左後ろからきたやわらかい手にかくされた小さな針

なにも言えないや。なにも教えてあげられなくてごめん。弱いやつの肩も持ってあげられなくて。生きるってねえなんだい?生きるのがうまくなるために生きることかい?そしてそれを楽しいと思う感覚をもつことかい?東京でもせいせいと息を吸って。田舎でもなにも変わらない。あいかわらずせいせいと息を吸ってる。そんな強いやつになれたらなあ。大学なんてどこでもいいんだろう。東京大学でも。静岡大学でも。せいせいと息を吸って。どんなスキマにももぐり込む。左後ろを見ずに。左後ろに針を通す。一瞬で。どんなに小さな針でも。僕らは戦っている。左後ろからきた小さな針を。やわらかい手にかくされた小さな針を。僕はすんなり体を動かさずにかわすんだ。