エクイティ的権利を持たないデジタルトークンで、対象事業に関するサービスの利用に関する権利(優先権・利用クレジット等)を付与する場合には、「ユーティリティ・トークン」と呼称されることがある。

Initial coin offeringICO、イニシャル・コイン・オファリング)とは、コイン(デジタルトークン・暗号通貨)の発行による資金調達・クラウドファンディングである。

ICOの仕組みにはバリエーションがあり得るが、コイン(デジタル・トークン)の発行体が、事業計画や資金使途を示した上で、当該事業等に賛同・共感する、あるいは出資を求める投資家から資金調達を行い、その対価としてコインを発行するのが標準的な仕組みである。インターネットなどのデジタル空間で募集が行われ、コインの対価の払い込みは暗号通貨によって行われることが多い。伝統的な株式公開やファンド出資の募集に比べて、簡易・迅速な手続きで資金調達ができることが狙いとされることも多いが、既存の法制度がどう適用されるかについては、いまだ不透明な部分も広く、コインの保有者が有する権利の性質によっては、有価証券を用いた資金調達と同視されることもある。

ICOが行われる一つの典型的な場面としては、新しい暗号通貨を開発するための資金調達手段として当該暗号通貨がリリースされる前に実施されるものである。ただし、ICOは、必ずしも発行する暗号通貨の開発のための資金調達に限定されるものではなく、より一般化すれば、発行者が企図する一定の事業に対する資金調達の方法としてデジタルトークンを発行して対価の払い込みを受けるものである。デジタルトークンは暗号通貨であることが通常であり、デジタルトークンの払込みも、暗号通貨でなされることが一般的である。

株式公開(IPO)の場合には、出資の払い込みの対価として株式やオーナー持分が配分されるが、ICOによるトークンの提供は、発行者への株主・所有者的権利(エクイティ的権利)を必ずしも付与するものではない。エクイティ権利を付与する場合には、伝統的な有価証券に関する規制が及ぶことが多く、ICOを用いる意図と抵触することも多い。

エクイティ的権利を持たないデジタルトークンで、対象事業に関するサービスの利用に関する権利(優先権・利用クレジット等)を付与する場合には、「ユーティリティ・トークン」と呼称されることがある。

ICO[1]のスキーム自体にバリエーションがあることもあって、日本におけるICOの法的位置付けは、必ずしも定まっていない。2017年6月8日の参議院財政金融委員会における答弁[2]で言及されているように、資金決済法に基づく仮想通貨交換業に関するルールまたは金融商品取引法に基づくルールが適用され得る。金融商品取引法が適用される場面としては、デジタルトークンが同法に定義する有価証券に該当する場合、と考えられている。

また、デジタルトークンの内容次第では、実質的に発行会社の提供するサービスを前払して購入していると整理され、その場合には前払式支払手段として、プリペイドカード・商品券などと類似した扱いを受けることになる。

2017年9月、中国や韓国では全面禁止された[3][4]。

^ “Ico lanchpad Applancer”. Applancer (2017年9月29日). 2017年12月17日閲覧。
^ 参議院会議録情報 第193回国会 財政金融委員会 第17号
^ Brenda Goh,Elias Glenn (2017年9月13日). “焦点:中国がICO禁止令、新興企業は対応に大わらわ”. ロイター. 2017年12月11日閲覧。
^ “韓国もICOを全面禁止、現地報道 ビットコインは一時3%安”. 日本経済新聞 (2017年9月29日). 2017年12月11日閲覧。