併合罪

併合罪(へいごうざい)とは、刑法の罪数論上の概念であり、

(1) 確定裁判を経ていない2個以上の罪(刑法45条前段)、

又は

(2) 過去に禁錮以上の刑の確定裁判があった場合、その罪と

その裁判が確定する前に犯した罪(同条後段)をいう。

なお、各法定刑に基づき刑の加重減軽の順序(刑法72条)により決定した1刑を処断刑とする。

つまり、併合罪

各々の法定刑について処断刑を求めるのではない。(「量刑」も参照)。

したがって、犯人がAを殺害した後にBを殺害した場合、Aに対する殺人罪(刑法199条)とBに対する殺人罪併合罪となる。

併合罪のうちの1個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は科すことができる(刑法46条1項)。併合罪のうちの1個の罪について無期懲役・無期禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料、没収は併科することができる(同条2項)。このように、死刑・無期刑については吸収主義がとられている。

併合罪のうちの2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑[2]について定めた刑の長期(刑期の上限)にその2分の1を加えたものを長期とする(同法47条本文)。

ただし、加重の上限は30年であり(同法14条2項)、また、それぞれの罪の刑の長期の合計を超えることはできない(同法47条ただし書)。このように、有期刑については加重主義がとられている。

 

ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とされる(刑法45条後段)。確定裁判を経た併合罪と言う意味で、事後的併合罪と言う。

併合罪のうちに既に確定裁判を経た罪とまだ確定裁判を経ていない罪とがあるときは、

確定裁判を経ていない罪について更に処断する(同法50条)。

例えば、A罪とB罪を犯した犯人が

B罪だけで起訴されてその有罪判決(禁錮以上の刑)が確定した後、

C罪を犯し、

その後A罪とC罪で起訴された場合、A罪とB罪は45条後段により併合罪となるが、C罪は併合罪とならない。

この場合、裁判所は、50条により併合罪のうち確定裁判を経ていないA罪について宣告刑を決め、それとは別にC罪について宣告刑を決めることとなり、両者が併科される。このように、

間に確定裁判があることにより

A罪とC罪の併合罪関係が遮断され、主文を2個言い渡すこととなる。