固体高分子形燃料電池(こたいこうぶんしがたねんりょうでんち、polymer electrolyte fuel cell、PEFC)

固体高分子形燃料電池(こたいこうぶんしがたねんりょうでんち、polymer electrolyte fuel cell、PEFC)は、イオン伝導性を有する高分子膜(イオン交換膜)を電解質として用いる燃料電池である。これまで様々な呼称があり、初期はプロトン交換膜燃料電池(proton exchange membrane fuel cell, PEMFC)とも呼ばれていたが、1992年に当時の通商産業省がニューサンシャイン計画を導入する際、米国における学術的呼称である"polymer electrolyte fuel cell"の邦訳として「固体高分子型燃料電池」という語を用いるようになってから、次第にPEFCという略称とともに呼称が定着するようになってきた。JISにおける標準用語を燃料電池に対して制定された際、タイプをしめす言葉として形が用いられていることから、このタイプの燃料電池のことを「固体高分子形燃料電池」と定められ、定着した。

固体高分子形燃料電池の基本構造は、燃料極(負極)、固体高分子膜(電解質)、空気極(正極)を貼り合わせて一体化した膜/電極接合体 (Membrane Electrode Assembly, MEA) と呼ばれる基本部品を、反応ガスの供給流路が彫り込まれたバイポーラプレート (bipolar plate) と呼ばれる導電板で挟みこんで1つの基本単位を構成し、これを特に単セル (single cell) と呼ぶ。単セルでは運転時に約0.7Vの電圧を発生する。この単セルを積層して直列接続し高電圧を得られるようにした物をセルスタック (fuel cell stack) と呼ぶ。

燃料極(負極)では、水素やメタノールなどの燃料が供給され、H2 → 2H+ + 2e-(メタノールを用いた場合はCH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e-)の反応によって、プロトン(水素イオン、H+)と電子に分解する。この後、プロトン電解質膜内を、電子は導線内を通って、空気極へと移動する。 一般に、カーボンブラック担体上に白金触媒、あるいはルテニウム-白金合金触媒を担持したものが用いられる。

固体高分子膜(電解質)は、燃料極で生成したプロトンを空気極へと移動する働きを持つ。当初はスルホ系イオン交換樹脂がジェミニ宇宙船に搭載されたが、現在では、プロトン伝導性の高さと安定性から、主にナフィオン(Nafion、アメリカのデュポン社の商標)などのスルホン酸基を持ったフッ素系ポリマーが用いられていることが多い。日本産のフッ素膜も用いられることが多く、旭硝子 (Flemion) 、旭化成 (Aciplex) 等が知られる。この膜中において、プロトンは水和されてスルホン酸基上を移動する。したがって、膜中の水分が燃料極から空気極へと移動することになる。このままでは燃料極側では水分が徐々に失われてしまうので、燃料には水分を含ませる必要がある。この「水を使用する」という条件から、この系は0℃以下、または100℃以上での使用が困難であるというのが欠点である。そのため、無加湿・中高温条件において使用可能な高分子膜の開発が急務である。 また、燃料としてメタノールを用いる場合は、メタノール電解質膜を透過してしまう「クロスオーバー現象」が発生する。クロスオーバーの結果、メタノールは空気極でも反応してしまい、起電力を大きく低下させる。特に、出力密度を向上させるためメタノール濃度を高くするとクロスオーバーは顕著となる。最近ではこのクロスオーバーを抑制するために、多孔性ポリイミドプロトン伝導ガラスを利用する方法などが研究されている。

空気極(正極)では、電解質膜から来たプロトンと、導線から来た電子が空気中の酸素と反応して、4H+ + O2 + 4e- → 2H2Oの反応により水を生成する。が、実際はこの「酸素4電子還元」反応の効率はきわめて悪く、起電力を下げる原因になっている。 一般に、カーボンブラック担体上に白金触媒を担持したものが用いられる。

以上の反応から、理論上は約1.2Vの電圧が得られるが、電極反応の損失があるため実際に得られる電圧は約0.7Vとなる。また、燃料効率や寿命、触媒である白金が高価かつ希少であるなど改善すべき課題はきわめて多い。なお、自動車用燃料電池では1台あたり100g以上の白金が必要と言われ、資源的制約が厳しい上、車1台1億円程度のコストがかかると言われている。

燃料は多様な候補が検討されている。しかし、電極触媒として用いられている白金は一酸化炭素で容易に被毒され、すぐに活性を失ってしまうため、燃料中の一酸化炭素が10ppm程度以下であるという条件がつく。したがって、特に改質による燃料供給は装置が大型化してしまうという問題がある。水素の純度を高めるためにPROX反応により選択的にCOを酸化し、CO被毒を回避する。

水素
排気ガスとして水蒸気しか発生しないゼロ・エミッションの燃料として注目されている。天然資源として産出しないため、別のエネルギー源から製造しなければならないことや、常温常圧では爆発性の気体である水素をいかにして安全にかつ大量に貯蔵するのかなど、解決すべき問題は多い。数百気圧での圧縮貯蔵やデカリンや水素吸蔵合金などを用いた水素貯蔵が提案されている。
都市ガス
都市ガスを改質して水素を作って、その水素を燃料に発電する家庭用の場合、多量の二酸化炭素を発生させる。発電効率は現在30数%であり、一般的な火力発電所の熱効率である40%を越えない場合、廃熱を上手に利用しないと二酸化炭素の削減効果は望めない可能性がある。従って、給湯需要とのバランスが重要であり、需要予測技術などの研究が進められている。その他にも、耐久性やコストなど課題は多いものの、発電と熱供給を併せた総合熱効率は80%程度と高い。2005年度より東京ガス松下電器産業(現 パナソニック)、荏原バラード製、大阪ガス三洋電機(現ENEOSセルテック)、東芝燃料電池システム製のシステムの一般向け導入を開始した。この導入は有償モニター契約による。第1号機は首相公邸に導入されている。また、都市ガスに付臭剤として添加されている硫黄化合物は、改質触媒に致命的な損害を与える。したがって予めこれを除去しなくてはならず、改質系はより大きなものとなってしまうことになる。
メタノール
メタノール燃料を用いた燃料電池は小型化が比較的容易なため、内外電機各社により実用試作機が盛んに作られている。メタノールを直接セルに投入する「直接メタノール方式(DMFC)」と、改質器を用いて水素ガスを取り出す「メタノール改質方式」の2つの方式がある。メタノール改質方式は、より多くの水素をセルに投入できるが、改質器が必要なため小型化が困難である。メタノール燃料電池は、中間生成物としてホルムアルデヒドなどの有毒物質を微量ながら発生する(メタノール自体も有毒である)、メタノールがクロスオーバーし効率が低下するという問題がある。
ガソリン
ガソリンに改質器を用いて水素ガスを取り出すことで燃料電池に用いることができる。排気ガスとして二酸化炭素等を放出するが、ガソリンスタンド等の既存のインフラをそのまま利用可能であるため、自動車などへの応用は比較的容易である。但し、改質装置は大型であり、コーキングの問題が深刻であり、自動車に搭載するのは困難なため、固定式の改質装置により発生した水素を自動車へ供給する水素ステーション方式が有望とされている。
石炭
石炭をガス化したガスは一酸化炭素や水素を主成分としており、溶融炭酸塩形や固体酸化物形燃料電池の燃料に利用できる可能性があるが、硫黄やばいじんなどの不純物を含むため対策が必要である。
ボロハイドライド系燃料
水素とホウ素の化合物であるボロハイドライド系の燃料は1セルあたりの理論出力が1.64Vと高いため、注目されている。空気極に過酸化水素水 (H2 O2) を供給することで、さらに出力を上げることが可能である。
その他、燃料の候補としてジメチルエーテル(CH3OCH3)が挙げられる。改質器が不要な「直接ジメチルエーテル方式 (DDFC) 」として燃料の毒性の低い安全性が利点である。

電子密度が低い原子

求核剤(きゅうかくざい、nucleophile)とは、電子密度が低い原子(主に炭素)へ反応し、多くの場合結合を作る化学種のことである。広義では、求電子剤と反応する化学種を求核剤と見なす。求核剤が関与する反応はその反応様式により求核置換反応あるいは求核付加反応などと呼称される。求核剤は、反応機構を図示する際に英語名の頭文字をとりしばしば Nu と略記される。

求核剤として反応性の高い化学種のほとんどは孤立電子対を持つ。アニオンであることも多い。例として、各種カルバニオン、アミンまたはその共役塩基(アミド)、アルコールまたはその共役塩基(アルコキシド)、ハロゲン化物イオンなど、多数が挙げられる。 一方、求核剤が攻撃対象とする炭素原子(反応中心炭素)の多くは、電気陰性度が高い原子(酸素、ハロゲンなど)に隣接するなどの理由によりその電子密度が低下している。例として、カルボニル基、ハロゲン化アルキル、シアノ基 などの炭素原子が挙げられる。これらは、後述する有機金属試薬を求核剤として作用させると、反応して炭素-炭素結合を作る。

求核的反応において孤立電子対の授受に着目すると、求核剤はルイス塩基として、反応中心炭素はルイス酸と見なすことができる。

求核的反応は、溶媒効果、隣接基効果、あるいは立体効果(立体障害)などの影響を受けることがある。溶媒効果は求核種の反応性に影響を与える。隣接基効果や立体効果は、反応速度や、生成物の選択性に影響する。また、求核的反応の反応性を評価、予測する経験則として、HSAB則、ハメット則が知られる。有機電子論の項目も参照されたい。

グリニャール試薬や有機リチウム化合物を代表とする各種有機金属試薬は、多様な基質に対し高い反応性を示すことから、有機合成法上、炭素-炭素結合を得たいときに用いられる重要な求核剤である。特に立体特異的な求核置換反応(SN2反応)や求核付加反応は選択的立体制御を可能にすることから不斉合成において多用される。

チーグラー・ナッタ触媒(—しょくばい、Ziegler-Natta catalyst)は、オレフィンの重合に用いる触媒。ツィーグラー・ナッタ触媒とも言う。

通常、四塩化チタンまたは三塩化チタンをトリエチルアルミニウムやメチルアルミノキサン(en:Methylaluminoxane) ([-Al(CH3)O-]n, MAO) のような有機アルミニウム化合物と混合し調製する。エチレンやプロピレン、ブタジエン、イソプレン、アセチレン等の重合や、エチレン-プロピレンの共重合に用いられる。


1953年、ドイツのマックス・プランク研究所において、科学者カール・ツィーグラー(Karl Ziegler)がそれまで高圧が必要だったエチレンの重合反応の研究中に四塩化チタンを用いて発見した。この触媒によって、エチレンの常圧重合が可能になった。その後、イタリアのミラノ工科大学のジュリオ・ナッタ(Giulio Natta)が、三塩化チタンを用いることによって、それまで重合が困難と考えられていたプロピレンの重合に成功した。二人は、これらの業績により1963年、揃ってノーベル化学賞を受賞した(ただし、ツィーグラーがナッタの改良を軽視して、業績を全面的に自分に帰するよう求める発言を行ったため、二人の関係は険悪であったと言われている)。

重合触媒として石油化学工業に多大な功績があったばかりでなく、その反応機構の研究からは有機金属化学が盛んになるきっかけを与えた。

土圧

土圧 (どあつ、英語: earth pressure)とは、地盤内における土による圧力のことで、状態によって水平土圧の値が変化する。擁壁に裏込めされた土により,擁壁には土圧が作用する。擁壁が転倒しないように設計を行うためには、土圧の算定が重要となる。

静止した状態にある水において、ある点における水圧はどの方向からも等しい大きさであり、水の単位体積重量にその点よりも上にある水の高さを乗ずることで得られる。土圧の場合、鉛直方向に関しては土の単位体積重量に深さを乗じた値が土圧となり、これは水と同様である。一方、水平方向は、土の単位体積重量に深さを乗じた値の0.4~0.7倍が土圧となる。土の状態によって水平土圧の値が変わり、それぞれ主働土圧、受働土圧、静止土圧と呼ばれる。

土圧の種類は3つあり、以下の通りである。

主働土圧
鉛直応力が卓越して土が破壊する時の水平土圧
受働土圧
水平応力が卓越して土が破壊する時の水平土圧
静止土圧
地盤内で静止している時の水平土圧
水平土圧と変位の関係は右図の通り。 また、地盤の状態はそれぞれ下図の通りである。それぞれ
K
0
{\displaystyle K_{0}\,\!}、
K
a
{\displaystyle K_{a}\,\!}、
K
p
{\displaystyle K_{p}\,\!}は静止土圧係数、主働土圧係数、受働土圧係数である。

主働土圧と受働土圧の計算方法は2つ存在し、それぞれランキン土圧、クーロン土圧と呼ばれる。

ランキン土圧を算出する時は下記のような仮定を用いている。

擁壁は考えない。裏込め土内部の応力状態を考える(壁体が垂直かつ摩擦無し)
同一の深度では、土の応力状態は全ての場所で同じである(土の応力状態は水平方向については一定 )
裏込め土は全て破壊している状態にあると考える
背後の地盤は傾斜していない
ランキン土圧ではモール・クーロンの破壊規準を用いる。


主働土圧の時の地盤の状態
主働土圧状態
モール・クーロンの破壊規準の主応力表示は下記の通りである。
σ
1

σ
3
=
2
c
c
o
s
ϕ
+
(
σ
1
+
σ
3
)
s
i
n
ϕ
{\displaystyle \sigma _{1}-\sigma _{3}=2\mathrm {ccos} \phi +(\sigma _{1}+\sigma _{3})\mathrm {sin} \phi \,\!}
主働土圧の時、最大主応力は
σ
v
{\displaystyle \sigma _{v}\,\!}、で最小主応力は
σ
h
a
{\displaystyle \sigma _{ha}\,\!}、なので、上式に代入すると、以下の式を得る。
σ
v

σ
h
a
=
2
c
c
o
s
ϕ
+
(
σ
v
+
σ
h
a
)
s
i
n
ϕ
{\displaystyle \sigma _{v}-\sigma _{ha}=2\mathrm {ccos} \phi +(\sigma _{v}+\sigma _{ha})\mathrm {sin} \phi \,\!}
上式を
σ
h
a
{\displaystyle \sigma _{ha}\,\!}について整理する。
σ
h
a
=
σ
v
t
a
n
2
(
π
4

ϕ
2
)

2
c
t
a
n
(
π
4

ϕ
2
)
{\displaystyle \sigma _{ha}=\sigma _{v}\mathrm {tan} ^{2}\left({\frac {\pi }{4}}-{\frac {\phi }{2}}\right)-2\mathrm {ctan} \left({\frac {\pi }{4}}-{\frac {\phi }{2}}\right)\,\!}
また、主働土圧係数
K
a
{\displaystyle K_{a}\,\!}を用いて上式を書く。
σ
h
a
=
σ
v
K
a

2
c
K
a
{\displaystyle \sigma _{ha}=\sigma _{v}K_{a}-2\mathrm {c} {\sqrt {K_{a}}}\,\!}
K
a
=
t
a
n
2
(
π
4

ϕ
2
)
{\displaystyle K_{a}=\mathrm {tan} ^{2}\left({\frac {\pi }{4}}-{\frac {\phi }{2}}\right)\,\!}
受働土圧状態

受働土圧の時の地盤の状態
モール・クーロンの破壊規準の主応力表示は下記の通りである。
σ
1

σ
3
=
2
c
c
o
s
ϕ
+
(
σ
1
+
σ
3
)
s
i
n
ϕ
{\displaystyle \sigma _{1}-\sigma _{3}=2\mathrm {ccos} \phi +(\sigma _{1}+\sigma _{3})\mathrm {sin} \phi \,\!}
受働土圧の時、最大主応力は
σ
h
p
{\displaystyle \sigma _{hp}\,\!}、で最小主応力は
σ
v
{\displaystyle \sigma _{v}\,\!}、なので、上式に代入すると、以下の式を得る。
σ
h
p

σ
v
=
2
c
c
o
s
ϕ
+
(
σ
h
p
+
σ
v
)
s
i
n
ϕ
{\displaystyle \sigma _{hp}-\sigma _{v}=2\mathrm {ccos} \phi +(\sigma _{hp}+\sigma _{v})\mathrm {sin} \phi \,\!}
上式を
σ
h
p
{\displaystyle \sigma _{hp}\,\!}について整理する。
σ
h
p
=
σ
v
t
a
n
2
(
π
4
+
ϕ
2
)

2
c
t
a
n
(
π
4
+
ϕ
2
)
{\displaystyle \sigma _{hp}=\sigma _{v}\mathrm {tan} ^{2}\left({\frac {\pi }{4}}+{\frac {\phi }{2}}\right)-2\mathrm {ctan} \left({\frac {\pi }{4}}+{\frac {\phi }{2}}\right)\,\!}
また、受働土圧係数
K
p
{\displaystyle K_{p}\,\!}を用いて上式を書く。
σ
h
p
=
σ
v
K
p

2
c
K
p
{\displaystyle \sigma _{hp}=\sigma _{v}K_{p}-2\mathrm {c} {\sqrt {K_{p}}}\,\!}
K
p
=
t
a
n
2
(
π
4
+
ϕ
2
)

クーロン土圧を算出する時は下記のような仮定を用いている。

粘着力の無い砂質土を対象とする
壁体の背後の土の中に直線状の滑り面が生じ、くさび状の土塊が滑り面に沿って動く
クーロン土圧はランキン土圧よりも適用範囲が広く、壁体との摩擦、壁体の傾斜、背後の地表面の傾斜も考慮している。

主働土圧状態
クーロンの主働土圧計算時の地盤の状態は下図の通りである。

主働土圧の時の地盤の状態

主働土圧の時の連力図
右図を連力図という。土のくさびの重量
W
{\displaystyle W\,\!}は既知。3つ力のベクトルが閉じた 三角形になるように主働土圧の合力
P
a
{\displaystyle P_{a}\,\!}と滑り面に作用する力
F
{\displaystyle F\,\!}の大きさを決める。その時の
θ
\theta\,\!が滑り面の角度となる。
(土と壁体の摩擦角
δ
{\displaystyle \delta \,\!}と
ϕ
\phi \,\!内部摩擦角は既知、
α
{\displaystyle \alpha \,\!}と
β
\beta\,\!は土や擁壁の形を決めるものなので既知)
連力図に着目すると、正弦定理より以下の関係式を得る。
W
s
i
n
(
α
+
δ

θ
+
ϕ
)
=
P
a
s
i
n
(
θ

ϕ
)
{\displaystyle {\frac {W}{\mathrm {sin} (\alpha +\delta -\theta +\phi )}}={\frac {P_{a}}{\mathrm {sin} (\theta -\phi )}}\!}
したがって、
P
a
{\displaystyle P_{a}\,\!}は以下の通り。
P
a
=
W
s
i
n
(
θ

ϕ
)
s
i
n
(
α
+
δ

θ
+
ϕ
)
{\displaystyle P_{a}={\frac {W\mathrm {sin} (\theta -\phi )}{\mathrm {sin} (\alpha +\delta -\theta +\phi )}}\!}
W
{\displaystyle W\,\!}は土の重さなので別途計算する必要がある。
つまり、土塊の体積
V
{\displaystyle V\,\!}を計算し、土の単位体積重量を乗ずればよい。
この時、土の体積は単位奥行きあたりの体積であるので、実質的には土くさびの面積
S
S\,\!を求めればよい。
右図より土くさびの面積は以下の通りとなる。

土くさびの面積
S
=
1
2
A
B

A
C
s
i
n
(
α

θ
)
{\displaystyle S={\frac {1}{2}}AB*AC\mathrm {sin} (\alpha -\theta )}
また、正弦定理より以下の関係式を得る。
A
B
s
i
n
(
θ

β
)
=
A
C
s
i
n
(
π

α
+
β
)
=
A
C
s
i
n
(

α
+
β
)
{\displaystyle {\frac {AB}{\mathrm {sin} (\theta -\beta )}}={\frac {AC}{\mathrm {sin} (\pi -\alpha +\beta )}}={\frac {AC}{\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}}}

A
B
ABを壁体の高さ
H
Hを用いて表す。
A
B
=
H
s
i
n
α
{\displaystyle AB={\frac {H}{\mathrm {sin} \alpha }}}
以上より土くさびの面積は以下の通りである。
S
=
V
=
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
(
θ

β
)
{\displaystyle S=V={\frac {H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\theta -\beta )}}}
したがって、土の重さは以下のように得られる。
W
=
γ
t
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
(
θ

β
)
{\displaystyle W={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\theta -\beta )}}}
つまり、クーロンの主働土圧は以下のように導かれる。
P
a
=
γ
t
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
s
i
n
(
θ

ϕ
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
θ

β
)
s
i
n
(
α
+
δ

θ
+
ϕ
)
{\displaystyle P_{a}={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )\mathrm {sin} (\theta -\phi )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} \theta -\beta )\mathrm {sin} (\alpha +\delta -\theta +\phi )}}}
θ
\theta\,\!の最適解は極限定理の上界定理の考え方から
P
a
{\displaystyle P_{a}\,\!}を最大とする時の
θ
\theta\,\!となる。
すなわち、以下の関係を満たす時の
θ
\theta\,\!が最適解となり、その時の
P
a
{\displaystyle P_{a}\,\!}がクーロンの主働土圧となる。

P
a

θ
=
0
{\displaystyle {\frac {\partial P_{a}}{\partial \theta }}=0}
クーロンの主働土圧は以下の通りである。
P
a
=
1
2
γ
t
K
a
H
2
{\displaystyle P_{a}={\frac {1}{2}}\gamma _{t}K_{a}H^{2}\,\!}
K
a
=
s
i
n
2
(
ϕ

α
)
s
i
n
2
α
s
i
n
(
α
+
δ
)
[
1
+
s
i
n
(
ϕ

β
)
s
i
n
(
ϕ
+
δ
)
s
i
n
(
α

β
)
s
i
n
(
α
+
δ
)
]
2
{\displaystyle K_{a}={\frac {\mathrm {sin} ^{2}(\phi -\alpha )}{\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\alpha +\delta )\left[1+{\sqrt {\frac {\mathrm {sin} (\phi -\beta )\mathrm {sin} (\phi +\delta )}{\mathrm {sin} (\alpha -\beta )\mathrm {sin} (\alpha +\delta )}}}\right]^{2}\,}}\,\!}
受働土圧状態
クーロンの受働土圧計算時の地盤の状態は下図の通りである。

受働土圧の時の地盤の状態
主働土圧と同様に連力図を用いて解く。正弦定理より以下の関係式を得る。

受働土圧の時の連力図
W
s
i
n
(
α

δ

θ

ϕ
)
=
P
a
s
i
n
(
θ
+
ϕ
)
{\displaystyle {\frac {W}{\mathrm {sin} (\alpha -\delta -\theta -\phi )}}={\frac {P_{a}}{\mathrm {sin} (\theta +\phi )}}\!}
したがって、
P
a
{\displaystyle P_{a}\,\!}は以下の通り。
P
a
=
W
s
i
n
(
θ
+
ϕ
)
s
i
n
(
α

δ

θ

ϕ
)
{\displaystyle P_{a}={\frac {W\mathrm {sin} (\theta +\phi )}{\mathrm {sin} (\alpha -\delta -\theta -\phi )}}\!}
また、右図より土くさびの面積は以下の通りとなる。

土くさびの面積
S
=
1
2
A
B

A
C
s
i
n
(
α

θ
)
{\displaystyle S={\frac {1}{2}}AB*AC\mathrm {sin} (\alpha -\theta )}
また、正弦定理より以下の関係式を得る。
A
B
s
i
n
(
θ

β
)
=
A
C
s
i
n
(
π

α
+
β
)
=
A
C
s
i
n
(

α
+
β
)
{\displaystyle {\frac {AB}{\mathrm {sin} (\theta -\beta )}}={\frac {AC}{\mathrm {sin} (\pi -\alpha +\beta )}}={\frac {AC}{\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}}}

A
B
ABを壁体の高さ
H
Hを用いて表す。
A
B
=
H
s
i
n
α
{\displaystyle AB={\frac {H}{\mathrm {sin} \alpha }}}
以上より土くさびの面積は以下の通りである。
S
=
V
=
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
(
θ

β
)
{\displaystyle S=V={\frac {H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\theta -\beta )}}}
したがって、土の重さは以下のように得られる。
W
=
γ
t
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
(
θ

β
)
{\displaystyle W={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\theta -\beta )}}}
つまり、クーロンの受働土圧は以下のように導かれる。
P
p
=
γ
t
H
2
s
i
n
(
α

θ
)
s
i
n
(

α
+
β
)
s
i
n
(
θ
+
ϕ
)
2
s
i
n
2
α
s
i
n
(
θ

β
)
s
i
n
(
α

δ

θ

ϕ
)
{\displaystyle P_{p}={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {sin} (\alpha -\theta )\mathrm {sin} (-\alpha +\beta )\mathrm {sin} (\theta +\phi )}{2\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\theta -\beta )\mathrm {sin} (\alpha -\delta -\theta -\phi )}}}
θ
\theta\,\!の最適解は極限定理の上界定理の考え方から
P
p
{\displaystyle P_{p}\,\!}を最大とする時の
θ
\theta\,\!となる。
すなわち、以下の関係を満たす時の
θ
\theta\,\!が最適解となり、その時の
P
p
{\displaystyle P_{p}\,\!}がクーロンの受働土圧となる。

P
p

θ
=
0
{\displaystyle {\frac {\partial P_{p}}{\partial \theta }}=0}
クーロンの受働土圧は以下の通りである。
P
p
=
1
2
γ
t
K
p
H
2
{\displaystyle P_{p}={\frac {1}{2}}\gamma _{t}K_{p}H^{2}\,\!}
K
p
=
s
i
n
2
(
ϕ

α
)
s
i
n
2
α
s
i
n
(
α

δ
)
[
1

s
i
n
(
ϕ
+
β
)
s
i
n
(
ϕ
+
δ
)
s
i
n
(
α

β
)
s
i
n
(
α

δ
)
]
2
{\displaystyle K_{p}={\frac {\mathrm {sin} ^{2}(\phi -\alpha )}{\mathrm {sin} ^{2}\alpha \mathrm {sin} (\alpha -\delta )\left[1-{\sqrt {\frac {\mathrm {sin} (\phi +\beta )\mathrm {sin} (\phi +\delta )}{\mathrm {sin} (\alpha -\beta )\mathrm {sin} (\alpha -\delta )}}}\right]^{2}\,}}\,\!}

ランキン土圧における仮定は、以下の通りである。

α
=
π
2
,
β
=
0
,
δ
=
0
{\displaystyle \alpha ={\frac {\pi }{2}},\beta =0,\delta =0\,\!}
この時主働土圧および、受働土圧は以下のように得られる。

主働土圧
P
a
=
γ
t
H
2
c
o
s
(
θ
)
s
i
n
(
θ

ϕ
)
2
s
i
n
θ
c
o
s
(
θ

ϕ
)
{\displaystyle P_{a}={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {cos} (\theta )\mathrm {sin} (\theta -\phi )}{2\mathrm {sin} \theta \mathrm {cos} (\theta -\phi )}}\,\!}
先ほどと同様に上界定理を用いる。

P
a

θ
=
0
{\displaystyle {\frac {\partial P_{a}}{\partial \theta }}=0}
この方程式を解くと、
θ
\theta\,\!は次のように得られる。
θ
=
π
4
+
ϕ
2
{\displaystyle \theta ={\frac {\pi }{4}}+{\frac {\phi }{2}}\,\!}
この時の主働土圧は次のように得られる。
P
a
=
1
2
γ
t
K
a
H
2
{\displaystyle P_{a}={\frac {1}{2}}\gamma _{t}K_{a}H^{2}\,\!}
K
a
=
t
a
n
2
(
π
4

ϕ
2
)
{\displaystyle K_{a}=\mathrm {tan} ^{2}\left({\frac {\pi }{4}}-{\frac {\phi }{2}}\right)\,\!}
受働土圧
P
p
=
γ
t
H
2
c
o
s
(
θ
)
s
i
n
(
θ
+
ϕ
)
2
s
i
n
θ
c
o
s
(
θ
+
ϕ
)
{\displaystyle P_{p}={\frac {\gamma _{t}H^{2}\mathrm {cos} (\theta )\mathrm {sin} (\theta +\phi )}{2\mathrm {sin} \theta \mathrm {cos} (\theta +\phi )}}\,\!}
先ほどと同様に上界定理を用いる。

P
p

θ
=
0
{\displaystyle {\frac {\partial P_{p}}{\partial \theta }}=0}
この方程式を解くと、
θ
\theta\,\!は次のように得られる。
θ
=
π
4

ϕ
2
{\displaystyle \theta ={\frac {\pi }{4}}-{\frac {\phi }{2}}\,\!}
この時の受働土圧は次のように得られる。
P
p
=
1
2
γ
t
K
p
H
2
{\displaystyle P_{p}={\frac {1}{2}}\gamma _{t}K_{p}H^{2}\,\!}
K
p
=
t
a
n
2
(
π
4
+
ϕ
2
)
{\displaystyle K_{p}=\mathrm {tan} ^{2}\left({\frac {\pi }{4}}+{\frac {\phi }{2}}\right)\,\!}
ランキン土圧とクーロン土圧は一見違う理論のように見えるが、実は同じである。ただし、適用できる対象がやや異なるので下に表にしてまとめた。

ランキン土圧とクーロン土圧の違い
  壁体との摩擦 壁体の形 地盤の形 土材料 土の内部摩擦
ランキン土圧 考慮しない 考慮しない 考慮しない c,
ϕ
\phi 材 考慮する
クーロン土圧 考慮する 考慮する

極限定理(きょくげんていり,英: limit theorems)とは塑性変形における極限解析の基礎となる定理で、上界定理(じょうかいていり、Upper bound theorem)と下界定理(かかいていり、Lower bound theorem)がある。また、確率・統計学では、中央極限定理がある。中央極限定理の特別な場合が、Laplaceの極限定理(ラプラスの定理)である[1]。

上界定理と下界定理により定式化された極限解析から、極限荷重の上界値と下界値をそれぞれ求めることができる。もし、極限荷重の上界値と下界値が一致すれば、それが真の極限荷重となる。構造が複雑になり、極限荷重の上界値と下界値が一致しなくても、真の極限荷重はそれらの間にあることが分かるので、およその値は推測できる。

物体力をfi 、応力境界面の表面力をTi 、変位速度を
u
˙
i
{\displaystyle {\dot {u}}_{i}}、ひずみ速度を
ε
˙
i
j
{\displaystyle {\dot {\varepsilon }}_{ij}}とする。

外力(fi , Ti )との仕事率が正となる、変位速度境界条件と変形の適合条件を満たす(運動学的に許容な)
u
˙
i
,
ε
˙
i
j
{\displaystyle {\dot {u}}_{i},{\dot {\varepsilon }}_{ij}}について、以下の式を与える。

α
{

V
f
i
u
˙
i
d
V
+

S
σ
T
i
u
˙
i
d
S
}
=

V
σ
i
j
ε
˙
i
j
d
V
{\displaystyle \alpha {\Bigl \{}\int _{V}f_{i}{\dot {u}}_{i}dV+\int _{S_{\sigma }}T_{i}{\dot {u}}_{i}dS{\Bigr \}}=\int _{V}\sigma _{ij}{\dot {\varepsilon }}_{ij}dV}
このとき、αは真の崩壊荷重係数α* の上界値を与える。すなわち、

α

α

{\displaystyle \alpha \geq \alpha ^{*}}
となる。ただし、応力σij は、与えられたひずみ速度
ε
˙
i
j
{\displaystyle {\dot {\varepsilon }}_{ij}}に対して、直交則を満たす応力場である。

上界定理による極限解析は、運動学的制約条件(変形の適合条件と流れ則)と外力仕事率が 1 であるという条件の下で、内部消散率を最小化する最適化問題に帰着する。

与えられた荷重系について、釣り合い式と応力境界条件を満たす(静力学的許容な)応力場が、降伏条件を破らない(静力学的可容な)とき、荷重係数は真の崩壊荷重係数の下界値を与える。すなわち、

α

α

{\displaystyle \alpha \leq \alpha ^{*}}
となる。ここで、αは荷重係数、α* は真の崩壊荷重係数である。

下界定理による極限解析は、静力学的制約条件(力の釣り合い式と降伏条件)の下で、荷重係数を最大化する最適化問題に帰着する。

モール・クーロンの破壊規準(モールクーロンのはかいきじゅん、英: Mohr-Coulomb yield criterion)とは、土の破壊基準の一つである。三軸圧縮試験などで、異なる拘束圧条件下におけるモールの応力円を描いて、その包絡線を見ると近似的に直線と見なすことができる。もし、その包絡線を超えてしまうと土は破壊する(実際には超えることはできない)。モール・クーロンの破壊規準は、モールの破壊規準、クーロンの破壊規準が合わさったものである。

土に対し、一面せん断試験を実施する。一面せん断試験において、計測される応力はそのまま土のせん断面における応力状態と見なすことができる。垂直応力σを変えて複数試験を実施し、破壊時に計測されたせん断応力τと垂直応力σをプロットすると、図のように概ね直線上にプロットがとれる。これがクーロンの破壊規準である。なお、土はこの線より上に応力状態をとることができない。

土に対し、三軸圧縮試験を実施する。三軸圧縮試験では、最大主応力と最小主応力を計測することが可能であり、拘束圧をいくつか変えて複数試験を実施し、破壊時に計測された最大主応力と最小主応力をプロットし、モールの応力円を描くと図のような包絡線を描くことができる。これがモールの破壊規準である。不飽和な土や過圧密状態にある土に対して試験を行った場合、図のように包絡線が曲線となる。クーロンの破壊基準と同様に、土はこの線より上に応力状態をとることができない。

飽和土に対し、三軸圧縮試験を実施し、モールの破壊規準と同様にモールの応力円を描くと図のように包絡線が直線となる。この直線をモール・クーロンの破壊包絡線と呼び、クーロンの破壊規準で得られた直線と同じ意味を持つ。このように、モールの応力円の包絡線から、クーロンの破壊規準と同様の直線を引いて破壊規準を定めたものを、2つの破壊規準をあわせてモール・クーロンの破壊規準と呼ぶ。

なお、この直線をせん断応力τ、垂直応力σ、内部摩擦角φ、みかけの粘着力 c を用いて次のように示すことができる。

τ
=
c
+
σ
tan

ϕ
{\displaystyle \tau =\mathrm {c} +\sigma \tan \phi \,\!}

図より、以下の関係が成り立つ。

σ =
σ
1
+
σ
3
2

σ
1

σ
3
2
sin⁡ϕ τ =
σ
1

σ
3
2
cos⁡ϕ{\displaystyle {\begin{aligned}\sigma &={\frac {\sigma _{1}+\sigma _{3}}{2}}-{\frac {\sigma _{1}-\sigma _{3}}{2}}\sin \phi \\\tau &={\frac {\sigma _{1}-\sigma _{3}}{2}}\cos \phi \end{aligned}}}
これらをモール・クーロンの破壊包絡線

τ
=
c
+
σ
tan

ϕ
{\displaystyle \tau =\mathrm {c} +\sigma \tan \phi \,\!}
に代入すると破壊基準の主応力表示として次の式が得られる。

σ
1

σ
3
=
2
c
cos

ϕ
+
(
σ
1
+
σ
3
)
sin

ϕ

求核性のない強塩基

ジイソプロピルアミン は、(CH3)2HC-NH-CH(CH3)2の化学式で表わされる二級アミン。共役塩基のリチウム塩であるリチウムジイソプロピルアミド(LDA)は求核性のない強塩基としてしばしば利用される。消防法に定める第4類危険物 第1石油類に該当する[1]。

水酸化カリウム存在下で蒸留精製し、ナトリウム存在下、不活性ガス雰囲気化で保管できる。[2]

ジイソプロピルアミンは一般的な試薬会社から商業的に入手可能である。アセトン及びアンモニアを用いた還元的アミノ化で合成される。

DI-n-PROPYLAMINE
PRODUCT IDENTIFICATION

CAS NO. 142-84-7
DI-n-PROPYLAMINE

EINECS NO. 205-565-9
FORMULA [(CH3)2CH]2NH
MOL WT. 101.19
H.S. CODE 2921.19
TOXICITY

Oral, rat: LD50 : 460 mg/kg
SYNONYMS N-propyl-1-propanamine; Di-normal-propylamine;
Dipropylamine; N,N-dipropylamine; n-dipropylamine; DNPA
SMILES

 

CLASSIFICATION

 

PHYSICAL AND CHEMICAL PROPERTIES

PHYSICAL STATE colorless liquid
MELTING POINT -63 C
BOILING POINT
108 C

SPECIFIC GRAVITY
0.738

SOLUBILITY IN WATER Soluble
SOLVENT SOLUBILITY

Soluble in Ethanol, Benzene , Ethyl Acetate

pH
VAPOR DENSITY
3.5

AUTOIGNITION

275 C

NFPA RATINGS

Health: 3; Flammability: 3; Reactivity: 0
REFRACTIVE INDEX

1.4042

FLASH POINT 3 C
STABILITY Stable under ordinaty conditions
APPLICATIONS

Dipropylamine is used as an intermediate for manufacture of pharmaceuticals, pesticide, zeolites, rubber chemicals and organic catalysts.
SALES SPECIFICATION
APPEARANCE

colorless liquid, Amine-like odor
PURITY (GC)
99.5% min

MONO AMINE
0.1% max

ISOPROPANOL

0.2% max

MOISTURE
0.2% max

COLOR (AHHA)
15 max

TRANSPORTATION
PACKING 140kgs in Drum
HAZARD CLASS 3.2 (Packing group: II)
UN NO. 2383
GENERAL DESCRIPTION OF AMINE
Amine is a group of basic organic compounds derived from ammonia (NH3) by replacement of one (primary amines), two (secondary amines), or three (tertiary amines) hydrogen atoms by alkyl, aryl groups or organic radicals. Amines, like ammonia, are weak bases because the unshared electron pair of the nitrogen atom can form a coordinate bond with a proton. Amines react with acids to give salts and with acid anhydrides (or ester ) to form amides. They react with halogenoalkanes to form longer chains.
Many amines are not only bases but also nucleophiles that form a variety of electrophile compounds. They are important intermediates for chemical syntheses due to the basic functionality of the nitrogen atom and electrophilic substitution at nitrogen. Some examples of compounds obtained by reaction of amines are:

Amides (by reaction with acyl halides or ammonium carboxylate salts)
N-Alkyl amines (by reaction with halogenoalkanes)
Isocyanates (by reaction with phosgene)
Carbamoyl chlorides or Urea derivatives (by reaction with phosgene)
Alkoxylated amines (by reaction alkylene oxide)
Quaternary ammonium compounds (by reaction with alkyl halides and dialkyl sulfates)
N-Alkylcarbamic acids or N,N'- Dialkyl ureas (by reaction with carbon dioxide)
Urea derivatives (by reaction with isocyanates)
Schiff bases (by reaction with aldehydes or ketones)
Aminopropionitriles (by reaction of 1° and 2° amines with acrylonitrile)
N-Alkylamino acids (by reaction of 1° and 2° amines with monochloroacetic acid or with unsaturated acids)
Amine oxides (by reaction of 3° amines with hydrogen peroxide)
Sulfonamide derivatives (by reaction of 1° and 2° amines with benzenesulfonyl chloride)
Low molecular amine names are formed by adding '-amine' as a suffix to the name of the parent compound. In substitutive nomenclature, the prefix 'amino-' is placed before the name of the parent compound to denote the functional group in high molecular amines. Synthetic amines are made mostly by reaction of alcohols with ammonia, catalyzed by metals( nickel or copper) or metal oxide at high temperature. Many methods have been devised for the synthesis of the amines; reacting ammonia with an alkyl halide and neutralizing the resulting alkyl ammonium salt with an alkali, e.g., sodium hydroxide. This procedure yields a mixture of primary, secondary, and tertiary amines that is easily separated into its three components by fractional distillation; boiling methyl isocyanate with caustic potash, heating the alkyl iodides with ammonia; reduction of nitriles with alcohol and sodium; heating the esters of nitric acid with alcoholic ammonia; reducing on nitro-paraffms; action of zinc and hydrochloric acid on aldehyde ammonias; reduction of the phenylhydrazones and oximes of aldehydes and ketones with sodium amalgam in the presence of alcohol and sodium acetate; action of dilute hydrochloric acid on the isonitriles; heating the mustard oils with a mineral acid, by the hydrolysis of the alkyl phthalimides. Primary amines contain the functional group -NH2 (called amino group) and are converted into secondary and tertiary amines if heated with alkyl or aryl iodides. Primary amines form various oxidation products violently with concentrated nitric acid. If the amines are acetylated, they form nitro derivatives with concentrated nitric acid. Primary amines form diazonium salts with nitrous acid in cold solution in the presence of excess of mineral acid. Or a diazoamine is obtained in absence of excess of acid. Other reactions are condensation products with aldehydes; forming anilides; forming alkyl thioureas; yielding isonitriles with alcoholic potash and chloroform. Tertiary amines combine with one molecular proportion of an alkyl iodide to form quaternary ammonium salts in which a central nitrogen atom is joined to four organic radicals and one acid radical. Quaternary ammonium salts are used as corrosion inhibitor, emulsifying and antiseptic agents. Aliphatic amines which have the lowest carbon content are water-soluble gases or liquids of low boiling point also readily soluble in water in case of the next low carbon content. But aliphatic amines which have the high carbon content are odourless solids of high boiling point and are insoluble in water. They are all bases and easily form salts with the mineral acids and solid salts with the halogenoalkanes. Amine Salts are crystalline substances that are readily soluble in water. Many insoluble alkaloids (e.g. quinine and atropine) are used medicinally in the form of soluble salts. If alkali (sodium hydroxide) is added to solutions of such salts the free amine is liberated. Short chain alkyl amines are used as raw materials of solvent, alkyl alkanolamines, and ingredients of rocket fuels. They are used to make other organic chemicals including rubber vulacanization accelerators, pesticides, quaternary ammonium compounds, photographic chemicals, corrosion inhibitors, explosives, dyes and pharmaceuticals. They are used in rayon and nylon industry to improve the tensile strength. Allylamines are used as intermediates for ion exchange resins, pharmaceuticals, water soluble polymers, herbicide softeners, rubber chemicals, polymerization initiators and cross-linking agents. Amines are used as reducing agents for the recovery of precious metals. They are versatile intermediates. They have active applications in organic synthesis for polymerization catalyst, chain extender in urethane coatings, agrochemicals, pharmaceuticals, photographic, heat stabilizers, polymerization catalysts, flame-retardants, blowing agents for plastics, explosives, and colorants. Long chain alkyl amines are used for the synthesis of organic chemicals and surfactants used as a corrosion inhibitor, detergent, ore floating agent, fabric softener, anti-static agent, germicide, insecticide, emulsifier, dispersant, anti-caking agent, lubricant and water treatment agent. Alkyl tertiary Amines are used as fuel additives and preservatives. They have similar applications with long chain alkyl amines. Hexamethylenediamine used in the manufacture of nylon-6,6 is prepared by catalytic addition of hydrogen to nitriles. Aromatic amines also exist, such as phenylamine, which are important for the production of diazonium salts. They dissociate in water (some very weakly). Aromatic amines are much weaker bases than the aliphatics. One of the most important aromatic amines is aniline; pale brown liquid boiling at 184 C, melting at -6 C. Aniline is obtained commercially from chlorobenzene by heating with ammonia in the presence of copper catalyst or from a product of coal tar (nitrobenzene) through the reduction reaction. Aniline is the starting material in the dye manufacturing industry and as in the manufacture of others. Aniline is converted into sulfanilic acid which is the parent compound of the sulfa drugs. Aniline is also important in the manufacture of rubber-processing chemicals, antioxidants and varnishes. Amines take part in many kinds of chemical reactions and offer many applications include in agrochemicals, dyestuffs (the best known being aniline), pharmaceuticals, and corrosion inhibitors.

 

 

ラジカル開始剤

ラジカル開始剤(ラジカルかいしざい、radical initiator)とは、ラジカル反応を進めるために穏和な反応条件でラジカルを発生させる化合物。ラジカル開始剤は一般に結合エネルギーの小さな弱い結合を持つ。工業的には、高分子合成の一手法であるラジカル重合反応において重合開始剤として用いられる。下記のようにいくつかのタイプへ分類できる。

ジハロゲン分子はハロゲン-ハロゲン結合のホモリシスにより2個のハロゲン原子ラジカルへ分かれる。例えば塩素分子 (Cl2) からは、紫外線の照射により2個の塩素ラジカル (Cl•) が発生する。これはアルカンのハロゲン化で利用される。

アゾ化合物 (R-N=N-R) は、熱または光により2個の炭素ラジカルと窒素分子に分解する。例えば、アゾビスイソブチロニトリル (AIBN) はシアノイソプロピルラジカルへと(下式)、ABCN はシアノシクロヘキシルラジカルへと分解し、ラジカル反応を開始させる。

有機過酸化物(ペルオキシド)は -O-O- 結合を持ち、そこが熱によって酸素ラジカルへと分解する。オキシルラジカル RO• は不安定であり、さらなる分解を起こしてより安定な炭素ラジカルへと変わるとされる。例えば ジ-tert-ブチルペルオキシド (t-BuOOBu-t) や tert-ブチルヒドロペルオキシド (t-BuOOH) が熱分解して発生する tert-ブチルオキシルラジカル (t-BuO•) は、続いてメチルラジカル (CH3•) とアセトンへと分解する。過酸化ベンゾイル (BPO, PhC(=O)OOC(=O)Ph) はベンゾイルオキシルラジカル (PhC(=O)O•) へと分解するが、続いて二酸化炭素を遊離してフェニルラジカル (Ph•) へと変わる。メチルエチルケトンから得られるメチルエチルケトンペルオキシドも開始剤として用いられる。

低温でラジカルを発生させられる試薬として、過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなど、酸化剤と還元剤の組み合わせが用いられる。これをレドックス開始剤と呼ぶ。

トリエチルボラン (Et3B) やジエチル亜鉛 (Et2Zn) もラジカル開始剤として低温ではたらく。

アゾ化合物や有機過酸化物などのラジカル開始剤は不安定であるため、冷暗所や冷蔵庫に保管される。爆発のおそれに注意して取り扱われる。

ラジカルに1電子を奪われた分子が他の分子から電子を引き抜くと、その分子がさらにラジカルを形成するため、反応は連鎖的に進行する。反応はラジカル同士が反応して共有結合を生成するまで続く。このような反応をラジカル反応またはラジカル連鎖反応という。燃焼は最も良く知られたラジカル反応の1つであり、ハロゲン分子が炭化水素と反応しハロゲン化アルキルを生じるのもラジカル反応である。高分子合成においても過酸化ベンゾイル (BPO) やアゾビスイソブチロニトリル (AIBN) を開始剤とするラジカル重合が行われる。オゾンホールの原因となっているのは塩素原子のラジカルである。

塩素分子が光 (hν) または熱(⊿)でラジカル解裂することで塩素ラジカルが発生する(式1)。
塩素ラジカルはメタンの水素から1電子を引き抜き塩化水素になり、メタンはメチルラジカルとなる。メチルラジカルは sp2 型の配座をとりラジカルはp軌道上に存在する(式2)。
メチルラジカルは塩素分子1電子を引き抜きクロロメタンになり、再び塩素ラジカルが再生する(式3)。
塩素ラジカル同士で1電子授受するとラジカルは消滅し、塩素分子となる(式4)。
メチルラジカル同士で1電子授受するとラジカルは消滅し、エタンとなる(式5)。

酸素による空気酸化あるいは過酸化物などのラジカル開始剤が存在する場合、ラジカルが HBr から水素を引き抜き臭素ラジカルが発生する(式1)。
臭素ラジカルが炭素二重結合に付加する場合、生成する炭素ラジカルが安定な中間体が生成する。このラジカル付加の配向は、カルボカチオン中間体を経由する際のマルコフニコフ則と逆になる。その理由は炭素ラジカル近傍に置換基が多いほうがσ軌道の超共役による安定化の寄与が大になるためである(式2)。
炭素ラジカルが HBr から水素を引き抜き臭素ラジカルが再生する(式3)。
副生成物としてはラジカル終端反応によりオレフィンの2量体などが発生する(式4、5)。

フラックス

電解液 (でんかいえき、Electrolyte Solution) とはイオン性物質を水などの極性溶媒に溶解させて作った、電気伝導性を有する溶液をさす。電解質溶液ともいい、英語ではIonic solutionということもあることから、イオン溶液とも呼ばれることもある。狭義には、電池や電気メッキ槽にいれる電解質水溶液を指す。

一方、溶媒を含まず、イオンのみからなる液体のことはイオン液体もしくは溶融塩と呼び、区別される。

イオン性物質を極性溶媒に溶解させると、陽(プラス)イオンと陰(マイナス)イオンに解離する。これら正負のイオンが電荷の運び手(キャリア)となって移動することで導電性が発現する。電解液に電極を入れると、陽(プラス)イオンは陰(マイナス)極に移動し、陰(マイナス)イオンは陽(プラス)極に移動する。この性質を利用したのが、電気メッキである。

溶融塩(ようゆうえん、英: molten salt)とは、食塩などの陽イオンと陰イオンからなる塩で溶融状態にあるものをいう。文部省学術用語集化学編では融解塩[ゆうかいえん、英: fused salt]を溶融塩と同意とする。原子力分野では「溶」を「熔」の字に置き換えた「熔融塩」を用いる場合もある。また、金属製錬分野では伝統的にフラックスと呼ぶ。溶融塩の中で100-150°C以下の温度で液体状態にあるものは常温溶融塩またはイオン液体と呼ぶ。

溶融塩中のイオンは、水溶液中のイオンとは異なりイオンの周りに中性の水分子が配位しないため、陽イオンと陰イオン間の距離が近く、イオン間のクーロン力が強い。このため、水溶液中のイオンとは異なる性質を示すことが多い[1]。これにより次のような特徴が生じる。

イオン導電率が高い
電位窓が広い
密度、粘性率、表面張力が水に近い
高温で低蒸気圧
他の塩類の溶解度が大、塩類の組み合わせで溶融温度や溶媒特性の調節可能
有機溶媒と混和しない
化学的に安定、不燃または難燃性大
放射線耐性
固体から液体への融解熱が大

イオン化エネルギーの小さいアルカリ金属アルカリ土類金属と電子親和力の大きいハロゲンで構成される塩で、高温で融解すると陽イオンと陰イオンに解離する。イオン性の強い塩を溶解しやすいため、工業プロセスに広く利用されている。この場合、溶融温度の低減化によるエネルギー消費削減や原料物質の溶解度を上げる等のため数種類の塩を混合した複合塩を用いる事がある。

この系の例としてCaCl2、NaCl-CaCl2、NaF-AlF3、LiF-BeF2等がある。

高誘電率を持つ電解液

炭酸エチレン(たんさんエチレン、ethylene carbonate)はエチレングリコールの炭酸とのエステルである。室温 (25 °C) では透明なガラスのような固体である。液体状態(融点 34–37 °C)では無色無臭の液体である。

極性溶媒としても利用され、リチウムイオン二次電池の高誘電率を持つ電解液としても利用される。

可塑剤としても利用されている。

エチレングリコール (ethylene glycol) は、溶媒、不凍液、合成原料などとして広く用いられる 2価アルコールの一種である。分子式 C2H6O2、構造式 HO-CH2-CH2-OH、分子量 62.07。IUPAC命名法では エタン-1,2-ジオール、あるいは 1,2-エタンジオール と表される。粘稠な無色液体で、水などの極性溶媒に溶けやすい。その性質に加えて融点が −12.6 ℃ と比較的低いので水冷エンジンなどの不凍液として用いられている。引火点 111℃、発火点 398℃で、消防法上の第4類危険物(第3石油類)に指定されている。

エチレングリコールは、エチレンオキシド(エポキシエタン、オキシラン)を酸触媒下で加水分解すると得られる。無触媒条件下でも、高温、高圧下でエチレンオキシドと水を反応させてエチレングリコールを得ることができる。

C
2
H
4
O

+
H
2
O

HO

CH
2
CH
2

OH
{\displaystyle {\ce {C2H4O\ +H2O->HO-CH2CH2-OH}}}
エチレングリコールの2008年度日本国内生産量は 628,793t、消費量は 12,089t である[2]。

銅触媒のもとに空気酸化すると、グリオキサールを与える。また二クロム酸カリウムを用いて酸化すると、シュウ酸を生成する。

エチレングリコールは、ポリエチレンテレフタラート (PET) の主原料のひとつである。PEN,PTTなどのほかのポリエステルの原料としても同様に用いられる。

エチレングリコールエーテル類はセロソルブ (cellosolve) とも呼ばれ、ブチルセロソルブやフェニルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどが塗料の溶媒などとして広く用いられている。

消防法 - 第4類危険物(第3石油類)
労働安全衛生法 - 労働安全衛生法施行令第18条の2 名称等を通知すべき危険物及び有害物(安全データシート交付の義務)、労働安全衛生法第100条第1項及び厚生労働省令に基づく有害物ばく露作業報告対象物質(含有量0.1%未満の製剤を除く)[5]。
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 - 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令施行令別表第1 海洋環境の保全の見地から有害である物質(Y類物質) [2]

エチレンオキシド (ethylene oxide) は、有機化合物の一種で、三員環の構造を持つ環状エーテルである。

C2H4O、分子量 44.05 の最も単純なエポキシドである。別名として、エポキシエタン (epoxyethane)、オキシラン (oxirane)、オキサシクロプロパン (oxacyclopropane)、酸化エチレン・エチレンオキサイド (ethylene oxide) とも呼ばれ、EOと略称される。IUPAC命名法では、1,2-エポキシエタン (1,2-epoxyethane) が最も一般的。 洗剤やポリエステル繊維など身近なものに使われるエチレングリコールエタノールアミンなどの誘導品を製造する。

水、有機溶媒のいずれにもよく溶ける。立体的なひずみエネルギーにより、特に求核剤に対して反応性が高い。他の有機物質を合成するときの中間体として用いられる。また、医療機器や精密機械を滅菌するために用いられる。猛毒。常温大気圧下の空気中での爆発範囲は3.0-100%である。つまり、空気がなくとも火花や静電気などによって爆発する、分解爆発性を有する。 作業環境における管理濃度は1ppmである。2012年10月1日施行の改正女性労働基準規則[1]の対象物質となる。

工業的には、銀を担持させたアルミナ触媒のもと、1–3 MPa、200–300 °C でエチレンと酸素とを作用させて合成される。 酸化エチレンの 2008年度日本国内生産量は 865,247 t、工業消費量は 593,943 t である[2]。

エチレンオキシドを最初に合成したアドルフ・ヴュルツは、2-クロロエタノールと塩基を用いた(分子内ウィリアムソン合成)。 エチレンと過酸化水素、あるいは過酸との反応によっても作ることができる。

エチレンオキシドに酸を触媒として水と反応させるとエチレングリコール (HOCH2CH2OH) が得られる。この反応で水の量を減らせば、ポリエチレングリコール (PEG) が生成する。さらに、水のない条件で酸を作用させるとカチオン重合によりポリエチレンオキシド (PEO) となる。

また、グリニャール試薬 (RMgX) と反応させると加水分解後に第一級アルコール (RCH2CH2OH) となる。3員環の開環によりひずみエネルギーが解放されるため、このほかにもさまざまな求核剤に対するヒドロキシエチル化剤として良い反応性を示す。 アセタール樹脂、エピクロロヒドリンゴムなどの原料として利用される。