トポロジカル絶縁体(英: Topological insulator)とは、物質の内部は絶縁体でありながら、表面は電気を通すという物質である。ペンシルベニア大学のチャールズ・ケーン(en)らにより2005年に提唱され、2007年ビュルツブルグ大学が確認した。また2011年には大阪大学・名古屋大学がトポロジカル超伝導体候補物質を発見した。命名の由来は電子の様子を表す数式の解析にトポロジーが使われているからである。
この物質がそのような性質を持つのは、1937年に提唱されたマヨラナ粒子として電子が活動しているのではないかという推測がある。この物質の表面が電気を通す条件には、不純物や格子欠陥などの影響を受けず、境界条件だけが影響する。安定した電子の素粒子的挙動から、量子コンピュータ実現の鍵になるかもしれないという期待がある[1]。
笠真生と古崎昭の二人は、A.P.Schnyderと.W.Ludwigとの共同研究により「トポロジカル周期表」を完成し、3次元のトポロジカル超伝導体の存在を予言し実際に存在することを示した功績により2015年度仁科賞を受賞した[2]。
2016年に半金属ビスマスがトポロジカル物質であることが解明された[3]。
トポロジカル絶縁体(英: Topological insulator)とは、バルク部分は絶縁体であるが物質界面は導電性を示す[4]時間反転対称性と自明なトポロジカル秩序(英語版)を有する物質のことである。通常のバンド構造の絶縁体も、導電性、表面準位を保持することが可能であるが、トポロジカル絶縁体は粒子数の保持と時間反転対称性によってSPT秩序(英語版)という特有の性質を持つ。[5][6][7]
^ 「77年前に予言の素粒子 存在する?」日本経済新聞2014年9月20日朝刊17面
^ 平成 27年度 (第 61 回)仁科記念賞 回)仁科記念賞 受賞者 一覧平成27年11月13日公益財団法人仁科記念公益財団
^ 周藤瞳美. “東大など、半金属ビスマス自体がトポロジカル物質であることを解明”. 2016年11月22日閲覧。
^ Kane, C. L.; Mele, E. J. (30 September 2005). “Z2 Topological Order and the Quantum Spin Hall Effect”. Physical Review Letters 95(14): 146802. arXiv:cond-mat/0506581. Bibcode 2005PhRvL..95n6802K. doi:10.1103/PhysRevLett.95.146802.
^ Zheng-Cheng Gu and Xiao-Gang WenTensor-Entanglement-Filtering Renormalization Approach and Symmetry Protected Topological Order Phys. Rev. B80, 155131 (2009).
^ Pollmann, F.; Berg, E.; Turner, Ari M.; Oshikawa, Masaki (2012). “Symmetry protection of topological phases in one-dimensional quantum spin systems”. Phys. Rev. B 85 (7): 075125. arXiv:0909.4059. Bibcode2012PhRvB..85g5125P. doi:10.1103/PhysRevB.85.075125.
^ Xie Chen, Zheng-Cheng Gu, Xiao-Gang Wen, Classification of Gapped Symmetric Phases in 1D Spin Systems Phys. Rev. B 83, 035107 (2011); Xie Chen, Zheng-Xin Liu, Xiao-Gang Wen, 2D symmetry protected topological orders and their protected gapless edge excitations Phys. Rev. B 84, 235141 (2011)