲル・モジュラー形式(英語版) は G がシンプレクティック群の場合で、モジュライ空間とテータ函数から自然に生じるものである。戦後、多変数函数論における興味から自然に、それらの形式がいつ複素解析的になるかといったところから保型形式の概念が追求されていった。そのような理論の構築に関して、1960年ごろの数年で、多くの仕事が特にイリヤ・ピアテツキー=シャピロによって成された。 セルバーグ跡公式の理論がたくさんの応用を持つなど、この理論が相当深いものであることが窺い知れる。ロバート・ラングランズはリーマン・ロッホの定理を保型形式の次元の計算に応用することができる方法を(特定の場合については多くの場合が知られていたが、そうではなく一般に)示した。これは概念の有効性についての「ポスト・ホック」な確認の一種である。ラングランズは(この問題に対する、スペクトル論の言葉で言えば「連続スペクトル」であるところのものに対応する)アイゼンシュタイン級数の尖点形式あるいは離散部分の吟味を除く一般論も導入している。数論の観点からは、シュリニヴァーサ・ラマヌジャン以降、尖点形式は問題の核心であると理解されている。

 

 

ある関数列の無限和とその関数列をフーリエ変換したものの無限和が等しい。

数学においてポアソン和公式(ポアソンわこうしき、英語:Poisson summation formula)とはある関数列の無限和とその関数列をフーリエ変換したものの無限和が等しいことを主張する公式である。シメオン・ドニ・ポアソン(Siméon Denis Poisson)によって発見された。

以下の式変形によって示される。

テータ関数、リーマンゼータ関数に関連した証明に応用される。

 

 

各々の積分変換が持つ性質は多岐に渡るが、いくつかの性質は共通のものとなっている。例えば、すべての積分変換は線形作用素である。実は、核函数が超関数となることをも許せば、すべての線形作用素は積分変換になる(このことをきちんと定式化したものがシュワルツの核定理(英語版)である)。 そのような積分方程式に関する一般論はフレドホルム理論として知られている。この理論では、核とは「関数からなる或るバナッハ空間上のコンパクト作用素」のことであるものと理解される。状況に応じてその核はフレドホルム作用素、核作用素、フレドホ

積分変換の表
名称
記号

t1
t2

u1
u2
フーリエ変換







フーリエ正弦変換







フーリエ余弦変換







ハートレー変換







メリン変換







両側ラプラス変換







ラプラス変換







ワイエルシュトラス変換(英語版)







ハンケル変換
 






アーベル変換(英語版)
 






ヒルベルト変換







ポアソン
 



 
 
 
恒等変換
 






逆変換に対する積分の極限において、上の表における c は変換関数の性質に依存する定数となる。例えば、ラプラス変換あるいは両側ラプラス変換に対し、c は変換関数の零点の実部のうち最大のものよりも必ず大きい定数となる。

本項では主に、実数全体で定義された関数に対して定義される積分変換を扱うが、より一般な群上で定義された関数に対してもその積分変換を定義することが出来る。

円周群上で定義された函数(つまり周期関数)を用いた場合、積分核は二重周期関数となる。円周上の関数による畳み込みは巡回畳み込みである。
位数 n の巡回群(これを Cn や Z/nZ で表す)の上で定義された関数を用いた場合、積分核は n × n 行列となり、畳み込みは巡回行列に対応する。

 

積分変換の前身は、有限区間における関数の表現のためのフーリエ級数である。

積分変換の前身は、有限区間における関数の表現のためのフーリエ級数である。その後、有限区間という制限を取り払うために、フーリエ変換が開発された。

フーリエ級数を用いることで、どのような実践的な時間依存の関数(例えば、電子装置のターミナルを通過する電圧など)でも正弦関数と余弦関数の和で表すことが出来、それらは定数係数をかけることによりスケールが適正に調整され、時間に関して前進あるいは後退させることでシフトされ、振動数を増加あるいは減少することにより「圧縮」あるいは「伸長」される。フーリエ級数における正弦関数および余弦関数は正規直交基底の例である。

このような公式は反転公式と呼ばれる。二変数の順番が変わっても変化しないような核は対称核と呼ばれる。数学に関する記述はさておき、積分変換が用いられる動機は理解しやすいものである。もともとの表記法では、解くことの難しい(少なくとも代数的に扱いづらい)問題が多く存在する。積分変換は、それらの問題の方程式を、元の「領域」から別の領域へと「写す」。その写された領域で方程式を扱い、そして解くことの方が、元の領域で行うよりもはるかに簡単であるような場合がある。そうして得られた解を、積分変換の逆によって元の領域へと戻すの

数学の分野における積分変換(せきぶんへんかん、英: Integral transform)とは、次の形をとるような変換 T のことである:


この積分変換の入力は関数 f であり、出力は関数 Tf である。積分変換は作用素の一種である。

多くの便利な積分変換が存在する。個々の積分変換は、その変換の核関数 (kernel function) あるいは核 (kernel, nucleus) と呼ばれる二変数関数 K を定めれば決まる。 いくつかの核関数には逆 K−1(u, t) が存在し、それは(大まかに言えば)次のような逆変換を満たす:


このような公式は反転公式と呼ばれる。二変数の順番が変わっても変化しないような核は対称核と呼ばれる。

 

 

G/Γ がコンパクトでないときは、アイゼンシュタイン級数を使い記述された連続スペクトルとなり、より難しくなる。アイゼンシュタイン級数の一般論は、非コンパクトな場合の特徴である連続スペクトルを分離するための要求に、大きな動機を持っている。

セルバーグ跡公式(セルバーグあとこうしき、Selberg trace formula)とは、Selberg (1956) で導入された、二乗可積分函数の空間 L2(G/Γ) 上の G のユニタリ表現の指標の表現である。ここに G はリー群で Γ は余有限 (cofinite) な離散群とする。指標は、G 上のある函数のトレースにより与えられる。

Γ が余コンパクト(英語版)な場合とは、離散的な和へ表現が分解するときのことを言う。ここで、跡公式とは、有限群の誘導表現の指標のフロベニウス公式(英語版)(Frobenius formula)の拡張である。Γ が実数 G=R の余コンパクト部分群 Z のときには、セルバーグ跡公式は本質的にポアソンの和(英語版)である。

G/Γ がコンパクトでないときは、アイゼンシュタイン級数を使い記述された連続スペクトルとなり、より難しくなる。セルバーグは、G が群 SL2(R) の非コンパクトの場合に結果をもたらし、さらに高いランクの群への拡張がアーサー・セルバーグ跡公式(英語版)(Arthur-Selberg trace formula)である。

Γ がリーマン面の基本群のとき、セルバーグ跡公式は、リーマン面の測地線の長さを意味する幾何学的データの項にラプラシアンのような微分作用素のスペクトルを書き表す。この場合にはセルバーグ跡公式は、リーマンの明示公式に似た形となり、素数のリーマンゼータ函数のゼロ点に関係し、ゼータのゼロ点はラプラシアン固有値に対応し、素数は測地線に対応する。この類似に動機を得て、セルバーグはリーマン面のセルバーグゼータ函数を導入し、解析的な性質は、このセルバーグ跡公式にエンコードされる。

コンパクトなリーマン面(英語版) S の場合は、特に興味をもたれている場合である。1956年にアトル・セルバーグ(Atle Selberg)が最初に論文を出したときは、ラプラス微分作用素とそのベキがこの場合を扱った。ラプラシアンのベキのトレースは、セルバーグゼータ函数を使い定義することができる。この場合の興味は、得られた公式と素数の理論の L-函数の明示公式との関係である。そこでは S 上の閉じた測地線が素数の役割を担う。

同時に、ヘッケ作用素のトレースも、セルバーグとマルティン・アイヒラー(英語版)(Martin Eichler)のアイヒラー・セルバーグ跡公式(Eichler-Selberg trace formula)と関連していて、ヘッケ作用素は与えられたウェイトのモジュラー群の合同部分群(英語版)に対しカスプ形式のベクトル空間の上に作用する。ここに、同一視する作用素のトレースは、ベクトル空間の次元、すなわち、与えられたモジュラー形式の空間の次元であり、リーマン・ロッホの定理により伝統的な方法の計算で求めることができる。

跡公式は数論幾何や数論へ応用される。例えば、アイヒラー・志村の定理を使い、モジュラー曲線の{ハッセ・ヴェイユのL-函数を計算する。志村五郎の解析を使う方法は、跡公式を使うことを意味している。アイヒラーコホモロジー(放物コホモロジーとも言う)の発展は、純粋に群コホモロジーの設定に基礎を持つ代数的設定を与えるので、非コンパクトなリーマン面やモジュラ曲線のカスプを考えることができるようになった。

また、跡公式は純粋に微分幾何学への応用も持っている。例えば、ブーサー(Buser)の結果により、リーマン面の長さスペクトル(英語版)(length spectrum)は、本質的には跡公式により、同じスペクトルを持つ不変量である。

跡公式は、しばしば、リー群というよりもアデール上の代数群の上で使われる。理由は、跡公式が対応する離散部分群 Γ を、それ以前に開発されたテクニックのより容易な体の上の代数群の上に置き換えるからである。

理論の現在の一番成功している公式はアーサー・セルバーグ跡公式(英語版)(Arthur-Selberg trace formula)で、一般の半単純な G の場合に適用される。多くの跡公式の研究はラングランズ哲学の中でエンドスコピー(英語版)(endoscopy)というテクニックを使う。セルバーグの跡公式は、アーサー・セルバーグ跡公式から導き出すことが可能である。(パームを参照)

コンパクトな双曲曲面 を、軌道の空間として、次のように書くことができる。


ここに、 は の部分群で、 は上半平面であり、 へは線型分数変換として作用する。

この場合のセルバーグの跡公式は、一般の場合よりも容易である。何故ならば、曲面がコンパクトであるから、連続スペクトルが存在せず、群 Γ は(同一視を除き)放物型かもしくは楕円型となるからである。

すると、X 上のラプラス・ベルトラミ作用素のスペクトルは離散的となり、ラプラス作用素はコンパクトなレゾルベント(resolvent)を持つ自己随伴作用素であるので、スペクトルは実数となる。


ここに、固有値ラプラシアンの Γ-不変な固有函数 である。言い換えると、


変数を代入して、


とすると、固有値はラベル付けされる。


するとセルバーグ跡公式は次のように与えられる。


上式の右辺は、群 Γ の共役類を渡る和であり、第一項は同一視の元に対応していて、残りのほかの項は共役類 を渡る和を構成している(この場合はすべて双曲的である)。函数 は 上で解析的であり、次を満たす。


ここに と は正の定数である。函数 は のフーリエ変換である。つまり、

である。